円売り介入:円高阻止 金融緩和と「合わせ技」

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

お知らせ

読み込みに失敗しました。

しばらくしてからもう一度お試しください。

重要なお知らせ すべて見る

faichiさんのブログ

最新一覧へ

« 前へ112件目 / 全232件次へ »
ブログ

円売り介入:円高阻止 金融緩和と「合わせ技」

政府・日銀は4日、円売り・ドル買いの為替介入に続き、金融政策決定会合を前倒しして追加緩和に踏み切った。政府・日銀が緊密に連携し、合わせ技を演出したことで、円相場は海外市場で一時、約3週間ぶりに1ドル=80円台まで下落。ただ、今回の介入は日本単独の上、円高の背景には米欧経済の根強い減速懸念があるだけに、今後も円高圧力がくすぶるのは必至。円相場が再び戦後最高値の突破を試す局面を迎えれば、政府・日銀はさらなる対策を求められる。

 「市場にサプライズ(驚き)を与えられた」。財務省幹部は安堵(あんど)の表情を見せた。為替介入と金融緩和が合わせ技で打ち出され、円相場は一時、3円程度急落。市場では「兆円単位の介入が入った」との見方が出て、足元の円高にひとまず歯止めがかかった。

 政府・日銀は円相場が急伸した7月下旬以後、水面下で介入の準備に着手。海外市場で1ドル=76円29銭まで急騰した8月1日深夜には危機感が一気に広がった。こうした事態を受け、野田佳彦財務相自らガイトナー米財務長官らと電話協議し、「実体経済を反映しない一方的な動きだ」と強調、3月の協調介入を再現させようと動いた。

 東日本大震災直後の円高は投機的な色彩が強く、日本経済の崩壊を恐れる米欧が主体的に協調介入に応じた経緯がある。だが、今回は米欧の経済にも不安があるだけに、協調の言質を得られず、日本の単独介入を黙認してもらうにとどまった。

 このため、野田財務相と日銀の白川方明総裁は、単独介入の効果を最大限高めるべく協議。市場には「金融決定会合最終日に追加緩和するのに合わせて為替介入するのがタイムリー」との見方が強かったが、2日間を予定していた会合を1日短縮することで迅速な対応をアピール。市場に意外感をもたらすことで、介入効果を高めた。

 日銀にとっても、戦後最高値に迫る円高は「11年度後半以降、緩やかな回復経路に戻る」とのシナリオを崩しかねないリスク要因。電力不足が企業活動を圧迫する懸念が強まる中、白川総裁は決定会合後の会見で「企業マインドにマイナスの影響を与え、企業の(海外)生産シフトを加速するリスクがある」と強調した。昨年8月以降の円高局面では、日銀が追加の金融緩和を見送った直後、米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上の追加緩和を決定。この結果、円高が加速し、「対応が鈍い」と批判された。

 今回の迅速な対応には「昨年の二の舞いは避けたい」との思惑がのぞくが、実は昨年9月の介入の際も、円安効果はわずか1カ月しか持たなかった。米欧は今のところ静観しているが、足並みの乱れなどが表面化すれば投機筋が再び円買いを仕掛ける可能性がある。【小倉祥徳、谷川貴史】

 ◇くすぶるドル売り圧力

  今回の円高は、米国経済への懸念を背景にドルが売り込まれたのが要因だ。米国の財政や景気の先行き不安が払拭(ふっしょく)されない限り、ドル安圧力は続きそうで、政府・日銀による介入や追加緩和の効果も打ち消されかねない。

 円高の原因の一つだった米政府債務上限引き上げ問題は、期限の2日までに決着した。だが、引き上げと引き換えの財政赤字の削減幅は、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が求める水準より小さいため、米国債の格下げ懸念は消えていない。

 さらに米経済指標はさえない内容が相次いでいる。先週末発表された4~6月期の実質成長率は前期比1.3%と市場予想を下回り、1~3月期も1.9%から0.4%に下方修正された。その後も生産や消費の低調さを示す指標が続いており、5日発表の7月米雇用統計の内容次第では再びドル売り圧力が強まる可能性がある。

 焦点となるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の動向だ。FRBが昨年11月に導入した追加の量的緩和政策は「各国の通貨安競争と原油などの国際商品相場の高騰を引き起こした」と批判を浴び、今年6月末に終了。「FRBは追加緩和に慎重」(日銀幹部)との見方が根強く、米財政にも余力のない中、米景気がさらに悪化する恐れがある。

 一方、米景気の一段の減速が確認されれば、FRBに対し、市場などから追加緩和を求める声が高まることも予想される。FRBが緩和に動けば、日銀が今回の追加緩和で金利低下を促し、円売りを誘発しようとした効果が相殺されかねない。

 円高が再び進行すれば、政府・日銀は再度の介入や一段の金融緩和に踏み切るかを試されそうだ。だが、市場では「単独介入では円高を反転させる力に乏しく、日銀も緩和策は限られる」との指摘が出ており、政府・日銀が円高対策で手詰まりに陥る可能性も否定できない。【大久保渉】


毎日新聞 2011年8月4日 22時35分(最終更新 8月5日 0時53分

コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。

ネット証券比較

みんかぶおすすめ