情報が株価を動かすということは、今も昔も変わりあません。戦争勃発や石油掘削などの情報をいち早く入手して、株で大もうけしたという話は、今でも語り継がれています。証券会社などでは、収益の源泉になる情報の入手に、費用を惜しまないようです。
ただ、今日のような情報社会では、株価を動かすような情報は、ほとんど一瞬のうちに世界中に伝わりますから、その情報で株取引をしても、大儲けになるとは限りません。むしろ裏情報をひそかに入手して、公になったときに反対売買をするほうが、確度が高いようです。
もちろん、情報収集は大切な機能ですが、同時にその情報を分析して、株価に反映させる能力が問われるようになりました。ヘッジファンドも金融機関も、情報を分析する人材、資金力、影響力でも、圧倒的な力を持っています。でも分析力では、必ずしも数が勝つとは限りません。
最近の相場のように、株価を動かす情報が、ある程度予測できるような状態にあるときは、むしろ情報分析力が株価を動かします。
先週のこの欄で、「これからの相場が、14,000円を底として、年末に向かって上昇トレンドに入ると考えている人は、今が買いどきです」と。私には珍しく、買える銘柄群をあげて、強気の見通しを掲げました。
私はもともと、長期運用者ですから短期の値動きには、一喜一憂しないのですが、先週月曜日(19日)に、信用取引で500円台の株(東証一部中型株)を2,000株買って、見通しが当たるかどうか、追跡することとしました。
この銘柄は、前期大幅な増益と増配を発表しましたが、今期見通しが横ばいになるとして、発表当日の株価は反応しませんでした。買いは、金曜日(16日)終値で指値し、19日前場で買いが成立しました。当日の引けは、買値の5円ほど下の安値引けとなりましたが、出来高はほとんど増えていません。
その後1週間の動きはどうでしょうか……。
日経平均は、16日の金曜日には14,100円でした。19日の週の材料としては、日銀政策決定会議や、アメリカの長期金利の行方などがありましたが、決定的な材料は出ないだろうというのが、大方の見方でした。
相場は、月・火曜日と小康状態を保っていましたが、水曜は前日のアメリカ株が137ドル安、日経CMEも台割れで帰ってきたところから、大幅安は避けられない空気でした。ところが、14,000円割れは、前寄りと後寄りの30分だけで、引けは33円安で引け、何とか14,000円台を維持しました。この日市場では、14,000円を割り込むと、現物に買いが出て、先物が後を追うという相場つきとなってきました。水曜を境として、汐の流れが変わったようです。
私の株は、火曜日に買い値の水準まで戻し、水曜は2円高、わずかながら利益が出ています。木曜は、前日のアメリカ株が158ドル高と反発したことから、朝方から買われ日経も300円ほど上昇しました。私の株も5円高とつれ高でした。
そして金曜日。日経は124円高の14,462円で引け、1週間で360円ほど上昇しました。私の株は、この日も高く、結局、買い値から2.4%プラスとなりました。短期売買のかたにとっては、「なんだ」といわれるかもしれませんが、年末までに倍の可能性を検証するため、期日まで様子見とします。
私が14,000円を底として、年末に向かって上昇トレンドに入ると考えたのは、5月18日「ヘッジファンドの一人負け」のなかで触れたように、今期のEPSが1030円台で、予想PERも13.6倍になるというファンダ分析によるものですが、判断の背景にあるのは……。
未曾有の金余りとインフレ定着
消費増税が今期業績に与える影響の見極め
政治の力、安倍総理を助けようとする暗黙の力
があったと思っています。
この週、何回となく14,000円割れがありましたが、すぐに戻します。外国人の売りに対して、誰かが大量に買っているようです。「かんぽ生命」の名前があがっていましたが、ほかにもいるかもしれません……。
容易に推測はつきますが、証拠も根拠もないストーリーでは、「風説の流布」に当たるとも限りません。皆様のご想像に任せたほうがよいようです。そのさい、株は需給で動くこともお忘れなく。
情報の分析と時間、これだけが、プロ集団に討ち勝てる個人の武器ではないでしょうか。