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村上龍は知的なブルース・リー

彼の作品は、「限りなく透明に近いブルー」だけ読んでいた。
予想していたよりはるかに、面白い作品だった。

その後、「オールド・テロリスト」という作品を、
文芸誌で書いているのに気がついていたが、読んでいなかった。
なんとなく、タイトルから受けとるイメージがしっくりこなかったからだ。

TV東京マニアなオイラは従って、
村上龍がTVによく出演しているのを知っていた。

ところが、他の作品をちゃんと読んでいないオイラには
このTV出演が仇になってしまい、
きっと、もうあんまり小説を書く気がしなくなって、
TVに出ているんだろうなぁ、その方が儲かるんだろうなぁ、
などと感じていたのだった。

    *

ところがある日、新聞を眺めていると、
「五分後の世界」を読んで嵌まったという人がいるのを知った。

スペイン酒場でしょっちゅう会っている森という人も、
村上龍をよく読んでいると言っていた。

読んでみるとこれがまた、
なかなかどうして、彼は知的なブルース・リーだと気がついたのだった。

日本を舞台にしたパラレルワールドを描いた戦記物になっているのだが、
まず大岡昇平「野火」で描かれている戦闘シーンが、
より圧倒的に生々しく描かれていて、すぐに引きずり込まれる。

その後に書かれた「五分後の世界Ⅱ ヒュウガ・ウイルス」というのが、
これまた生々しい戦闘シーンに加えて、
免疫学の知識がふんだんに盛り込まれていて、驚く。
専門外なのに、そんなに勉強しちゃうんですかって。

あとがきを読むと、
専門書を読みあさるだけではなく、
学者から講義を受けて知識の土台としたことがわかる。
しかも、書きあげるまで20日しかかけていないという。

書くのが専門なのだから当たり前だとは、言えないと思う。
普通、免疫学なんてものは、有り体の興味で習得するなんて無理。
すぐに眠くなっちゃうから。

他にも新人賞の選者なんてやりながら、
TVのレギュラーをもちながら、
一体どこに他のことをする時間と熱意が湧いてくるのだろうか。

ほとんど寝ないで活動しているの違いない。
そんな仕事ぶりを察すると、
村上龍ってのは、知的なブルース・リーに思えてくる。

圧倒的で暴力的と思えるほどに、ひたすらに努力する人。
いったん目標を定めたら、語学でもなんでも何が何でも習得しちゃう人。

上の二作品を読むと、
よほど鈍感でない限り、そーしたことを即座に感じるはず。













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