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中国、天津にて(31)

 中国本土の証券市場は、どうやら上海証券取引所に成長企業向けの創業板(ニューヨーク市場のNASDAQや東京市場のJASDAQなど)の創設準備に動き始めたようです。

 中国国内の中小企業、とりわけ中小のハイテク企業の資金調達難の問題解決の手段とも位置づけているようです。

 これまで、中国ではこうした中小企業や創業間もないハイテク企業群に資金調達の道は殆どありませんでした。
 銀行融資は、国有企業中心で、民営企業でも大企業にのし上がるか、政府系の有望な人脈でもなければ、無担保の融資は遠いものでした。
 中国での中小ハイテク企業向けの育成ファンドなどは、まだ育ってもいません。
 そこで、良いアイデアがあったり将来有望な新規事業は、国有企業や資金力のある有名企業の傘下に入るM&Aが唯一の手段であったか、と思います。
 これでは新進気鋭の新興企業や経営者が育たず、国の政策ともなっている将来を担う活力ある国内企業の育成は立ちゆきません。


 ところが、深圳証券取引所には、目立ちませんが、中小企業版が2004年6月より開設されており、量販電器チェーン店を中国内に展開する業界2位の「蘇宁電器」はここに上場しています。
 ちなみに、業界1位は国美電器ですが、香港市場に上場しているのはご存じでしょう。


 この深圳市場の中小企業板が、なかなか活況を呈しつつあります。
 背景は、中国経済の好調さを反映した上場各企業の業績好調です。

 中国では巨大国有企業の有望マーケットの寡占が一般的かと思われていますが、地域間の格差や緻密な営業網の未整備などで産業界の隙間(スキマ)が多くあります。
 こうしたところに、中小企業や民営企業の根付く基盤がまだまだ有ります。
 ありていに言えば、新規参入のチャンスが多い訳です。


 現在、深圳市場の中小企業板には、2月末で219社が上場をしており、うち44社が2007年12月本決算を正式に発表しています。また、170社が業績速報で予測数値を発表し、残り5社も目論見書で12月本決算の財務データを公表しています。
 
 結果は、増収が全体の89.95%の197社、うち増収率が30%を超えるのが88社。
 増益が全体の83.56%の183社、うち増益率が30%を超えているのが100社。増益率が100%を超えているのが16社。

 全企業219社の売上高の総額は、前年比30.12%増の11億2300万元(約179.68億円)。
 純利益の総額は、前年比40.04%増の8558万元(約13.69億円)。平均EPSは0.52元、平均ROEは12.50%でした。


 中小企業板全体の企業規模はまだ小さく、民営企業が多いのも特色となっています。
 しかし、この中から将来の有望企業を見つけるのも、楽しみの一つでしょう。

 今年の07年度決算発表に伴う株主への配当案も、大変魅力的な内容が多く、特に10割(1対1)の無償株配当が目立ちます。

 こうした新規の中小企業の上場によって資金調達が容易になったほかに、副産物として多くの創業者利得を得た億万長者が排出されています。

 上海証券市場にも、深圳と併せて、成長企業市場(創業板)が創設されれば、将来メインボードに昇格を果たし、数十年にも亘って中国の経済発展を体現し、有望企業に成長を果たすであろう企業が育つものと期待できます。

 業績と企業内容を良く検討し、これからの投資対象としたいものです。

                      <つづく>


 
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