17日の東京株式市場で金利が業種別の株価を染め分けた。不動産株が上げた一方、保険株が下落。長期金利の上昇基調一服の影響を色濃く映した。昨年末まで金利の先高観が強まっていたが、年明け以降は金利の一本調子の上昇に疑問符がつき始めた。金利低下は一般に不動産株に追い風、保険株には向かい風になるとされる。加えて不動産市況の改善、保険料の引き下げ競争などそれぞれに抱える固有の要因もある。
金利の低下は企業の資金調達コストを引き下げる半面、資産の運用収益は悪化しやすくなる。業種別日経平均で不動産は1.8%値上がりし、上昇率の上位に入った半面、保険は1.1%安と下げが目立った。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは0.670%と前日比で横ばい。昨年末に0.7%を上回っていたことを考えると、なお低い水準だ。個別銘柄でも東建物(8804)が2.1%高、住友不(8830)が1.4%高だった一方、第一生命(8750)は2.6%安、東京海上(8766)は1.4%安となった。
昨年までは金利の先高観が強く意識されていた。ところが、SMBC日興証券の土井俊祐金利ストラテジストによれば「12月の米雇用統計が低調だったことで潮目が変わった」という。米雇用統計の評価は分かれるものの、それまでリスク許容の姿勢に傾いていた分、全体としては先行きへの慎重派が増え、安全資産である債券が買われやすくなっている。土井氏は「夏ごろには長期金利が再び0.6%を下回るのではないか」とみる。
金利の上昇一服のほかに不動産株には市況改善という好材料がある。オフィスビルなどの不動産価格は首都圏近郊では上向き始めており、不動産各社の収益拡大につながりやすい。地価も反転への動きがみられ、各社が保有する土地の含み益は膨らむとみられる。地価上昇は取得コスト増にもつながるが、みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは「買い入れ負担の増加より完成させた物件の売却価格増による恩恵の方が大きい」と指摘する。
一方の保険株。保険料の引き下げ競争という不安材料を抱える。日本生命は7日、4月から個人向け主力商品の保険料を引き下げると発表した。楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは「第一生命などにとっても保険料の引き下げ圧力となり、収益性が悪化する可能性がある」と指摘する。
<日経電子版より>