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1-7 短期投資はギャンブルです


株式投資を始めるきっかけが、小額資金をゲーム感覚でという人は多いようです。そういう人たちは、
「全財産を株式に投じていない」
「相場観を持たない」
という共通点があります。


全財産を株に投じていないので、カジノでゲームを興じるような感覚で、株に挑戦しています。よく勉強をしているようですが、それはゲームに勝つためのもので、チャート分析が中心です。


儲けになると思えば、外国為替でも、商品でも、先物でも、なんでもやります。結果的にリスク分散になりますから、株で負けてもそれほど痛手にはなりません。そのため、信用取引の売りも買いも、レバレッジを利かせてやります。小さい儲けには敏感で、カラ売りなどは平気でやります。


いつかは大いに儲ける夢は捨てていないでしょうが、投じる金額が少ないので、結果的には株を楽しんでいる程度にしかみえません。


短期投資はギャンブルです。証券会社などでは、さすがにギャンブルという言葉は使わないで、リスクという言葉に置き換えています。しかし、結果が分からないものへ資金を投じるという行為はギャンブルであり、勝った人は負けた人の損失で利益を出し、テラ銭を取る人だけが最後に儲かるという構図は、まさにギャンブルそのものです。


資本主義の下では、国が後押しをして、その取引を仲介する巨大な胴元まで作っているのです。いまや金融資本はこのメカニズムで成り立ち、それが経済の血となってわれわれに還元されています。


株はギャンブルだから、やめたほうがよいなどというつもりはありません。ただ、楽しんでいるだけの株式投資にとどまっているかぎり、1年後には80%もの方が株の世界から遠ざかるのが現実です。


著者は以前、ある掲示板の常連でした。元気で書き込みをやっている人でも、3年続いた人はごくまれで、たいていの人は1年くらいで書き込みをやめてしまいます。株で損をした人ばかりではないと思いますが、株に興味をなくしてしまうのです。


もうひとつ、これもその時代に、デイトレーダー協会会長と称する人がテレビに出演して、デイトレーダーの現状について話をしていました。その中で、デイトレーダーとして生計を立てて行ける人は、1年間で1%以下になってしまうそうです。つまり、100人に1人だけが生き残り、後の99人は脱落して行くとの話です。


1日のうちにすべての取引を完了し、翌日に持ち越さないという投資手法は、確かにリスクを最小化して資金効率を最大にするという点で一世を風靡しました。ただ、デイトレーディングは、時間を味方につけないという点では、もっとも投機的な株式投資手法といえそうです。


それではなぜ、デイトレーディングが廃れてしまったのでしょうか。それは、機関投資家との競争に負けたからです。とくに2000年代に入って台頭したヘッジファンドは、巨大なコンピューターを武器として、金融工学という一般の人には高嶺の花のような学問を作り上げ、莫大な資金と情報で株式市場を席巻してしまったのです。


カジノで、プロ相手にポーカーをするようなものですが……。資金、情報、知識、経験、特に最近では、取引方法や、税法までも彼らに有利になり、個人が何十人掛かってもかなう相手ではありません。


短期投資が長続きしない要因として、制度上の不利益もあります。


短期売買の利点として、相場下落時の空売りをあげる人が多く、ネット証券の中にも積極的に空売りを勧めています。売り方には、逆日歩、現引きができないといった制度上の不利があるのに、買い方には、企業成長からの配当、資産形成といった利益がえられます。買い方の利益はすべて、売り方の負担になります。


安くなった手数料も、売買が増加すると無視できなくなります。税金も、利益確定をする都度20%が掛かりますが、損失との相殺はその年限りで、翌年には持ち越せません。長期の場合には、売らない限り不要です。


このような不利益にもかかわらず、株式投資の売買をしている個人投資家の90%までが、短期投資家といいます。売買手数料を主な収益源としているネット証券、取引所、情報機関などは、市場の活性化に繋がる情報だけを大きく扱い、本屋さんの店頭でも株のSNSでも、短期投資の話題が中心になっているのです。


欧米諸国に比べて、日本の個人資産に占める株式の資産構成が、圧倒的に少ない原因の一端かもしれませんが、金持ちはあまり株で儲けたという話をしたがらないのも、原因となっているようです。


儲けの取り合いが株式市場なのですから、全員が儲かる投資法や、絶対に儲かる法則もありません。儲けの頂点に立つ人はごくわずかで、儲けられない多くの人が頂点に立つ人を支えているのです。




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