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<JT株>道険しい全株売却 政府「復興財源」に検討

東日本大震災の復興財源を確保するため、政府が保有する日本たばこ産業(JT)株の全株売却を検討している。JT側は「経営の自由度が増す」と歓迎するが、株売却で政府の関与がなくなれば、法律でJTに課された国内の葉タバコ農家やたばこ小売店への支援制度が維持できなくなる可能性がある。葉タバコ農家を支持基盤とする与野党議員や小売業界の反発は必至で、JT株全株売却のハードルは高い。【久田宏、小倉祥徳】

 「日本たばこ産業株式会社法(JT法)」は政府にJT設立時の株式総数の2分の1以上を保有することを義務付けている。政府は当初、JT法を改正して保有株の一部を売却。具体的には、国の保有を重要な経営問題に拒否権を行使できる3分の1(33%程度)に下げ、0.5兆円程度の売却益を得て、復興財源に回す考えだった。

 しかし、民主党の前原誠司政調会長らが政府に対して復興財源に充てる臨時増税の規模を2兆円程度圧縮するように要請。政府はその原資としてJT株の全株売却を検討することになった。全株売却が実現すれば、約1.7兆円程度の財源を捻出できるが、それには、JT法や国内たばこ事業制度の根本的な見直しが必要だ。

 JTは従来「国が過半出資したままでは、財務戦略を制約される」と完全民営化を要望している。現行のJT法では、増資には財務相の認可が必要で、たばこ販売拡大の余地がある新興国など海外でのM&A(合併・買収)戦略のための機動的な資金調達が難しいからだ。

 実際、健康意識の高まりを背景に、国内の喫煙者は大幅に減っており、JTのたばこ販売本数に占める海外事業の割合は国内の約3倍に上る。JTは99年に米RJRナビスコの米国外のたばこ事業を、07年には英ギャラハーをそれぞれ買収。世界販売シェアを米フィリップ・モリス、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコに次ぐ3位に引き上げた。しかし、成長基盤の確立には、新興国事業などのさらなる強化が不可欠。JTの木村宏社長は、政府の全株売却計画について「国際たばこメーカーとの対等な競争環境ができる」と期待する。

 一方、JTが完全民営化されれば、現行のような葉タバコ農家に対する手厚い保護はできなくなる可能性がある。たばこ事業法はJTに対し、国内産葉タバコの全量買い取りを義務づけているが、国産は海外産の約3倍と割高。

 JTは全量買い取り制度について「(完全民営化後も)何らかの形で法的な措置を残してもらって構わない」(志水雅一副社長)と配慮する姿勢を示すが、一般株主から「完全民営化しながら、割高な葉タバコの全量購入を強制するのはおかしい」との批判が出るのは確実だ。このため、葉タバコ農家やその産地を支持基盤とする自民党議員らはJT株売却に強く反対している。

 さらに、完全民営化には、たばこ小売店の反発も必至だ。現在はJTによるたばこの卸価格を店頭価格の9割に抑え、差額分を小売店のマージン(販売手数料)とする価格認可制度が採用されている。しかし、完全民営化でJTに対する国の経営関与がなくなれば、この制度が維持される保証はない。

 喫煙人口減少とコンビニなどとの競争でたばこ小売店の経営も厳しくなっており、全国たばこ販売協同組合連合会は「販売マージンが減れば廃業が増えかねない。長年の商習慣を維持してほしい」と訴えている。

 また、JT完全民営化には役所の利害も絡む。現在のトップは生え抜きの木村社長だが、所管する財務省(旧大蔵省)はかつて事務次官OBらを歴代トップとして送り込み、現在も役員に涌井洋治会長(元主計局長)、武田宗高副社長(元関東財務局長)が名を連ねる。財務省は「天下り先確保のために完全民営化に抵抗するなんてあり得ない」(幹部)と強調するが、霞が関批判でOBの天下り先確保が難しくなる中、JTが有力な受け皿であるのは事実だ。

 時価総額3兆6000億円と国内7位の巨大企業JT。市場は完全民営化の行方を注目するが、政官民の利害が複雑に絡むだけに、一筋縄では行きそうにない。







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JTを巡る利害の構図

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