祈り - 谷川俊太郎「二十億光年の孤独」より -

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祈り - 谷川俊太郎「二十億光年の孤独」より -

谷川俊太郎「二十億光年の孤独」 ㈱サンリオ刊



 祈り

一つの大きな主張が
無限の時の突端に始まり
今もそれが続いているのに
僕等は無数の提案をもって
その主張にむかおうとする
(ああ 傲慢すぎる ホモ・サピエンス 傲慢すぎる)

主張の解明のためにこそ
僕等は学んできたのではなかったのか
主張の歓喜のためにこそ
僕等は営んできたのではなかったのか

稚い僕の心に
(こわれかけた複雑な機械の鋲の一つ)
今は祈りのみが信じられる
(宇宙の中の無限小から
宇宙の中の無限大への)

人々の祈りの部分がもっとつよくあるように
人々が地球のさびしさをもっとひしひし感じるように
ねむりのまえに僕は祈ろう

(ところはすべて地球上の一点だし
みんなはすべて人間のひとり)
さびしさをたえて僕は祈ろう
一つの大きな主張が
無限の突端に始まり
今もなお続いている
そして小さな祈りは
暗くて巨きな時の中に
かすかなながらもしっかり燃え続けようと
今 炎をあげる





電車での素朴な演説

 ----なにしろ赤信号はつきっ放しなのです

このきれいで明るい電車に
みんなやっぱりおんなじ目的で
のりあわせたのだし
こんなきれいで楽しい電車に
乗れるだけでも
幸せなのだから
電車をもっとよくしようと
ささやかなのでも みんなの努力が
必要なのではないでしょうか
(終点も知らず 始点も知らず
見知らぬ未来の沿線を望み)
いろいろの荷物は肩に重く
電車も時々ゆれますが
みんなおんなじ道連れなのだと
只 この線路のみが幸福なのだと
みんなが思えば
こんあ大きく重い電車も
みんなの思いで
だんだん明るい風景の方へ
運転出来ると僕はほんとに信じています
ノオ スモオキング
ノオ スピッティング
書かれなくても美しいこころは守れる筈です
さあしっかりひとつの吊革をつかみ
みんなのこころで赤信号を
消そうではありませんか

 ----赤信号はつきっ放し
   勾配もけわしい というのに
   ああ 僕にはこんな演説だけしか出来ないのか

どうにかみんなで
明るい風景の方へ運転したい
こんなきれいで楽しい電車を
汚く傷つけ
暗いトンネルの中で故障させるなんて
全く堪えられません

 ----みんなの電車
   みんなのおんなじ一つの電車
   ああ 予備もない

   せめて祈りを……
  





 突然、詩が読んでみたくなったのはほかでもありません。近くに住む可愛い孫達の影響です。

 二歳の孫(女児)が絵本「これはのみのぴこ」にいま夢中。我が家を遊びに訪ねてくるたびに、書斎にはいってきて読んでくれとせがむ。そいえばこの子の兄もそうでした。今は電車と恐竜ですけど。

 普通の絵本とは明らかに何かが違う。子どもを夢中にさせる魅力が、詩の発想と言葉のリズムにあるようだし、和田誠の挿絵がまた秀逸。

 そんなわけで、ジイジもすっかり忘れていた谷川俊太郎の初期の詩集をはにかみながら手にとりました。



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