毎度お馴染みの講釈です。今日は割安株投資の是非について少し書いてみます。
割安・割高の判断基準
①理論株価を計算する
理論株価と実際の株価の差が 理論株価>実勢株価 ならば割安株の候補だと判断します。
理論株価①=BPS+(EPS×10)
理論株価②=BPS+今期予想EPS+次期予想EPS+次期予想EPS
×(売上成長率+売上成長率の2乗+売上成長率の3乗+売上成長率の4乗)
理論株価③={(固定資産を除く資産-流動負債)×1.2-固定負債+営業利益×10}÷株式総数
②財務指標(PER,PBR,PCFR,EPS,BPS,ROE,ROA,利回り)の推移を経時的に分析する
因みにここで言う経時的とは、過去5年間の業績(結果)と
成長性を加味するために10年後の姿(予測)までを指します。
③指標ごとに同業・同規模他社と比較する
理論株価の計算に用いられる指標は、あくまで見掛けの数値であり
成長性も予測(不確定)数値なので、同業他社との相対比較を行わないと意味がありません。
以下に幾つか具体例を挙げてみます。
PERやPBRは成長産業で高く、成熟産業では低くなる傾向があるため同じ土俵での比較は困難
PERはEPSを基に算出するため、特別利益や特別損失が発生すると上下に振れる
PBRは固定資産の簿価と実勢価に差異があるなど信憑性に欠け、割安・割高の判断材料には適さない
EPSが高いからといって、必ずしも収益力が高いとは限らない(株価と相関する)
BPS算出上、株主資本に新株予約権や少数株主持分などは含まれない
ROEやROAは新興企業の場合概ね高くなる(設備投資負担が軽いなど)
ROEは利益が横ばいでも株主資本が減ると上昇する(自己株消却や減資に注意)
利回りが良いのは敵対的買収の阻止が目的である場合もある(権利落ち後に株価が急落しやすい)
割安=買いではなく、投資する動機は 割安度(10%) : +α(90%)と考える方が賢明です。
因みに投資したくなる動機のうち財務指標に関する+αを幾つか挙げてみます。
過去5年間のEPS・BPSが右肩上がりで今後も成長が見込める(EPSが毎年上下する企業は要注意)
株主資本比率が右肩上がりで、しかも70%を超える(金融関連を除き30%以下はリスク大)
過去5年間のROEが20%以上(新興企業は例外あり、成熟産業では10%以上)
流動比率200%以上(100%以上で合格)
PCFRが安定的に低値
割安株に投資しようとする人の考えは、割安株→過小評価→必ず見直される時が来る
しかし現実は割安株→人気薄→事業環境が変わるまで人気化することはない
つまり割安度は無視して、需給のみを判断材料にする方が成果を得やすいということになります。
「割安に買いなし」という格言は、この様な背景から生まれたのだと思います。
割安感は銘柄を選択する動機の一つにはなりますが、ウエイト的には最後尾であり
二者択一という鉛筆を倒して決断する様な最終局面での判断材料という認識で良いと思います。
因みに事業環境の変化とは、マクロでは政治・経済など社会情勢の変化
ミクロでは新発明・新発見・M&A・業務提携・資本提携・特需の発生などを指します。
(まとめ)
割安という根拠?で投資するのも投資戦術の一つですが、成果は滅多に期待出来ません。
世界的な社会情勢(マクロ)や事業環境(ミクロ)の変化を素早く察知して
他人より一足早く投資行動を起こすことが唯一勝利の方程式です。