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超低金利政策の時間軸設定はQE3の序章

超低金利政策の時間軸設定はQE3の序章に、追加策探るFRB議長





 8月10日、米国経済の減速に歯止めがかからなければ、FRBはさらなる政策発動を強いられる可能性が高まっているようだ。写真はバーナンキ議長。ワシントンで7月撮影(2011年 ロイター/Yuri Gripas)

 [ワシントン 10日 ロイター] 米国経済の減速に歯止めがかからなければ、連邦準備理事会(FRB)はさらなる政策発動を強いられる可能性が高まっているようだ。

 FRBは前日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、事実上のゼロ金利政策を「少なくとも2013年まで」継続する意向を表明すると同時に、景気を支えるため様々な選択肢を検討していることを明らかにした。それは量的緩和弾3弾(QE3)の序章となる可能性がある。

 新たな時間軸の設定には3人のFOMCメンバーが反対するという異例の決定となったが、景気がさらに減速し、9.1%の水準にある失業率が低下しなければ、バーナンキ議長は一部メンバーの反対を押し切っても追加策に踏み切ると思われる。

 ゴールドマン・サックスのアナリストはリサーチノートの中で、「FRBが年内あるいは来年初めに再び量的緩和に乗り出す可能性はかつてないほど高まっている。FRBの経済見通しがわれわれのような悲観的な数字に近づけば、FOMCはおそらく政策をさらに緩和するだろう」との見方を示した。

 FRBは6月に発表した経済見通しの中で、2011年の国内総生産(GDP)成長率が2.7―2.9%になるとの予測を示したが、上半期のパフォーマンスが芳しくなかったことなどを考えれば、その見方は楽観的過ぎるとみられている。

 ロイターが今週実施したエコノミスト調査では、今年の成長率は1.7%(中間値)にとどまると予想されている。

 第3次の緩和策がどんな内容になるかは依然としてはっきりしない。最も考え得る措置は資産買い入れの再開だが、量的緩和第2弾(QE2)は一部の国にインフレをばらまいたと批判されている。

 前日決定された超低金利策への時間軸明確化に対しても3人のFOMCメンバーから異論が出されたことを考えれば、QE3の是非をめぐって激しい議論が起きるのは間違いない。

 <様々な選択肢>

 一部のアナリストは、バーナンキ議長はまだ1つか2つの隠し玉をもっていると考えている。実際、前日のFOMCで時間軸を設定したほか、追加緩和策について他の選択肢を検討していると明らかにしたことで、株式市場が急回復した。

 もっとも、それは一時的なもので、10日には欧州の銀行システムをめぐる懸念から再び急落した。

 大恐慌の研究者としても知られるバーナンキ議長は、景気が悪化している場面では「何もしない」よりも「やりすぎる」方が望ましいとの考えを示したことがある。

 FRBが長期にわたりゼロ金利政策を続け、約2兆3000億ドルに上る債券買い入れを実施しても景気に明るさが見えてこないため、金融政策の効果に疑問を持つエコノミストも多い。

 だが、FRBにはそれでもなお多くのツールが残されているとの声がある。

 バーナンキ議長自身は、やや高いインフレ目標、つまり物価目標を設定する可能性に言及したことがある。もっとも、彼自身がそれは「危険が大きすぎる」として、実際の活用には二の足を踏んでいる。

 ジョージ・メイソン大学のアーノルド・クリング氏は「FRBは資産購入や紙幣印刷ができる限り、玉が尽きることはない。FRBはマネーサプライの拡大を目指すべきで、インフレ率をもう少し引き上げることが望ましい」と語っている。

 しかし、物価上昇は一般の人々には歓迎されにくい。そのため、一部のアナリストは、政策に雇用を絡ませる必要があると指摘している。つまり、インフレを通じて支出や投資を拡大し、最終的に雇用拡大を目指す政策だ。

 <FRB内部の反対>

 非伝統的な政策にはリスクがつきもので、FRBは外部からの批判や内部の異論に直面している。

 前日のFOMC決定に反対票を投じた3人のメンバー(ダラス地区連銀のフィッシャー総裁、ミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁、フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁)のほかにも、今年投票権を持たない一部の地区連銀総裁は同じように考えている。

 最近のコメントを見れば、カンザスシティ地区連銀のホーニグ総裁は、インフレリスクを冒すことに明らかに批判的な立場を示している。

 リッチモンド地区連銀のラッカー総裁も最近「現在のインフレトレンドを見れば、現時点で追加的な金融緩和策を講じれば、インフレ率を望ましくないほど高水準に押し上げる可能性がある一方、実質成長率を押し上げる効果はほとんどない」と述べている。

 セントルイス地区連銀のブラード総裁は、景気が悪化した場合にはさらなる措置を支持する考えを示しながらも、長期にわたり金利を超低水準に据え置くことについては懐疑的な見方を示している。

 だが、前日のFOMC決定を見れば、バーナンキ議長はコンセンサスの形成を待った結果、経済がリセッション(景気後退)に陥るといった事態を避けるため、自分が正しいと考える政策を押し進めていく考えのようだ。

(Pedro Nicolaci da Costa記者;翻訳 長谷部正敬)

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