米国が利上げへと向かい、日欧の量的緩和も出口が見え始めるのは時間の問題だと思います。
そうした中で、株式市場に埋まっている地雷の数は一向に減る様子がありません。
<トリガー>
①米国の利上げによる過剰流動性相場の終焉
②新興国投資のリスクオフ
③中国経済のハードランディング(人民元切り下げ、株価暴落)
既にインフラ輸出が躓きを見せており、G20でも孤立化の様相が強まっている
④地政学的リスク(東アジア、中東産油国、ISによるテロ etc)
⑤ユーロ危機の再燃(大手銀行の経営危機、英国の経済不安、ユーロ崩壊の懸念)
この様に、株式市場の先行き不透明感は増すばかりですが
こういう時だからこそ、個人投資家は投資の基本に立ち返り
しっかりガードを固めるとともに、将来に向けて投資能力を磨く良い機会だと思います。
◇投資は資産運用 (➡ 損をすることは許されない!)
株式投資は資産の運用ですから、損をするくらいなら手出し無用です。
しかし誰しも株式投資で勝ち続けることは不可能なので
基本は「損失を最小限に止める」ことであり
そのために「資金管理」(資金配分・損切り等)が重要な意味を持つことになります。
①資金配分
「投資金額と予備資金は常に半々と心得よ!」
株式投資は常に暴落の危険を伴います。最近では英国の国民投票が良い例で
日経平均株価が1000円以上下落すると、殆どの投資家は大きな含み損を抱えてしまいます。
この時、資金を全額投入して株を買っていたら
慌てて投げ売って損をするか、或いは塩漬けにして機会損失を被るかの何れかです。
しかし、少なくとも資金を半分温存して置けば、バーゲンセールでお得な買い物が出来
一時的な損失を充分カバーすることが可能です。
無論塩漬けになっても、時が経てば株価は戻るかも知れません。
しかし機会損失が発生することは事実ですし
特に暴落の原因が金融不安の場合、株価が元に戻ったとしても数ヶ月はかかりますし
しばしば二番底や三番底を形成しますから
不安のあまり、最も安いところで売らされることも少なくありません。
因みに、私の「マイ・ルール」は、買い付け余力を常時70%以上。
買い出動時(絶好の買い場)では30%以上です。
②銘柄選択
銘柄を選ぶ際、ファンダと需給が基準になることは周知の事実ですが
買う銘柄を決めてから調査分析を行うと、無意識のうちにひいき目で見てしまい
それがしばしば「期待に反して株価が下がる」原因になりかねません。
従って、銘柄ではなくまずセクターを選び、その中で同業他社比較を行うのが正しい手順ですが
そうは言っても「銘柄ありき」が一般的なので、くれぐれも「ひいき目」に評価していないか
何度も自分に問い掛ける癖を付けて欲しいと思います。
またチャートを参考にされる場合は、ざっくり以下のイメージで。。。
「月足=株価水準の確認」「週足=トレンドの確認」「日足=買うタイミングを判断」
③損切り
資金管理の中で、資金配分と並び重要なのが「損切り」です。
しかし、折角欲しくて買った株をそう簡単に損切りするのは容易ではありません。
教科書では「マイ・ルール」を作って機械的に損切りすることを勧めていますが
元々損切りが苦手な人は、投資に感情が入り易いので、それも決して有効な手段とは思えません。
ではどうすれば損切りし易くなるでしょうか。
なかなか損切り出来ない理由は、勝敗ではなく勝率に拘るからです。
そもそも売買した全ての銘柄で利益を得ることなど不可能なので
勝率は忘れて勝負に拘るべきです。
つまり一年を一区切りにして、年間収支がプラスになれば、勝率は3割で充分という考え方です。
例えば一年間に10銘柄売買して年間収支が+30%だったとします。
しかし銘柄ごとに見れば、一年で株価が2倍になった銘柄もあれば損をした銘柄もある筈で
極端な場合、一銘柄だけの利益でトータル収支がプラスになることだって有り得ます。
無論1勝9敗で収支がプラスということは滅多にないかも知れませんが
経験的に3勝7敗なら充分だと考えています。
因みにそんなのは屁理屈だと思われる方は、6勝4敗を目標にしてみて下さい。
それでも100回売買したうち、40回損切りが可能です。
次にもう一つ例を挙げてみます。
貴方が100万円の資金を全額複数の銘柄に分散投資したとします。
ところが相場全体が暴落。逃げ遅れて時価総額が50万円になってしまいました。
当初の資金から50万円目減りした訳ですから、単純計算すると下落率(損失率)は50%です。
しかし50万円を元の100万円に戻すには、上昇率(利益率)100%が必要です。
一見数字のマジックに思えますが、決してそうではなく
損をするのは簡単でも、取り戻すのが如何に難しいかという事例で
このことからも損切りの大切さがお解かり頂けると思います。
④目標管理
PDCAサイクル「Plan(計画)・ Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)」とほぼ同じですが
目標管理の基本は、計画立案から評価・改善策に至るまで、全て自分自身で行う点にあります。
従って、株式投資では敢えて「目標管理」と表現します。
因みに、手順は以下の通りです。
「P」一年間のリターン目標を決める
「D」投資するセクター及び銘柄を決める
「C」マクロやミクロ環境を定期的にチェックする
「A」地合いの変化、話題(流行)の変化、需給の変化、ファンダの変化に応じて
投資対象、資金配分、投資スタンスの見直し等を行う
*投資スタンス・・・「短期or長期」、「買いor売り」、「買いと売りのバランス調整」
そして年度末に決算を行い、収支がプラスであれば、一部を次年度の投資資金に充当したり
余剰金を自分へのご褒美や家庭サービスに遣うのも一考です。
⑤リスクヘッジ
自ら資産を運用する以上、株価の急落に備えるのは当然のことですが
個人投資家の多くが、意外に無関心なのがリスクヘッジでしょう。
勿論ヘッジをすれば余計な資金が必要になり
上昇相場では利益が減少することも有り得ます。
しかし株式市場は常に「一難去ってまた一難」の繰り返しですから
長い目で見れば、自分で自分の身を守るためのリスクヘッジは必要不可欠だと思います。
因みに教科書ではリスクの軽減を目的として、しばしば分散投資を推奨していますが
銘柄を分散させても相場全体が下落すればヘッジにはなりません。
従って、株でヘッジをする場合
ベテランの方は「空売り」で対処されることも多いと思いますが
投資経験が短い方は1357の様な「インバース系ETF」の購入がbetterだと考えています。
何れにしても今後暫く、米国の利上げ時期を巡り様々な憶測が飛び交うとともに
株価の乱高下が予想されるだけに、資金管理やリスクヘッジは益々重要になると思います。