「企業の70%は赤字で、個人投資家の90%は損をしている」と言われる。企業のデータについては国税庁の資料に基づくものであり、個人投資家については信用取引評価率がその根拠である。
株のトレードもビジネスも目的は利益をあげることだが、利益を求める行動にリスクはつきものである。株のトレードもビジネスもリスクなしの運営は考えられない。東京電力のような極端な例をあげるまでもなく、天下の優良企業のトヨタでも5000億円もの赤字になったことがある。問題はいかにリスクを少なくして、なお安定して高収益を維持するかである。ビジネスであればそのために魅力ある商品を開発したり、財務体質を改善したり、コストを下げたり、市場動向を調査したり、社員教育をしたりとありとあらゆる手段を講じる必要がある。ビジネスの規模がどんなに小さくてもリスクを減らし安定した利益をあげていくために、Pkan-Do-See は欠かせない。
株のトレードとビジネスのリスクに関して決定的に違うものは株のトレードはそれ自体付加価値を生まないゼロサムの世界であるのに対し、ビジネスは基本的に付加価値を生みそれを収益の源泉とすることである。だから株のトレードで利益を上げることの方がビジネスで利益をだすことよりも難しい。損をする可能性という意味でのリスクについては株のトレードの方がビジネスよりはリスクが高いのである。最初に挙げた数字もそのことを物語る。
証券を統計的に扱う世界ではリスクとは(収益の)変動率のことをいう。収益の年度ごとの変化を株のトレードとビジネス一般とで比べると株のトレードの方が変動はかなり大きいのではなかろうか。世の中には景気の変動があり、株価はそれを先取りしてより大きく変動する。個々のビジネスは千差万別であり、景気の変動に負けない会社もある。株のトレードにもいろいろなやり方があるが、上昇相場でも下降相場でもそして相場が持合いの場合でも着実に利益を上げられるようにしたい。
ビジネスを行おうというときにそれがいかに小規模なものであっても安直に始める人はいないと思う。それに比べると株のトレードに関してはずいぶん気楽に始めるひとが多いのではないだろうか。私自身も別に例外ではなく、甘い期待だけで始めたように思う。より難しい世界に準備も十分にしないで挑戦するのだから往々にして痛い目に遭うのはむしろ当たり前かもしれない。今ではリスクがどんなものかということを前よりは理解し、できるだけ損失を少なくする方法もある程度実地で行うことができるようになったと思うし、また相場環境がリスクを取れる状況かどうかも少しは理解できるようにはなったように思う。これを理論的統計的につきつめたいとは思うけれどなかなかそのゴールには届きそうもないと感じている。