夏休みを満喫中の安倍首相は、「わが世の夏」を謳歌(おうか)している。周辺には「もうオレに逆らうヤツはいないだろう」みたいなことを吹聴しているらしいが、こうした傲慢さが足をすくうのは政治の常だ。安倍首相の場合も例外ではなく、火種がいくつも表面化している。
やりたい放題の安倍首相に怒り心頭なのが霞が関だ。
内閣法制局は集団的自衛権について「行使はできない」立場を貫いてきた。それを力でねじ曲げようとしている官邸とは当然、スッタモンダが予想されるが、それ以上に霞が関の虎の尾を踏んだのが公務員制度改革だ。
安倍政権は省庁の幹部人事を官邸で一元管理しようともくろんでいる。そのために「内閣人事局」を設置する意向で、来春の発足を目指し、秋の臨時国会で法案を提出する気だ。
稲田公務員改革相はすでに自民党内で具体的な中身を説明していて、それによると、本省の部長、審議官以上約600人の人事を官邸が仕切るつもりだという。
これに霞が関は蜂の巣をつついたような騒ぎになっているのである。
「この制度改革は安倍首相が第1次政権で目指した公務員改革の再チャレンジです。しかし、安倍第1次政権はまさしく、公務員制度改革でつまずいた。天下り規制の人材バンク構想などを出した際、倒閣運動が起こるぞ、と脅した官僚がいたのは有名です」(当時の官邸官僚)
そのドーカツ官僚は的場順三官房副長官(当時)だったとされる。坂篤郎官房副長官補(同)なども、内閣府で各省庁の官房長を集めて、天下り規制つぶしの謀議をしていた。それやこれやが第1次安倍政権にはボディーブローになって効いていくのだが、今度も同じだ。安倍政権が再チャレンジで 「人事の一元化」 構想を出してきたことで、官邸内は大揺れだ。前回と同じく、杉田和博官房副長官らを中心に、反対ののろしが上がっている。まるでビデオテープの再生のような展開なのである。
いわば、コンプレックスの裏返しなのだが、だとすると、このバトルは面白い。図に乗った安倍に官僚が抵抗とは、それはそれで、独裁を許すよりはマシである。