宮崎正弘さんの「中国の負債は30兆ドル」…に思う

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

お知らせ

読み込みに失敗しました。

しばらくしてからもう一度お試しください。

重要なお知らせ すべて見る

衣雲さんのブログ

最新一覧へ

« 前へ27件目 / 全114件次へ »
ブログ

宮崎正弘さんの「中国の負債は30兆ドル」…に思う

 昨日はリベラルの論客、天木直人さんのメルマガから日記を書いたので、バランスを取るために今日は保守派の論客である宮崎正弘さんのメルマガから。

 2003年に「The Coming Crash in the Housing Market: 10 Things You Can Do Now to Protect Your Most Valuable Investment」という著書で「その内アメリカで住宅バブルが崩壊するよ」とサブプライム危機を言い当てて有名になったJohn R. Talbottが先月、BBCのインタビューで「中国の債務は30兆ドル」という具体的な数字を出して警鐘を鳴らしました。これを聞いた宮崎さんは大喜びで、「理論的には人民元の50%前後の切り下げ以外、策はない」と持論を述べております。

 実際、多くの人が中国の債務はGDP比で200-300%(※中国のGDPは9-10兆ドル)としているので、Talbottの試算もその一つに過ぎません。しかもそのほとんどは国有銀行から国有企業への貸し出しで、折からのオイルマネー後退に伴う金融緩和でこの5年の間にGDP比で50%も債務が増えています。だから、先日の日記(「KOSPIは半年以内に暴落か?」)でも書いた通り「オイルマネーが後退したにもかかわらず中国でバブルが起こった」わけですが、この融資が焦げ付き莫大な不良債権として国有銀行に伸し掛かっています。この「中国版不良債権問題」は多くの有名シンクタンクが世界経済の爆弾として懸念しており、仮に中国の債務問題がコントロール不能に陥れば、早晩人民元が通貨としての信頼を完全に失い世界経済はリーマン・ショック以上の大混乱に陥る可能性があるとさえ言われています。
 
 宮崎さんも書いてますが、中国の債務問題の恐いところはその額の大きさではなく、不良債権額が今も刻々と加速度的に膨らみ続けているというところです。リーマン・ショック後の大規模金融緩和によって中国企業も完全なモラルハザードに陥っている上、その経営者の多くが中共でも有力な地位を占めていることもあり、危機意識よりも既得権益の死守に躍起なのです。

 16年一月だけの新規融資額は2兆5000億元(およそ50兆円)。その殆どが前期借り受けの延長と利払い、わかりやすくいえば手形のジャンプに遣われた。2月は旧正月を挟んだため前月比の三分の一だったが、基本的に負債は増えていく一方で、いまさら海外旅行で中国人がカネを節約せよと言ったところで解決できるような事態ではない。
 現在さかんに議論されているのは銀行、証券、損保業界の再編である。だが、鉄鋼、石炭産業の再編ひとつとっても既得権益組との衝突が繰り返されており、根本の解決にはいたっていない。

 宮崎さんも以上の様に述べており、中共内部の人間が「爆買」と称して海外にマネーを落とし、国内では既得権益を守るため不良債権処理の大きな壁となって立ちはだかっていることがわかります。歴史は繰り返されるとはこのことで、中共の内部での衝突がまたしても中国を蝕みつつあるのです。

 流石にこれはマズイということで、第13次5ヵ年計画では2016年の重点課題として生産過剰産業(石炭・鉄鋼・造船など)への新規参入の排除とゾンビ企業の一掃を掲げています。その一手として不良債権の株式化を検討し、一部実験的に進めていますが、これは悪手中の悪手。不良債権を処理して銀行を健全化するどころか、帳簿の上で債権をリスク資産に転換することで自己資本の低下を招き、銀行の体力を著しく奪う結果を招くでしょう。

 そこで宮崎さんは以下のように持論を述べています。

 中国の負債は国内、つまり国有銀行が国有企業に貸し出すという融資が主体であり、対外債務が比較的少ないという特徴がある。となると解決への処方箋は国内経済問題として処理される。理論的にいえば、人民元の為替レートを50%前後切り下げると、次の展望が生まれる。
 周小川(人民銀行総裁)、楼継偉(財務相)らの公式発言を聞いていると、その方向での検討がなされてはいないようで、李克強首相は「人民元は安定している。中国は通貨切り下げの対処を取らない」とする発言に象徴される。
 危機は先送りされている。空前のクラッシュは近い。

 「対外債務が少ない」「自国通貨ベースの債務」と、一見すると日本の債務問題と似ていますが、その実情はまったく異なるものです。日本の債務は国が日本国民から借りた借金なので、日本国政府がデフォルトを宣言するかハイパーインフレに陥らない限りこの世から債権が消滅することはありません。逆に言えば、だからこそ簡単には解消せずこれだけ長い期間に渡り問題視されているわけですが…実際のところ、財政健全化か積極財政かという議論はそれこそ松方正義と高橋是清よりも遥か昔まで遡る様な問題なので、日本国民としては「デフォルトとハイパーインフレにならない限り勝手にやってなさい」といっててよいかもしれません。
 ところが、中国の債務は中国国民が中国国民から借りた借金なので、あちこちで火種がくすぶり、一度大型倒産が起これば倒産が倒産を呼ぶ連鎖倒産につながります。つまり、ちょっとしたきっかけでこの世から債権の大部分が文字通り消滅してしまう可能性高いのです。これはそのまま中国の経済規模の大幅な縮小を意味し、「空前のクラッシュ」に結びつく可能性が高いということです。
コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。

ネット証券比較

みんかぶおすすめ