このところギリシア問題が国際金融市場をかき回していますが、想い出すことが二つあります。
一つは、1960年代につくられたギリシア舞台の映画「その男ゾルバ」(アンソニー・クイン主演、適役)。
さまざまな異国情緒がありますが、なかでも主要人物の一人、安ホテルを経営するフランス人老女性が死を迎えると、村の老女たちがぞろぞろと病室にまで押しかけ、
死と同時に略奪をするシーン。
そのあと、ゾルバが、「あの女はここでは埋葬しない。あの女はヨーロッパ人だから」
と述べるシーンは、さらに意外です。
ギリシアは、ローマと並んで、ヨーロッパ文明の発祥の地ですが、当のギリシア国民の方には、
ヨーロッパ圏への帰属意識が乏しいように見えます。
もう一つは、90年代に耳にした知人の銀行マンの実見談で、
ギリシアでは、一人前の男性は、四〇台ともなると独立するのが普通で、
定年まで勤続するなどという労働風土とはまったく異質ということです。
よくいえば独立心が強いのですが、反面、公私とも企業は弱体であることで、
先般のオリンピック風景や、最近のデモの様子からも伺えるように思われます。
国内に見るべき産業は見あたらず、企業組織は弱体、
さらに国民の間にヨーロッパ圏への帰属意識が乏しいという事情のもとで、
EU加盟が適切であったかどうか。
グローバル化によって迫られるのは、ギリシアの場合、「転換」や「試練」では済まず、「飛躍」になるでしょう。
カンフル剤で解決できるでしょうか。