少し古いが5月12日の読売新聞社説を読んで愕然としました。
東電値上げ申請について「丁寧な説明で理解を求めよ」として、
「値上げで利用者が負担するお金は、液化天然ガス(LNG)など火力燃料の輸入に充てられ、国外流出する。
震災後、日本の貿易収支は過去最大の赤字に転落した。
経済力の低下は食い止めたい。
火力への依存を減らすことが急務だ。
政府は原発再稼働への取り組みを加速させるべきだ。」
これは状況分析が不足しており結論の的確性を欠いているように思える。
そしてこれは読売新聞に限らず多くのメディアに共通することでもある。
2点を指摘したい。
1.原発再稼働について国論が二分している現状において、経済性に重点を置き過ぎて「原発再稼働」を結論付けるのはあまりにアンバランス。
原発現場から離れた場所に居る人の価値基準のような気がします。
原発現場に近い人たちも経済性からすれば原発再稼働を支持する人たちが多いのですが、その人たちの切羽詰まった状況へも思いも勘案するものの、議論の本質を軽んじているのではないか?
2.経済性の議論に際し、LNG価格が国際的に数年前レベルなのであれば、社説氏や東電、政府の説明が理解できるのだが、今や世界的にLNG価格水準が大きく1/5程度に下落しているのに、日本だけがその数倍のコストを負担しているという現実を無視した論を展開している。
東電は民間会社であり、採算改善の為には原価削減に取り組むことは当たり前であるのに、なぜLNG価格について言及しないのか?
現状の契約が「原油価格スライド方式」とのことで、米国発のLNG価格低下をそのまま享受できないことは容易に想像できる。
しかしながら普通の民間会社が契約する場合には、社会、経済情勢が大幅に変化した場合には協議する旨を付記することが多いのだが、東電の契約にはそのような常識が反映されていないのだろうか?
不思議なのは、そのLNGの調達に関わる日本側契約当事者が誰なのか?
残念ながら(私が見落としたのか知れないが)情報が不足しているが、当事者は東電なのか?
それとも日本の電力業界全体なのか?
(それでは東京ガスの購入分は対象外なのか?もしそうならガス料金を下げてほしい)
その他自家発電を行っている企業が調達する分まで含む日本国としての契約なのか?
(まさか自由資本主義の日本でそのような国家主導の契約は有り得ないだろうから、新規にLNG購入契約を結んだ自家発電企業が競争力を持つだろう)
その契約期限はいつまでなのか?
いつになったら安いLNGの恩恵を受けられるのか?
普通の民間人の感覚だと、企業毎に原料調達契約を結ぶのではないか?
電気料金は電力会社によって異なるように原料コストにおいても各社が知恵を絞って競争するのが当たり前なのではないか?
もし、電力会社が原料の安定調達の為に連携して契約したのなら、そのような説明があるべきだろう。
そのコスト増減は国民に帰すのだから。
まさか経済産業省が日本企業を代表して「原油価格スライド方式」を契約したなんてことはなかろうに。
資本主義の日本国なのだから。
いづれにしてもこの辺りの議論がなされるべきではなかろうか?
横道に逸れるが、
リーマンショックを経ても最近の米国経済にはパワーを感じます。
その直接、間接の源は「シェールガス」なのではないでしょうか?
歴史をみるとエネルギーコストが安い国のGDPは伸びるらしいし、エネルギーコストが安い時期に世界景気が好調らしい。
エネルギー、鉱物、食糧資源が安価であれば物価が低位で安定し多くの人たちが豊かな暮らしができる構造はよく理解できる。
一部のメジャーや投機者が潤う状況からは脱したいものだ。
(投稿者のID/ニックネーム:borokabu2525)返信