未だに日米欧などの各市場は、米サブプライム住宅ローン問題が尾を引く展開で、まるで壊れ掛けのテレコから間歇的に聞こえるエンドレステープを聴かされているような錯覚に陥ってしまいます。
しかし、中国では国有4大銀行の一つである中国銀行の数百億円のサブプラ損失が発覚していますが、他の金融機関では金融に対する政府の海外規制のお陰で、幸か不幸か損失の連鎖や毀損は皆無であった事実が明らかになりました。
CSRC(中国証券監督管理委員会)のハン副主席の3日の発言では、サブプラ問題のA株市場への影響については「主に心理面に止まる」との見通しが示されました。
まあそんなことだろうと、当初からタカをくくっていたのですが、こうもハッキリ証券当局者からの胸のすく様な発言を聞くと、ホッと安堵させられます。
晴れて、雑音を排して、チャイナ株ウオッチャーとしての取り組みに専念できそうです。
ところで、中国では3月5日に第11期全人代第1回会議が開催されて、温家宝首相の政治活動報告がなされました。
ポイントは『両防』と称される、①経済成長の【スピーディー】から【過熱】へシフトすることを防止する。
②【価格の構造的上昇】から【顕著なインフレ】に移行することを防止する。この2点だと思います。
さらに、格差の広がっている三農問題への配慮:農業インフラ建設を強化し、農業の発展と農民の収入増を促進する、ことです。
また「中所得者層の住宅問題を解決すること」と「人民元相場の形成メカニズムを改善し、さらに柔軟性を持たせる」ことが次の課題になります。
その他の重点項目は、プライオリティは上記と比較すれば若干低くなるでしょう。ないしは、どちらかと言えば中長期的取り組みの部類に属します。
以上に挙げたポイントは、①好調経済の行き過ぎをマクロ調整と金融引き締めによって抑える、②庶民の懐を直撃する物価高、特に食料品の価格を流通統制によって抑え込む、③6割強の人口を擁する農村地域の経済格差を縮めて、農民層の不満を抑え込む、④中所得層の要望の高い持ち家問題を解決する、⑤人民元の切り上げではない緩やかな上昇を加速させ容認する、という具体的な政策提起となっています。
こうしてかみ砕いて列記すれば、中国の短期での問題と解決への方策が明確になります。
また、中国政府の現状の分析力ときめ細かな対応策が浮き彫りになります。
日本政府には、お手本になりそうです。
そしてもう一つ、お手本になりそうなのが、香港政庁の2月末に発表した予算案(年度政策方針)です。
ポイントは4点です。
①香港の将来と長期的発展の促進の方針に基づく、インフラ建設への投資(国際会議場やホテル等の優先的開発や土地の先行取得を支援、ホテル宿泊税の免除、ワイン・ビールなど軽アルコール度数の酒類への税免除、環境に配慮した商用車への登録税の優遇など)を積極的に行う。
②民生・福祉の改善、身寄りのない老齢者や障害者等の弱者層を住宅面や賃金面等で支援する。
③富を市民に還元し、成果を分かち合う。
・給与所得税と合算納税の標準税率を1%引き下げ、15%とする。年収2万5千HKドル以下は税免除とする。
・公司利得税(法人税)の税率を1%引き下げ、16.5%とする。などなど。
④世界経済や資源等の変動を予測して、雨が降る前に(世界経済の変調が起こる前に)資源を貯蓄する。
特に香港政庁は、経済の良いこの時期に、次代のインフラ整備と政策の転換を行って行こうという意図が明確で、香港の将来性を感じさせます。
一言いわせてもらえれば、日本ですが、国民経済の急降下と税収不足に悩むこの時期に、不要と思われる道路インフラ整備を叫ぶのも、セオリーからも外れており、どうかと思わせます。
以上、長々と中国と香港の国家戦略とも言うべき政府活動方針の要点と予算案(年度政策方針)について、列記してみました。
多少暖長な文章の列記となりましたが、我が国の政治の現状との比較を試みるのも一考かと、この頃つとに思うが故の文章になってしまいました。
日本はこれからどこへ行こうとするのか、国家戦略というものはどうなっているのか?日本人の自信は取り戻せるのか?将来をどう展望すべきか?活気は取り戻せるのか?
疑問だらけで、不安になりませんか?
私は、中国に滞在していて、そんなことをふと考えることがこの頃有ります。
<つづく>