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スペイン
スペインが構造改革の期限公表約束、支援要請の準備との見方も
[ニコシア 14日 ロイター] スペインは14日、キプロスで開催されたユーロ圏財務相会合で、今月末までに構造改革の期限を明確にする方針を明らかにした。ユーロ圏当局者の間では前面的な支援要請に向けた準備との見方も出ている。
このところスペインの借り入れコストは大幅に低下しているものの、リセッション(景気後退)が深刻化していることに加え、年内には大規模な国債償還を迎えるため、同国の全面支援要請は時間の問題との見方が大勢となっている。
スペインのデギンドス経済相は会合後、記者団に対し「成長押し上げに向け、欧州委員会の提案に沿った形で、新たな改革を実行する」と述べた。
発表は9月28日の予定で、この日は構造改革案のほか、2013年予算案や銀行セクターの資本増強必要額も示される。
ユーロ圏当局者はこれまで、支援を受けるには詳細な改革案と期限を定めた厳格な条件に従う沿う必要があるとしており、デギンドス経済相は否定しているものの、構造改革案の発表は、支援要請に向けた地ならしとの見方が出ている。
ある欧州連合(EU)当局者は「これは今後の財政再建プログラムの青写真で、支援要請の方向に向かっているのは確実だ。だが決定する立場にあるラホイ首相の意図が読みきれない」と述べた。
別の当局者は、スペインの提示する構造改革が信頼できるものであれば、スペインが支援を要請する明確なシグナルとの見方を示した。
2人の当局者はともに、スペイン支援は欧州安定メカニズム(ESM)の予防的信用枠から拠出される可能性が高いとしている
信用枠が設定された場合、ESMが発行市場でスペイン国債を購入することができるようになり、欧州中央銀行(ECB)も流通市場への介入が可能になる。
ギリシャやポルトガル、アイルランドに行った全面支援を行う余裕はユーロ圏にはなく、モスコビシ仏経済・財政相は「誰もスペインが全面支援を要請することを望んでおらず、議題にならなかった」と述べた。
ユーロ圏当局者の間では、10月8日に開催される次回のユーロ財務相会合に間に合うよう、スペインが支援を要請するとの見方も出ている。
スペインは、欧州委の提言に沿ってすでに実行している以上の緊縮措置を伴う支援条件には反対の立場だ。だがドイツなどユーロ北方諸国はより厳しい条件を求めている。
ECBも新たな債券買い入れを実施するにあたっては、厳格かつ期限を定めた政策条件と監督が不可欠としており、この日のユーロ財務相会合に出席したドラギECB総裁は、あらためて厳しい条件を伴う点を強調した。
だが外交筋が明らかにしたことろによると、ECB内では債券買い入れに向け、ほぼ毎日のように電話会議が行われるなど着実に準備が進んでいる。
「債券市場への介入が始まれば、ECBは1日当たりの買い入れ枠を設定して、各国中銀に指示する」という。
ECBが条件付きで、南欧諸国の国債を無制限に買い入れる方針を示して以降、スペインの借り入れコストは大きく低下している。支援は要請するスペイン、そして救済する側のドイツにとっても、政治的にコストが高く、支援要請なしで状況を乗り切りたいというのが両国の本音だ。
これまで3年に及ぶ債務危機の中でも、市場の圧力が収まると、ドイツ当局者が対応の手を緩めるといった構図が続いており、欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)は「気を緩める暇はない」と釘を刺した。
<ギリシャ支援条件緩和か>
ユーロ圏財務相会合では対ギリシャ支援についても協議し、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、支援の条件である財政再建計画の実施期限を延長することは、検討に値するとの考えを示した。
「ギリシャは多大な取り組みをすでに行っているが、今後も継続的な取り組みが必要なのは明らか」と指摘。 債務の持続可能性に関する目標は極めて高く、さまざまな調整方法があるとした上で、「実施期限に関する調整も検討が必要な1つの選択肢」と述べた。
ギリシャのストゥルナラス財務相は、支援プログラムの見直しについて、10月後半に最終決定される公算が大きいと述べた。
オーストリアのフェクター財務相は、ギリシャに対して目標達成期限の延長を認める可能性があるが、一段の支援は行わないとしている。
あるユーロ圏当局者は、10月に欧州委員会、ECB、IMFの合同調査団がギリシャに関する報告書を公表すれば、市場が内容に失望してスペインやイタリア国債への売り圧力が高まる恐れがあると指摘。その前にスペインは支援を確保しておく必要があるとの見方を示した。
<地合いは改善>
ドラギECB総裁は「ユーロ圏のガバナンスに関する進展や、域内全体での財政建て直しへの取り組み、そしてユーロ圏のテールリスクを取り除くための全面的、かつ効果的な支援メカニズムの整備など、このところ多方面で物事が上手く進んでいる」とし、「これらのすべての要素が総合的にプラスの効果をもたらし、最近の金融市場における地合い改善に寄与した」との考えを示した。
またドイツ憲法裁判所による欧州安定メカニズム(ESM)の合憲判断や、ユーロ支持派の与党が勝利したオランダ議会選挙、欧州委による「銀行同盟」に向けたユーロ圏の銀行監督一元化案発表なども、市場は好感した。
ただ一段の状況改善には、ECBが表明した支援を確実に行うことが不可欠とみられている。
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