今夜はボルカールールの採択ですよー
ボルカールールって800ページもあるんだって
[東京 10日 ロイター] -米当局が10日に発表する「ボルカールール」への警戒感が市場で高まっている。米銀行による投機的な自己勘定取引の禁止や、ヘッジファンドなどへの投資規制が骨子だが、当初より厳しい内容になるとの見方が広がっているためだ。
堅調さがみえる米経済を追い風に、アベノミクス相場には好環境が続いているものの、ヘッジファンドが日本株買い・円売りポジションを巻き戻せば、東京市場は冷や水を浴びかねない。
<当初と「かなり異なる」内容に>
米金融規制当局は、2年にわたる協議を経てボルカー・ルールの最終版を10日に発表する。当初は銀行勢の攻勢で「骨抜き」になるとの見方が強かったが、JPモルガン・チェースが2012年に起こした「ロンドンの鯨」と呼ばれる巨額損失事件で流れは逆転。最終版は当初の提案から「かなり異なる」(米証券取引委員会の共和党系委員であるダニエル・ギャラハー氏)内容になりそうだという。
2008年のリーマン・ブラザーズ破綻を契機に、ボルカー元連邦準備理事会(FRB)議長が中心となって、米金融規制改革法(ドッド=フランク法)に盛り込んだこのルールは、マネーフローの縮小や変化を通じて銀行ビジネスだけでなく、金融市場や経済にも大きな影響を与える可能性がある。
確認すべきポイントは、1)マーケット・メーキング(値付け業務)も禁止されるか、2)規制されるヘッジ取引の範囲、3)日本国債など米国債以外も自己勘定トレーディング規制の対象となるか、4)導入時期(当初は14年7月予定)──など多岐にわたる。付帯条項など「抜け道」につながる例外があるかについてもチェックが必要だ。
800ページとみられている最終版を吟味するには、相当の時間が必要になりそうだが、金融市場ではリスクオン相場の転機となりかねない、という懸念の声が漏れる。ルールの詳細を見極めるまでは、市場の反応が読み切れないと「戦々恐々」としたムードがマーケットに充満している。
BNPパリバ証券・シニアフィナンシャルアナリスト、川崎聖敬氏は「投機的という線引きは難しく、通常の取引に影響を及ぼす懸念がある。シャドーバンキングなどにマネーが逃避する可能性もある。一方、一部のマーケットから資金が流出すれば、流動性が低下し不安定化するおそれもあるため警戒が必要だ」と話す。
<ファンドの膨張したポジション>
日本株やドル/円も「ボルカールール」によって大きな影響を受けかねない。銀行からヘッジファンドへの投資が規制されれば、ヘッジファンドはこれまで積み上げてきた日本株買い・円売りポジションを巻き戻す可能性があるためだ。
外国人投資家は11月の第2週から第4週までの間に、日本の現物株と先物を合わせて約3兆円を買い越した。昨年1年間の外国人投資家の現物株買い越し額を3週間で上回る額だ。外為市場でも、IMM通貨先物の取組(12月3日までの週)によると、投機筋の円ショートポジションは、13万3383枚と、リーマン・ショック後の最大規模を更新し続けている。
前週後半に、日経平均は1万5100円台まで約600円、ドル円は101円60銭台まで約1円70銭調整した。だが、市場では「パンパンに膨らんだヘッジファンドのポジションを巻き戻すには不十分だった」(岡三オンライン証券・投資戦略部部長の武部力也氏)との見方が多い。
米経済は堅調で、テーパリング(米緩和縮小)の織り込みも進行。ポジティブな米経済指標に対し、市場は素直に株高・円安(ドル高)に反応するようになってきた。アベノミクス相場にとっては好環境が戻ってきており、ヘッジファンドの巻き戻しがあっても、ファンダメンタルズが好調であれば、それほど心配する必要はない。日経平均の予想株価収益率(PER)は約16倍であり、企業業績からみた割高感は乏しい。
ただ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は、米金利の上昇がリスクだと指摘する。「11月米雇用統計を受けてもほとんど上昇しなかった米金利には違和感がある。ボルカールールの最終版は中身次第だが、金利が大きく上昇すれば、ヘッジファンドや銀行のスタンスも大きく変わるため、注意が必要だ」と述べている。