まずはこの度の地震に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、ご無事を心より祈念申し上げまする。
ここに拙者の無事をご報告させて頂くとともに、今回の地震体験を記させて頂きたいと存じまする。
その日の午後、拙者は都内の会社、建物の5階で地震に遭遇しました。あまりに大きく、また長い揺れに、(これはただ事ではない。建物が倒壊したら助からないかもしれないが、下の階に崩れ落ちた時は、ショックを最小限に和らげよう)と、珍しく真剣に善後策を考えておりました。
おかげさまで建物に被害はなく、数分後に無事避難。家族の無事を確認し、ひと息ついたところで大きな余震が発生。周辺の建物はゆらゆらと揺れ、窓ガラスが波打っている。まるでCGを見ているような状態でござりました。
会社に戻り、遠方にいる上司、役職者に拙者部署の無事をメールで報告。その日は「休業」とさせて頂き、避難することに。たまたまそこに居合わせた会社同僚と電車が動くのを待つことに致しました。
JRの方が早く動くかもと期待し、近くの四ッ谷駅周辺の喫茶店を探すも、全て満席。仕方なく開店間際の居酒屋を発見し、とりあえず入ることに。「腹が減っては戦はできぬ」と、ビールを注文。まさしく地獄に仏とはこのことで、大いに美味でござりました。
時刻は8時を過ぎ、依然何ら復旧情報がないままの状態に業を煮やし、方向を決めて行けるとこまで行こうと決断。この時のメンバーが皆同じ方向だったことは不幸中の幸いと申せましょう。
まずは渋谷を目指し、寒風吹きすさぶ中、赤坂方向へ裏道を歩くも、そこは人、人、人…。青山通りに出てみると、車は動かぬ大渋滞。(これではタクシーどころではないか…)仕方なく、寒風の中、行軍を進めることに…
近くのコンビニに寄ってみると、めぼしい食料や携帯の電源などは全て売り切れ。皆、考えることは同じなようで、まるで暴動でもあったかのような体でござりました。開いている飲食店はほぼ満席状態。腹ごしらえをしておいて大正解でござりました。
寒さの中、行軍を続けると、外苑前付近で「銀座線は動いてますよ~」と皆に教えるように大声で歩く人が…これはありがたいと思うと同時に、この方は素晴らしいと感激。満員すし詰めの電車を1本待ってようやく乗り込み、渋谷へと到着。
ここも黒山の人だかりで、タクシーを待つ大行列、電車が動くのを期待する人々も大行列。暖房の効いたマークシティにて、夜明かし覚悟で座り込む人々も壁際にびっしり。
電車が動く見込みがまったくわからない状況の中、仲間と相談し、やはり前へ進むことを決断。行軍を続けることに致しました。国道246号線をひたすら西へ。時刻は10時をまわり、行軍を始めて2時間が経過。周囲は依然として歩く人、人、人…
人間は極限状態に追い込まれると本性が現れるもの。歩きながらぶつかった云々で取っ組み合いの喧嘩を始める人たちも現れ、壮絶な雰囲気に。我々は、いつか救われることを信じて淡々と歩みを進めるのみ。
三軒茶屋に差し掛かった時、駅にあかりが見えたので、駆けつけてみると、なんと復旧の知らせが!電車はすし詰め、慎重な徐行運転で決して良い環境ではなかったものの、電車とは、かくも素晴らしきものなのかと感謝させて頂いたのと同時に、人間は自然の前に如何に無力なものなのかということを痛感させられた夜でござりました。
家にたどり着いた時、ちょうど日付は変わっておりました。出迎えてくれた家族の笑顔を見て、ようやく苦労が報われた思いでござりました。