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中国、天津にて(29)

 さて、この天津日記も久しぶりになりますが、この間マイナスの事件や風潮ばかりが喧伝されて、食傷気味でしたが、少し考えを整理して対処すべき時が来ているようです。


 中国国内も昨年末から今年にかけては、大雪等の異常気象や物価高騰などの影響で、中国内の民衆の期待に胸のふくらむオリンピックイヤーの本年の出だし(春節後)は、少し意気をくじかれた形となりました。

 しかし、転んでもタダでは起きない現在の元気印の中国は、次の一手も周到に用意しているようです。


 まずは株式市況ですが、昨年末以来の低迷が継続していますが、これは香港市場や海外の市場の状況と異なる原理で低迷していることが徐々に明らかになってきました。

 サブプライムローン問題で大きく毀損した世界中の株式市場ですが、一時は中国本土市場もグローバル化の流れとの連動性を示す事態もあり「中国よ、お前もか」という考えにも至りましたが、どうも事態は時間が経つにつれ少しずつほぐれてきて、問題が顕在化してきているようです。

 中国国内の株式市場のこの間の低迷の原因は、やはりサブプラ問題にあるのではなく、ましては中国株式市場のバブル崩壊の始まりにあるのでもなく、中国本土市場に潜む積年の懸念材料が再浮上した形なのです。

 それは、株式市場の株の需給悪化懸念です。

 中国では2年前に「股権分置」(国有株式の流通改革)を断行して、株式市場に上場する全ての企業の持ち株の約6割強に当たる全非流通株式を流通株に段階的に転換することを決定して、即実行して来ました。この大胆な株式改革により、株式市場への信頼が戻り、この間の株価の急騰をもたらしたのでした。

 現在、国有企業等の保有する非流通株(株式市場全体の約6割強)は徐々に株式市場に放出されてきており、その多くの引き受け手が券商(証券)や銀行、年金基金や保険等の機関投資家の手に渡り、あるいは基金(投信)に組み入れられて運用されてきているのです。
 
 従って、日本のマスコミ等が喧伝する上海の「股民(一般投資家)」の喧噪ぶりは、かつての中国市場の状況からするとごく1部の現象なのです。今や中国の株式市場は機関投資家が3割強から4割の株式を占め、一般投資家の総取引数量はせいぜい1割から2割でしょう(証券口座開設数の比率は個人の割合が高いのですが)。
 中国市場は一般投資家の博打的要素が後退し、健全な投資の場と様変わりしつつあります。

 まず、この間の大型小型を問わずの新規IPOラッシュです。特に大型の香港市場と本土市場の重複上場が目立ちました。市場からの新規株発行による調達資金総額も史上最高額を更新し続けています。

 また、上場企業の急成長は大きな資金需要を発生させています。
 株式市場からの中小の増資も増えていますが、特に中国平安保険や上海浦東発展銀行等の株式市場からの数千億円単位の増資計画の発表は、市場に大きな反響を巻き起こしました。
 この二つの企業の大型増資計画ですが、いずれも中国本土を代表する「超」の付くような好業績を上げ続ける優良企業です。

 こうした、株式市場からの資金調達の大きな波が、市場を支える投資資金の供給側の流れを押し流しているのが現実なのです。
 
 しかし、いずれ中国内をだぶつく過剰流動性による遊資が、株式市場に満たされ、需給のバランスを取って、更に株への資金の流入を招き、結果株価を押し上げていくことになるでしょう。
 現在は、その途上、即ち過渡期と言うことになるでしょう。


 今年1月末までに昨年12月決算の業績予測を発表した上場企業(中国本土企業の決算期は12月末)は、上海と深圳市場の1558社のうち、914社ですが、そのうちの約80%の728社が好業績を予測しています。これは昨年と比較しても12ポイントのアップです。

 2月に入って早々、名前の知れた企業名では招商局地産や国電電力、美的電器、金地集団、上海浦東発展銀行等が決算発表を行っていますが、いずれも好決算で、同時に示された株主への配当案は、現金配当の他に無償株式配当や無償株式増資を含む大変な株主に報いる内容のものとなっています。

 決算発表があるたびに、現金の高配当や無償株の10割
交付が出ない日はないほどです。発表を見て小躍りしたくなるのは私だけではないはずです。

                     <つづく>
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