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★書評「不格好経営」(日経出版)(最適マネジメントについて)

書評、、★4つ(満点5)

 投資をやってる人間ならば誰でも知ってる(であろう)DeNA、南場元社長の書いた本。

 

 この本を一言で言うと、当たり前のことを色々と確認させてくれる本。

 で、当たり前のことを当たり前にやることが如何に大変かを認識させてくれる本。

 当たり前のことが書かれた本、論説が非常に少なくなった昨今の日本では、とても貴重な本だと思います。

 

 本書のキモは第七章

 それ以外のとこは、DeNA立ち上げから南場社長退任までの「歴史」で、如何に優秀な人材が集まっても、起業というのはドタバタがあるもの、ということが良く分かる。

 はた目には、スーパーウーマンが立ち上げたスーパー成長企業にしか見えなかったDeNAも中では結構いろいろありました、、ということかと。

 

 ちなみに自分はDeNAに投資したことはない。 「ゲームはいかん!」という古めかしい人間だったから。 今ならば、ゲームが害悪になるかは使うヒト次第、稼ぎ続けられる商売には理(道理)がある、と思うのだが、DeNAを見つけた2007当時(遅い!)はそう思えなかったのです。

 

 「利益は世の中にどれだけの価値を生み出したかの通信簿であり、赤字は資源の食い潰しである(南場語録)」、、、全く同感です。

 

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 一方、この本で共感できなかったのは、長期投資家と短期投資家を同じに扱いたくない、というくだり

 

 投資家は企業の全責任、全リスクを負う存在であり、長期でも短期でもそれは変わらない。

 長期投資家は長期間リスクを負う代わりに長期の成長益を得られる「可能性」があり、一方、短期投資家は短期リスクしか負わない代わりに短期成長(?)益しか得られない「可能性」が高い、というだけで長期・短期投資家とも会社に対する貢献度は変わらないのです

 

 長短投資家の違いは、各投資家のリスク許容度、リターン選好によって生じ、その比率は会社の成長性(投資のシャープレシオ)に応じて変化するから(リスクもリターンも会社の成長性で変わるので当然そうなる)、短期投資家だけを無くすことなどできない

 ゆえに短期投資家差別は好ましくなく、短期投資家差別につながる措置、規則は、社会全体に資金の最適配分からのかい離をもたらし、国全体の経済成長下押し要因になる。 

 

 南場さんは、マッキンゼーでの労働者、DeNAでの経営者としての経験しかなく、投資家になったことがないから、投資家、投資活動に対する理解は高くはないと思う(経済は生産、消費、投資の三位一体で回るのですが、、)。

 南場さんのような起業家はサラリーマン経営者と違い、投資家の側面も大いに持つのだが、経営者としての修羅場が凄すぎるので、往々にして投資家としての自覚は低いかもです。

 

 決断において身銭を切る覚悟・胆力が必要なこと、限られた情報しかなくても素早く決断したほうが有利なこと等(情報収集力よりも情報判別力が重要)、経営者(サラリーマン経営者でなく起業経営者)と投資家が共通する点は結構多い、、、ただし、取るリスクも、得られるリターンも、投資家は起業家よりも遥かに小さい(サラリーマン経営者、労働者、デイトレ投機家はさらにミクロのリスク、リターンです。 ミクロリスクゆえ、あまり思索する必要がない)

 

 

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 DeNAの社内マネジメントの肝は、「ミッションへの集中」という、これも至極当たり前のこと(これは社訓?DeNA Qualityの頭のほうにも掲げられている)。

 

 この当たり前が難しいのは、人間にはおサル時代のボス猿争いの本能が色濃く残っているから。

 「会社」という組織を、無意識のうちにサル山に見立てて、そこでボス猿争いよろしく出世(?)競争に励んでしまうから。

(人間の行動のかなりは実はおサルとほとんど変わってない。 人間は「おサルの本能」の上に「理性の薄皮」がのった生き物に過ぎない)

 

 で、利益の最大化・持続化という会社本来のミッションそっちのけで、同僚、他部門とアシの引っ張り合いをしてしまう。 フォーマルな組織(部、課、係など)がないがしろにされ、ボス猿ポスト獲得のためのインフォーマルな「派閥」が会社を動かすことになったりする

 

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 会社のミッション(利益の最大化・持続化)を最大限実現する社内マネジメント、最適マネジメントはどうあるべきでしょう?

 

 それは社員個々をミッションに集中させること(個人力の最大化)、それ以外はさせない、したくないように仕向けることであり、そういう社員たちを各部門・各事業に最適配分し、かつ連携させること(組織力の最大化)だと思います。 さらに、それらにより利益創出のノウハウ・技術を向上させ、社内に蓄積させつつ、その流出を防ぐこと重要でしょう。

 

 そのためには具体的にどうすれば良いか?

 それには次のようにすれば良いと思う。

 

1.ポスト、部門による賃金差を無くす

2.全社一体の成果主義(経営者・労働者の賃金は最低賃金部分以外、全て会社の業績に連動させる)

3.勤続年数による賃金差(勤続年数が長いほど賃金アップ)

4.勤続年数が長い社員ほど賃金を自社株で払うようにする(売却・担保化が一定期間経過後に可能な特殊株)

5.技術・ノウハウ漏えいに対する会社への損害賠償契約

 

 上記1.はポストや部門に箔がつかないようにするため、ポスト・部門をミッション遂行のための役割分担(歯車)に純化するため、それによりミッション相反の出世競争・派閥争い・部門間のアシの引っ張り合いの芽を摘むため、そうして各社員・各部門をそれぞれのミッションに集中させるための措置。 同時に、ポスト間(下から上だけでなく、上から下、現場への再移動も含む)・部門間(稼げる部署から稼げない部署へのテコ入れ等も含め)の人材移動・最適人材配分を柔軟に容易に機動的に行えるようにするための措置でもある。

 

 上記2.はミッションへの集中を促すと同時に、部門間・事業間・社員間の連携をスムーズかつ積極的にさせるための措置(お互いに協力しあい、教育し合うことがメリットになり、アシの引っ張り合いがデメリットになる措置)。 同時に公私混同、職権乱用、背任行為、フリーライダー化への相互監視を強める措置でもある(最低賃金以外が全て業績連動なので)。 さらに、社員的には会社業績にプラスであれば、上下ポスト間、左右部門間の異動もいとわないようになるので、人材最適配分も行いやすくなる。 また、全社一体の成果主義なので、個人、部門の業績評価など、従来の成果主義に見られた膨大な手間(費用対効果が低い、というかマイナス効果?)や軋轢もなくせる

 

 上記3.は勤続年数の長期化を促し、ノウハウ・技術の向上、蓄積を促進する措置。 

 

 上記4.はノウハウ・技術に精通した長期勤続社員ほど、報酬と企業の持続的成長(=株価の持続的上昇)をリンクするようにして、転職やノウハウ・技術漏えいを予防する措置。 これは、現役・転職者・退職者問わず「持続的企業成長(ミッション)への忠誠」を高めざるをえないようにして、ノウハウ・技術流出を抑止する措置とも言える。 株式売却可能になるまでの期間を長くすれば、転職者・退職者問わず、長期に応援団にならざるを得なくなるのです。 同時にキャッシュでの人件費上昇を抑制する措置でもある。 

 

 上記5.はノウハウ・技術流出抑止への最終兵器。

 

 以上の措置は、一見横並びに近いようですが、基本、最低賃金であり、報酬が業績にダイレクトに連動するので、横並びのように見えつつ全社的アグレッシブ化、運命共同体化が強化されることになる。  同時にフリーライダー化は抑止されるし、そうならないための相互監視、相互サポートも強化されるでしょう。 フリーライダー化しそうな人間を採用時にはねるよう、通常企業以上に更に必死になるでしょう。 だから、ある時点で見れば、働き者と働きが悪い者が一定比率で存在しても、持続的に働きが悪い状態であり続けることはかなり困難になる

 

 失業率の推移を見る限り、持続的フリーライダーは社会全体の5%よりかなり小さいはずですから、そういう人間を採用時にはねることは十分可能なのです。

 しかし、社員の質を更に高めるためには、米国GEのように下位何%かの社員を絶えず入れ替える措置もありかもしれません。 このための措置として下記が考えられます。 

 

1.リストラ候補社員は、各部門内もしくは各事業(プロジェクト)内の無記名投票を不況期に実施して、各部門・各事業内から一定比率、選出する

(部門ごとに選出するのは、相互監視を正確に行うため。 全員投票で決めるのは、ポストの上、下双方の目線で見るため。 不況期ごとに実施するのは、ある程度の長いスパンで見るためであり、コストカット必要時期にリストラするため。 ちなみに、リストラ候補比率が低すぎると、単なる社内いじめになり、後腐れを大きくするので要注意。 後述の救済措置があるので、リストラ候補比率は30%くらいあってもいいかもしれません。 全社一体の業績連動報酬なので優秀社員がねたみ的にリストラ候補に選出される可能性は無いか、極めて小さい

 

2.リストラ候補社員は長期勤続者に限定する

(これは、長期勤続社員ほど改善可能性が低く、成長度合いが限られ、既にそれなりの蓄えがあるとともに資産に占める(早期売却不能な)自社株比率が高いのでリストラされても会社を裏切りにくいからです。 つまり、長期勤続社員ほどリストラのリターンが大きく、リスクが低いうえに、転職・退職問わず会社とのきずなを保たざるを得なくなっているからです

 

 3.リストラ候補社員は人事部の監視強化下に置くと同時に業績報酬を下げる。 改善の見込みが無ければ、次の不況期にリストラする。 一定レベル以上の改善が見られればリストラしない、もしくは次期好況時再雇用契約を結んでリストラする

(上記は、再生促進措置、誤認リストラ抑止措置、リストラへの逆恨みリスク抑制措置(報酬以下の労働の長期持続による当然のリストラである旨、認識させやすくする)。 再雇用契約を、景気変動に対するコスト対応向上、企業業績の安定化に活用する措置でもある)

 

 

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