「24人のビリー・ミリガン」

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「24人のビリー・ミリガン」

翌日、ドロシーとジュディは

ゲイリー・シュワイカートにも秘密を知らせるべきだとアレンに言った。

 

「とんでもない」

「でも、そうしなければ」ジュディは言った。「あなたを刑務所から救うためには、

 他の人たちにも知ってもらわなければならないのよ」

 

「約束したじゃないですか。同意したはずです」

「わかってるわ」ジュディは言った。「でも、大事なことよ」

 

「アーサーが駄目だと言ってる」

「アーサーと話をさせて」ドロシーが言った。

 

アーサーが出てきて、ふたりをにらんだ。

「いいかげんにしてください。考えることがいっぱいあるし、勉強もしなければならない。

 こんなふうにしつこく悩まされるのはうんざりです」

「ゲーリーに話す許可が欲しいの」ジュディは言った。

「ぜったいに駄目です。あなたたちふたりに知られているだけでも、まずいんだ」

 

「あなたを助けるためには必要なのよ」ドロシーが言った。

「助けはいりません。ダニーとデイヴィッドは助けを必要としているかも知れないが、

 わたしの知ったことじゃないんです」

 

「ビリーを生かしておくことは大事なんでしょう?」

アーサーの尊大な態度にかっとなって、ジュディは尋ねた。

「ええ」アーサーは言った。「でも、その代償はどれだけ高いものになるか。

 わたしたちは狂ってるとみんなに言われるでしょう。もう手に負えなくなりかけてるんです。

 ビリーが学校の屋上から飛び降りようとしたときから、わたしたちはビリーを生かしてるんです」

 

「どういうことなの?」ドロシーは尋ねた。「どうやってビリーを生かしてるの」

「いつも眠らせておくんです」

「これが審理にどれだけ影響するか、わからないの?」ジュディは訊いた。「刑務所か自由かがきまる    

 のよ。刑務所の塀の外で、考えたり勉強したりする時間や自由がほしいんじゃない?それともレバノ              

 ン刑務所へもどりたいの?」

 

アーサーは脚を組み、ジュディからドロシーへ、またドロシーからジュディへと視線を移した。

「女性と口げんかをしたくありません。この前と同じ条件で認めましょう──つまり、ほかのみん 

 なの同意が必要だってことです」

 

**********************************************

 

★「24人のビリー・ミリガン 上」

  ダニエル・キース著 堀内静子訳 早川書房 900円+税 2010.9.15.二十四刷

  P.104~106より抜粋

 

今、123ページまでの序盤だけ読んだところだ。

ビリー・ミリガンは実在の人物で、連続強姦魔として、さらに多重人格障害者として、

米国の犯罪史上においては有名な男性だ。

米国での初版は、1981年だという。

 

ダニエル・キースがどんな風に24人の多重人格者を描くのか、興味を持った。

初めの方は、他の人格が現れてくるところを少しばかり詳しく書いて、

あとは北方謙三や「バイオハザード」のように、実にさっぱりしたものだった。

 

表紙をめくるとすぐに、ビリー・ミリガンの描いたという絵が写真で掲載されている。

その十二枚の絵は、絵を描くのが得意なビリーの内部にいる数人が書き表したもので、

その画風はまったく異なっている。

 

疑おうと思えば、いくらだって疑える。

この十二枚の絵も、本人が描いたかどうか外部者にはまったくもって不明だ。

 

同じように、抜粋部に登場するゲイリー・シュワイカートも、

ビリー・ミリガンに疑いを抱く場面が、

そして、その疑いがはかなくも揺らぎ出すという場面が、

ちょうど123ページ部分だ。

 

ゲイリー・シュワイカートは、ビリー・ミリガンの中にいるという数人に目をつけ、

生まれ変わりの証拠を掴むために、それぞれのゆかりの地を訪ねたいと思いだしている。

 

最後まで読んでみないことには、

いやいや読み終わったとしても、いろいろな疑念がぬぐえるかどうかわからない。

が、読んでみないわけにはいかない。

 

PS:神社でオイラに憑いたというあの世の用心棒、

   ”弁慶”と”ウインダム”の謎を、少しでも解くきっかけをつかめるかも知れない。

 

   特に京都の伏見稲荷大社で憑いた”ウインダム”は、

   村上春樹の意識の地下二階にあるという創作の部屋へ、

   どうやら出入り自由な眷属らしいという気配が・・・。

 

 

 

 

 

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