登山者の遭難事故が相次いだ4日、日本列島上空は寒気に覆われ、3千メートル級の山々が連なる北アルプスの稜線りょうせん付近は0度前後まで冷え込んでいたとみられる。平地が好天でも、山頂付近では荒れることもあるという山特有の天候に加え、折からの低気圧の影響など、軽装の登山者にとって厳しい条件が重なった。
「3千メートル級の春山では、気温が氷点下になることは十分ありうる」と気象庁天気相談所の担当者。同庁の高層気象観測点のうち、北アルプスに最も近い石川県輪島市の上空約3千メートルで観測された気温は、4日午前9時時点で0度。午後9時は氷点下0・7度で、標高2932メートルの北ア・白馬岳山頂付近も同程度だったとみられる。
白馬岳周辺では4日午後、雨雲が観測され、標高の高い場所では雪になっていた可能性もある。
この時期特有の気象が悪条件に追い打ちを掛けた恐れも。「春は低気圧と高気圧が交互に列島を通過するため、天候は短期間で変化しやすい」と気象庁担当者。4日までに、各地に記録的な降雨をもたらした低気圧の影響で「山岳地帯では風が強まり、登山者の体感気温は一層低くなっていたことも考えられる」(同)。
高い山では吹き付けられた風が斜面に沿って上がることで上昇気流が発生。風向きの変化によって、短時間のうちに雲が発達したり消えたりすることがあり、頂上付近では視界が悪化することも多いという。