Bobbyがくれたメールに書かれていたチームの情報は3つありました。
全く情報がないわけですから、どこに連絡をすれば良いのか迷いましたが、その中で、本当になんとなく名前だけで気になるところが一つあったので、そこに連絡してみることにしました。Burns motor sports, Todd Burnsという人がオーナーでした。
一口に連絡すると言っても英語で電話をしないといけないわけですから、これは大変なことでした。
直接話すと何でもないことでも、いざ電話で話すとなると
言葉が出ないのです、本当に。必死でこちらの思いを伝えようとするのですが、電話での相手の声も聞こえ難く困難を極めました。余談ですが、結局、この電話で英語を話すということに慣れるのに1年以上かかりました。
そして、なんとかこちらの意思が伝わったのか、その次の週末にIrwindale Speedwayで会う約束をしました。
しかし、全くしらない異国の地でのことですから、またアメリカ人は約束にいい加減だという話もよく聞いていましたし、不安でたまりませんでしたが、何はともあれチャンスではありましたから、約束通りSpeedwayに出かけました。
しかし、これがまた大変で、会うと約束したものの、具体的にどの辺りで何時に会うのかと言ったような詳細は決めておらず、レース前に着いてからひたすらTodd Burnsを探して歩きました。結局、レース開始までに彼を見つけられず終了まで待つことにし、レースが終わってからピットレーンに彼を探しに行きましたが、全く見つけられず仕方が無いのでコースマーシャルに聞いてみました。Toddは有名人なのか、マーシャルは彼のことを知っいて、快くToddを探しに行ってくれました。そして、ついにそのTodd Burnsという男に会うことができました。
しかし、急に呼び出されたせいか彼の機嫌はことの他悪く、くちゃくちゃとガムを噛みながら酷くイラついた感じで、「今は忙しいから別の日に自分の
工場に来い」というばかりで全く話になりませんでした。こっちがお金を払って乗ってやろうというのに、日本では全く考えられない対応でしたが
選択の余地はありませんでしたので、行く前に電話をするからと言ってその場を去りました。全く文化の違う異国の地とは言え、正直とまどいましたが、とにかく車に乗れなければ話になりませんので彼の工場を訪れられる日までぐっと堪えて待ちました。
10日ほど経って、ようやく彼の工場を
訪問することができました。自宅の横に大きなプレハブの工場が建っていて、そこに所狭しとストックカーの部品が置かれていました。
もちろん、2台ほど現役のストックカーも置いてありました。初めてアメリカのストックカーのメカニズムを間近で見ることができましたが、驚くほど
シンプルでまるで大きなレーシングカートのようでした。頑丈な鉄パイプで作られたフレームに、5.7LのV8エンジン、非常にシンプルなFサスペンション、Rサスペンションに到ってはなんと板バネでした、トラックによくついているあれです。しかし一度エンジンに火を入れると、ドロドロドロと図太い雷のような音を奏でるのです、アメリカでストックカーは別名サンダーカーと言われる所以です。
一通り見学した後、契約の話になり、何とか1年間10戦の契約を結ぶことができ、晴れて参戦に向けて活動できることになりました。
何しろ、初めての異国のでの契約ですから色々と心配にもなりましたが、Todd BurnsはIrwindale SpeedayのLate modelクラスで2回のチャンピオンを
獲っており、アメリカ西部のショートトラックのナショナルチャンピオンでもありましたから、彼を全面的に信用することにしました。2週間もあれば車を用意できるということだったので、やっとここまで来たか、という達成感に覆われました。次にここに来るときは、自分の愛車に会えるのだなという期待を胸に工場を後にしました。
次回に続く