NSJ日本証券新聞 より
『調査・追及不十分なのに…
オリンパス「上場維持説」で急騰 海外からの信頼失墜、市場低迷の背景に』
1月11日 10:00
http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=283490&dt=2012-01-11
【「オリンパス上場維持有力 東証月内処分決定へ」「オリンパス上場維持へ、東証違約金求める方向」――大手新聞各社が一斉に上場維持見通しをあらためて報じたこともあり、10日の東京株式市場では、オリンパス株が急騰、約1カ月近く続いた1000円大台近辺での出没相場から一気に上放れてきた。
むろん、今回の報道について、東証側では「一部報道についてホームページにもアップしたが、現在審査中の案件であり、(上場維持か廃止かなど)決定または公表した事実はありません」(東証・広報部)とのコメント。「今後のことは、しかるべきタイミングで公表するとしか言いようがない」(東証・広報部)としている。
一方、多くの証券市場関係者などが、オリンパスの上場維持の見通しを公言する中、上場維持に疑問を唱える識者もいる。企業にIRやコンサルタントの助言を行っている、株式会社シェアードリサーチ代表取締役のジェラヴリョフ オレグ氏は「株式市場的には変化を求めるチャンスだっただけに(仮に報道の通りなら)がっかりだ。外国人投資家から見ると、日本のマネジメントは相変らずに映る。経営と所有とがきっちり分かれていない。このまま、個別の案件として終わってしまうと、信頼失墜というダメージは計り知れないのでは」と話す。
投資家の取るべきスタンスについてもオレグ氏は、「今後、業績的にも悪い影響が出ることが予想される。これまでのような成長ができるかどうは疑わしい。株価も当然、元の水準まで戻れるかは疑問で、基本的には無視した方がいいのではないか」としている。
また、企業トップに助言を行っているIRスペシャリストの谷口慎平氏は、「日本株には海外投資家比率が高く、外国株の一部とみられている銘柄と、専ら国内の投資家が売買する銘柄に分かれる。オリンパスは前者であり、少なくとも、グローバル・スタンダードを適用するなら、非上場とするのが筋だろうし、外国人投資家の目も厳しいものがある。確かに目先の個人投資家にとっては値動きに魅力があるのだろうが、本来、株価は企業価値が上がることを評価するもの。内部監査の実態は何だったのかなど、さまざまな問題が取り残されたままだ」と株式市場全体の問題としてとらえ、今なお調査・追及が不十分な現段階での「上場維持説」には疑問を抱いている。
また、ある市場関係者は今回のオリンパスの上場維持問題について、憤慨しながらも、次のように語っている。
「『村社会』『裁量行政』『アンフェア』という日本のマイナス文化がマーケットで露呈した形。細かく言えばいろいろと違いはあるだろうが、かつて上場廃止を余儀なくされたカネボウや西武鉄道とどこが本質的に違うのか」というのがホンネのところだろう。
そうした、「漠然とした不公平感があるうちは、国内だけでなく、海外投資家からも評価されない状況が続く」との見方が説得力を増しているようだ。(S)】