こいつは今まで経験したことのない、不思議な話だ。
この間、行きつけの書店で三島由紀夫の「命売ります(ちくま文庫)」という小説をみつけた。
三島にしては珍しいライトな文体で、ミステリーになっていた。
そこはかとないユーモアのあるところは、星新一のような味わいがある。
オモロイので、一気に読んだ。
だが最後が少し、残念な出来のように思えた。
(つい、「仮面の告白」のようなラストを期待してしまうもので)
その後、新聞の書評欄でみかけて気に入った書籍を読んでみた。
それは、荒川洋治が書いた「文学の空気のあるところ」だった。
(中央公論新社 2015.6.10.初版発行)
*************************************
大学で東京に出てきたぼくが最初に行った文学散歩は、埼玉県飯能市でした。
『定本 岩魚』の詩人蔵原伸二郎が住んでいたあたりを町名、番地をもとに歩いたが見つからない、
河原があって、この辺かなというところで帰りました。
詩人といえば、これは神奈川県ですが、
茅ヶ崎市の南湖院の跡地を訪ねたことがあります。
国木田独歩(1871-1908)が亡くなったところです。
茅ヶ崎駅から海のほうに向かってまっすぐ歩く。
二十分くらい行くと、南湖院の跡地があります。
独歩は結核で、その療養所にいたんです。
東洋一のサナトリウムと言われた南湖院。
(略)
*******************************************
(「文学の空気のあるところ」、P.101~102より抜粋)
ここを読んだときに、あらら・・・と思った。
三島の「命売ります」でも、茅ヶ崎と飯能が出てくるからだ。
********************************************
──返事が届いたのは、四日あとだった。
次の週の日曜日を指定して来たのはよいが、所は茅ヶ崎の、
藤沢駅からかなり遠い、別荘らしい「中島」という家の所在地を示した地図が同封してあった。
(「命売ります」、P.59より抜粋)
飯能で下りると、一緒に下りた乗客は皆散ってしまったので、
羽仁男は安心して、閑散な駅前広場へ出た。
(「命売ります」、P.228より抜粋)
********************************************
所は茅ヶ崎の、藤沢駅からかなり遠いという部分で、?マークが浮かぶ。
「命売ります」が書かれたのは昭和43年、とウィキペディア。
茅ヶ崎市ができたのは、昭和22年。
なんでわざわざ、藤沢駅からかなり遠いと書いたのだろうか?
茅ヶ崎駅があっただろうから、そんなこと書く必要がないのに。
話がそれてしまった。
驚いたのは、このように何気なく続けて読んだ、
まったく関連のない書籍二冊に、同じ地名がふたつも飛び込んできたことだ。
茅ヶ崎だけなら、偶然ダブっても不思議ではないかも知れないが、
それに飯能が加わるとなると、これはなにか尋常じゃぁない。
いや、だからなに?
って言われると、困っちゃうんだけど。
「仮面の告白」のラストシーンみたいには、いかない。
この不思議な話のことは、荒川洋治に詩にしてもらおう。
PS1:埼玉県は、父方の先祖がいる土地だけどな。
この後、なにかムー的なことでも起きたり、判明したりするのだろうか?
PS2:府中で葬式のあった親戚は、母方だけれど、血が繋がっていない。
しかし、とても仲がいい。
葬式の時に、府中で初めて知り合った人が、
どーいうわけか藤沢市の土地関連な役人で、
父方祖父の残した土地のことで、即刻世話になったことがある。
この役人の苗字は、しかもオイラと同じだった。
オイラには、こういうムー的なことが、しばしば起きるのだ。
江の島地縁のひとだそうだ。