今回の証券投資増税で、個人投資家の売買方法はどう変わるのでしょうか。
株の売買益に掛かる税金が倍になると、利益を上げるためにより多くの売買をするようになるのか、あるいは売買を手控えて支払う税金を減らすのか、皆さんはどちらを選びますか。
当面は、売買回数を減らす方向に動くとみていますが、相場の動き次第では、回転数を上げて増税分を補おうとするかもしれません。一生懸命働いて、証券会社と国に奉仕することになるのですから、ちょっと複雑です。私は、株の売買益に掛かる増税の影響は一過性のもので、税制が定着すれば売買回数の変化が、相場に与える影響は限定的と見ています。
ただ、NISAで示された投資方法は長期所有です。5年後に玉手箱の蓋を開けたら、全員がマイナスだったというのでは格好がつきません。経済発展を望まない政府はありませんので、当然といえば当然ですが、実際にはバブル以降の経済は、デフレと少子高齢化という免罪符の下で、右肩下がりでもやむなし見られてきました。
長期投資が投資のあるべき姿とするならば、少なくとも安倍内閣の下では、今後とも成長を続けられると見ているのでしょう。日銀も政府関係資金も、株価には今まで以上に気を使うことになります。そうなれば、個人の投資行動は、短期よりも長期投資に変わるかもしれません。投資行動が投機から投資に変わり、買われる銘柄には変化が現われることは十分考えられます。銘柄の選択には注意を払う必要があります。
経済界のほうでも、企業価値の向上のため、収益の増大、増配、自社株買いなどに力を入れてくると思われます。それを期待したいと思います。
売買代金で個人の占める割合は2から3割程度といわれていますので、税制改革の影響を受けない法人、外国人の動向が相場の鍵を握っている状況には変化がないでしょう。
法人の場合の税率は、売買配当とも総合所得となりますので、表面的には40%とされていますが、中小企業では20%を切りますし、何よりもその他の経費との相殺が可能です。配当課税でも還元を受ければ、ゼロにすることは可能です。
このように株式投資は、法人のほうが有利にできています。今回の増税でこの差は拡大します。となると、法人で取引できる投資信託に目が行きますが、手数料や売却益に掛かる税負担を考えるとなんとも悩ましいところです。
自分で法人を立ち上げて株式投資をするという究極の手もありますが、経験者としてあまりお勧めできません。この辺の事情は、この欄でも取り上げていますので、法人を立ち上げる前にご一読を。
というわけで、今回の増税が相場に与える影響は、あったとしても一過性に終わり、それほど問題にはならないと見ています。
とはいっても、これだけの投資環境の変化があったわけですから、投資環境の変化に備えて手を打つ必要はあります。
私としては、売買益課税には、これまで以上に長期投資を心がけ、簡単には売買しないことにします。売らなければ税金を払う必要はないのですから、長期投資に耐える銘柄の発掘に今まで以上に努力します。年末には、持株を点検し、損勘定になっている株式を値洗いして損金を捻出し、年間の利益を抑えるように調整します。より決めの細かい資産運用に徹することが大切です。
配当金に掛かる税率については、年末調整で還元を受けるつもりです。税金の還付を受ける場合には、配当金が所得とみなされます。そのため、受け取る還付金より、その他の負担金(住民税、健康保険料、介護保険料、高齢者保険料など)が多くなり、節税にならないこともあります。来年度以降は20%分が還付されますので、年金以外収入がない人では、還付を受けたほうが得になりそうです。一度シュミレーションしてみては。
以上ですが、増税による相場への影響はないと見ていますが、増税による投資環境の変化に対しては、注意深くその影響を観察し、備えていく必要があります。
来年の相場見通しについては、これらの影響を踏まえて、需給関係が極めて良いことが想定されます。見通しについては、28日のこの欄で……。