1990年代、ちょうどバブルの全盛期に、加藤某という男が出現しその名を轟かせます。彼は、セイビ会なる仕手集団を形成し、ボロ株を買いあがり、売り方を玉締めにし、無配の株を10倍、20倍としました。最後は仕手戦に行き詰まり、投獄の憂き目に会い、市場から忘れられてゆくのですが・・・。
さて、現在の相場を振り返ってみて、最も求められているのは、加藤某ではないでしょうか。やれ、ギリシャショックでヨーロッパの景気が落ち込むだの、データがどうの、と理屈ばかり言っているあいだに、相場はすっかり外国人に乗っ取られ、銘柄選択も外国系の証券会社の判断がなければ動かなくなってしまいました。
「ここは日本の市場じゃないか、何で外国人ばかりが大きな顔をするのだ」
そこで登場するのが、加藤某です。
彼は、景気の先行きやら業績の見通しは無視します。大金持ちから金を集め、ひたすら一つの銘柄に絞り込んで買ってゆきます。その過程で株の値段を操作して売り方を誘い込み、株不足の状態を作り上げるのです。もちろん彼が目をつける銘柄は、そんなに大きな株はありません。浮動株の少ない普段はあまり目立たない株が狙われます。そうして、株価が安値から10倍、20倍になるまで買い続けるのです。
もちろん、彼のこうして行為は、後に糾弾を受け、やがては株の世界から消えてゆきますが、振り返って、彼の買占めが市場をどれだけ活性化させたかも否定できません。彼の買占め銘柄は、市場でセイビ銘柄といわれ、同じような銘柄が次々と値を上げ、ニセモノ銘柄まで横行したものです。
さて、相場の初期と末期には、仕手株が動きやすいといわれていますが。どちらにしろ、外国人に追いまくられた日本人は、市場の隅でボロ株を動かし、やがて市場全体の活性化を狙っているようにも見えます。
今日あたりの市場から、この動きを感じるのは私だけでしょうか。