株主還元の方法に自社株買いと増配がありますが、それぞれに特徴があります。
「私は増配のほうがいいわ! だってたくさんもらって遊べるもん」
「私は、配当より株価が上がったほうがいいわよ。少しくらい配当金もらうより、値上がりのほうがずっと儲かるじゃん」
それぞれに言い分はあるようですが、経営者の立場としては、どちらがいいのでしょうか。
どちらも、現預金が減ることには変わりませんので、資金がない会社にはできません。
自己株式の会計処理については様々な考え方があります。私は現預金が、投資有価証券に振替わるほうがいいと思っていますが、現行の会計基準では、自己株式の取得を「資本の払い戻し」と捉えています。そのため、自己株式を取得すると純資産の部に「自己株式」として△(マイナス)表示されます。つまり、この分自己資本が減少していることを表しています。
金庫株は発行済み株数から除外して計算されますので、EPSは上がります。EPSが増えても、発行済み株数が減るので時価総額は変わらないように見えますが、流通株数が減少し需給が改善するために、株価が上がり時価総額は増えます。
資本勘定を減らせるので、ROEの改善になります。これも株価が上昇する一因です。
一方の増配は資本勘定が減り、総資産は増配分だけ減少します。どちらも総資産の減少につながります。
経営者の立場からすると、自社株買いのほうを選択しそうですが、会社の資本政策もあり増配を選択する経営者もいます。
バリュエーションから見ると、自社株買いはPERを低下させ、増配は配当利回りを引き上げる効果があります。どちらも、株価引き上げの効果はありますが、自社株のほうが、経営者が自社の株価が低いと判断している点で安心感があります。
「でも、あたしはやっぱ、お金が欲しいわ!」