オリンピックに世界の目が集中している間に、日本を取り巻く情勢が大きく変わってきました。年初からの1兆円を超える外国人の売りを見ていると、アベノミクスの終焉とか、日本売りをいう人が現われてもおかしくない状況です。
国際情勢の変化は、安部首相の靖国神社参拝を境に表面化したようですが、中国にしろ韓国にしろ、国際環境は以前と少しも変わっていません。むしろアメリカとの関係が変わったことが問題です。
戦後70年近く続いた日米関係は、日本が、TPP、普天間、憲法解釈と、アメリカ寄りになればなるほど、アメリカは離れていくようにも見えます。アメリカは、日本が「ノー」といえる国になったら、かえって「うざい」と思い始めたようです。今や日本人の多くは、アメリカが日本を守ってくれるのか、疑いの目で見るようになってきました。
なぜ、国際情勢を持ち出したのでしょうか……。株価と密接に関係するからです。
昨日、「株価は何で決まるか」というテーマで、チャート、ファンダ、需給と、将来の株価を決める要因をあげたのですが、結局のところ、「株価は将来の需給を先取りしながら、需給で決まる」というような、あいまいな結論となってしまいました。
「明日の株価は分からない」では、デイトレをやるしか方法がありません。私は株の運用を長期でやっていますから、年間の株価のイメージは必ず持っています。そのときもっとも重視するのが政治情勢です。
「株価は政治で決まる」というのが、私の株価見通しです。株価は経済を反映し、経済は政策によって変わってきます。経済がよくなれば株価は上がるのですが、株価は需給で決まります。将来株価が上がると考える人が増えれば、需要が増大し現在の株価を引き上げます。株価は経済を映す鏡といっても、政策を信じて株の需要が増えれば株が上がり、経済がよくなるのです。
このことは、12年末の政権交代以降の株価と経済の関係を見れば一目瞭然です。90年代のバブル崩壊以降、長らく引きずってきたデフレが終焉し、少子高齢化の中にあっても、株価は上昇し、つれて経済は回復しているのです。今日世界経済を引っ張っているアメリカが、100年以来の大不況をわずか4年間で克服したのも、株価の上昇が最大の要因です。
中国はどうでしょうか。株価が上がらないため経済力が低下し、国内問題での矛盾の解決のため、軍事力で世界の富を獲得しようとしています。金融不安から問題視されたEUも、株価の上昇とともに経済上昇の兆しが見えてきました。
いまやその国の株価が、経済力だけではなく国力を表わすようになっているのです。このことを一番よく知っているのが、外国人であり、ヘッジファンドなのです。年初からの外国人売りは、まさに安倍内閣を信用しなくなった表れと見ることができます。
安倍内閣も、従来のどの内閣も株価を意識しています。いまや株価を上げなければ、経済の建て直しはおろか、安倍総理の夢である日本の実現ができないこともよく知っています。株価維持のための政策は、見えないところで着々と打たれています。
今回の下落相場でも、個人のデイトレ組と、決算を控えた一部の金融機関は追従しましたが、日銀や、年金基金、個人資産を預かる投資信託などは、株価の維持を図っています。
安倍首相が経済回復を掲げて政権交代を果たしたときから、日本の株価がフェアバリュー上限の20、000円になると予想しましたが、現在も変わりません。今年20、000円になるわけはないでしょうが、安倍内閣が続く限りこの目標は不変です。
昨年の需給は、外国人が日本人の眠っている資産を15兆円も買って、株価を6割も上昇させました。まさに外国人が作ったアベノミクス相場だったのです。背景には、FRBによる超金融緩和措置があったわけですが、今年はこれが縮小することが予想されます。当然のことながら外国人は、アベノミクスにかかわらず、日本市場から資金を引き上げにかかるでしょう。仮にその規模を5兆円ほどとするとどうでしょうか。
その受け皿となるのが、個人を中心とする日本人です。個人の金融資産は、1,500兆円といわれていますが、そのうち投資信託を含めた株式投資は8%、55%が現預金です。先進5カ国に比べても、現預金比率が極端に高いのが特長です。理由はデフレで、現預金が一番有利な資産保全手段だったからです。
日本もいよいよインフレ時代に突入し、今年はその序章です。そうなると、富裕層の現預金が、リスク資産に回ります。株式、外国債、商品とさまざまですが、すでに投資信託を買う動きは、よく耳にします。個人の現預金の1%が株式に向かうだけで、外国人売りを吸収できます。
個人以外でも、需給を支える組織、法人が目に付きます。いわれているだけで、
年金基金GPIFの買い増し
日銀によるETFなどの金融資産買い上げ
事業法人が、配当金税率の引き上げ補填のための増配と自社株買い
安倍内閣の経済政策を後押しするための金融法人による株価維持
などなど……。
今年の株式需給は、安倍内閣が特別に対策を打たなくてもかなりいいのです。下がれば必ず手を打ってきます。そうしないと政策の実現ができないからです。最大のリスク要因は、内閣の支持率だと思っています。
今年の相場は、「アベノミクスより安倍内閣」だと思っていますが、買われるテーマ業種は変化します。
従来のインフレ、内需、頭脳産業などは、昨年来の相場で大きく買われていますので、今年は安倍内閣の政策期待があり、昨年からの相場を出していない業種に日が当たるのでは……。
具体的には、海上防衛、資源獲得、輸出産業、原子力発電などがあげられます。内需型の建設、小売、医薬品などは、利益の伸びが低いため、昨年期待が大きかっただけに、今年の値上がりは相対的に低くなりそうです。
銘柄の選択は、あくまで利益が伸びるかどうかにかかっています。