先日、日本経済新聞系列のテレビ局で、定年後に備えた株式投資というテーマで討論会をやっていました。番組の終わりころ、かなり著名なコメンテーターが、「こういってしまえば、お終いだが……」と断りを入れつつも、「結局のところ、株で財産を増やすより、できるだけ長く勤めて、あとは身の丈に合った生活を送るのも一法」といっていました。
著者も「こういってしまえば、お終いだが……」と前置きして、「老後の暮らしは、45歳までのあなたの決断で決まります」といいたいのです。
というのも、普通のサラリーマンなら、45歳までに1,000万円を貯めることは、それほど難しくありません。親からの資金援助や、一日500円貯金などの節約志向で、なんとか実行できそうです。問題は、この1,000万円を定年までの20年間で、5,000万円に増やせるかです。
同じような方法では、おそらくもう1,000万円をため込むくらいが関の山です。場合によっては、子供の教育費か、家のローンなどで虎の子の1,000万円が減少するかもしれません。
ここでもう一度、お金の重さについて考えてみましょう。
期間を同じにとって、100万円を200万円にするのと、1,000万円を2,000万円にするのと、どちらが難しいかと聞いてみたらどうでしょう。おそらく全員が、1,000万円を2,000万円にする方が難しいと答えるでしょう。100万円なら失敗しても取り返せると思い、100万円全額リスクします。それに対して、1,000万円の場合は、全額をリスクしないで、一部をキャッシュに残します。そのため一定の期間での競争には勝てません。
1,000万円をすべて株式投資にあてるかどうかの決断は、収入が保証されている間しかできません。定年後の退職金を株で増やそうとするのは、リスクが高すぎます。結局、その決断ができるのは45歳までで、この時の決断があなたの老後の人生を左右するのです。
でも、この時の決断をしないからといって、あなたの人生が、老後悲惨だといっているのではありません。
「こういってしまえば、お終いだが……」と断りを入れつつも、「結局のところ、株で財産を増やすより、できるだけ長く勤めて、あとは身の丈に合った生活を送るのも一法」なのですから。