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ETN「Exchange Traded Note」???

 東京証券取引所に新たな金融商品が登場した。それが、ETN(指標連動証券)だ。8月23日(火)にまず2銘柄が、そして9月6日(火)に7銘柄が上場する予定となっている。

 ETNとは、どんな金融商品なのだろうか。

■株と同様に売買できて、投資対象がETFより広範囲の金融商品

 ETNは「Exchange Traded Note」の略で、日本語では指標(指数)連動証券または上場投資証券と呼ばれる。

 名前がETF(上場投資信託)に似ているが、商品の性格も一部近いものがある。ETNも、ETFと同じように株価指数や商品価格などさまざまな指標に連動する金融商品で、株式やETFなどと同様に証券会社を通じて証券取引所で売買できる。

 今回上場するETN9銘柄の名称とが連動を目指す指標は、それぞれ下記のとおり。銘柄名の「iPath」は、発行体であるバークレイズ・バンク・ピーエルシーのETNブランドの総称だ。どのETNも1口単位で取引を行える。

●8月&9月に上場するETN9銘柄(◆銘柄名/コード/○対象指標)

【8月23日上場分】
◆iPath 商品指数連動受益証券発行信託(東証:2021)
○S&P GSCI商品指数トータル・リターン
(世界のコモディティ市場全体の動きを表す商品指数)

◆iPath VIX中期先物指数連動受益証券発行信託(東証:2029)
○S&P 500 VIX中期先物指数トータル・リターン
(代表的なボラティリティ指数)

【9月6日上場分】
◆iPath 貴金属指数連動受益証券発行信託(東証:2022)
○S&P GSCI貴金属指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、金及び銀の関連上場先物から構成される指数)

◆iPath 産業用金属指数連動受益証券発行信託(東証:2023)
○S&P GSCI産業用メタル指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、アルミニウム、銅、鉛、ニッケル及び亜鉛の関連上場先物から構成される指数)

◆iPath エネルギー指数連動受益証券発行信託(東証:2024)
○S&P GSCIエネルギー指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、ブレント原油、原油、軽油、灯油、天然ガス及びRBOBガソリンの関連上場先物から構成される指数)

◆iPath 農産物指数連動受益証券発行信託(東証:2025)
○S&P GSCI農産物指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、ココア、コーヒー、トウモロコシ、綿、カンザス小麦、大豆、砂糖及び小麦の関連上場先物から構成される指数)

◆iPath 穀物指数連動受益証券発行信託(東証:2026)
○S&P GSCI穀物指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、トウモロコシ、カンザス小麦、小麦、大豆及びシカゴ小麦の関連上場先物から構成される指数)

◆iPath ソフト農産物指数連動受益証券発行信託(東証:2027)
○S&P GSCIソフト・コモディティ商品指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、ココア、砂糖、コーヒー及び綿の関連上場先物から構成される指数)

◆iPath 畜産物指数連動受益証券発行信託(東証:2028)
○S&P GSCI畜産物商品指数トータル・リターン
(S&P GSCI指数のサブインデックスの1つで、飼育牛、豚赤身肉及び生牛の関連上場先物から構成される指数)


 さて、“ETFに似ている”ETNだが、もちろんまったく同じものではない。ETNならではの特徴・メリットとしては、次の2点が挙げられる。

(1)ETFより投資対象が広い

 その理由は、ETFとETNの仕組みの差にある。たとえばAという指数に連動するETFは、A指数に連動するように実際の株式などを組み入れて組成する。一方、ETNの場合は、実際の株式などを購入しなくてもA指数との連動を目指した債券を発行すればよい。

 つまり、現物の資産を組み入れるわけではないため、外国人の保有に規制がある新興国の株式や希少資源、新興国の通貨など、現物資産の保有が難しい指標であっても、ETNであれば組成することができるというわけだ。

(2)価格のかい離(トラッキングエラー)が起きにくい

 現物資産を購入して運用するETFでは、運用の結果によってはETFの基準価額と対象指標の間に価格のずれ(=トラッキングエラー)が生じる場合がある。

 しかしETNは、対象指数とETNの価格が連動するよう発行体が保証していて、日々の運用にかかる手数料分を除けばそうした価格のずれは起こりにくい(ただし、実際の市場取引では需給の関係などから必ずしも指標と同じ価格で購入できるとは限らない)。

 さらに、配当課税などがかかるETFに比べると、一般的に管理運用コストが低いのもETNの特徴でありメリットと言ってよいだろう。

 もちろん、ETNにも価格変動リスクや流動性リスクといったリスクが存在する。その中で、ETFとの違いで特に注意しておきたいのが「発行体リスク」だ。

 ETNは、ETFとは違い裏付けとなる資産を持たない。そのため、万が一ETNの発行体が倒産したり財務状況が極端に悪化したりすれば、資産価値がゼロになる可能性も! 発行体の信用状況については常に気を配っておこう。

 ちなみに、今回の9銘柄の発行体であるバークレイズ・バンク・ピーエルシーの発行体格付けは、ムーディーズがAa3、スタンダード&プアーズがAA-となっている。

■キャンペーンを活用すれば、手数料ナシでETNが取引できる!

 ETNは、それぞれの上場日以降、多くの証券会社で取扱いを開始する。ただし、安藤証券、岡三オンライン証券、GMOクリック証券などでは現物取引のみが可能で、また丸三証券ではETN自体を扱わないとしている。証券会社によって取扱い状況に差があるので、取引する際には注意が必要だ。

 一方、大手ネット証券各社では、ETNの上場を記念したキャンペーンを実施する。具体的には、SBI証券、カブドットコム証券、松井証券、楽天証券、マネックス証券の5社が(表)のとおり、ETNの取引手数料のキャッシュバックキャンペーンを行なう。

 複数のネット証券に口座を開いている人は、ETNの取引には忘れずにキャンペーンを実施している証券会社を選択しよう。

 これまで以上に幅広い指標に投資できるETN。投資の可能性を広げる魅力的な金融商品と言えるが、新しい商品でありまずは商品特徴をよく理解することが大切だ。

 お得なキャンペーンも活用しつつ、様子を見ながら慎重に取引していってほしい。
(文/肥後紀子)

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