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中国、天津から(2)

連休前後の中国天津は、曇りがちの風の強い日が続き、やや明るさと精彩に欠けるもやっとした感じでした。

どこからともなく柳じょの木の芽の綿毛が飛来し、風の吹きだまりに丸まったり、壊れて飛散したりという、季節の風物誌が見られます。
天津の人は盛んに「今年は春がなっかた」といいます。
「春のない年は---」と、いろんな風に口々におっしゃるのです。
そうした話を聞いてあげながら「ほ~!」と、新鮮な発想の驚きに出会います。

5月1日からの上海万博開催の話題もあったのですが、中国国営CCTVの大宣伝の割には、どこか他人事のようで、あまり天津人の口に上ることは無いようです。
勿論、ごく近しい間柄のひとも何人かは、上海の会場に出かけていったと聞きました。あるひとは、日本観光の帰りに上海に立ち寄るという人もいました。

期待しながら赴いた渤海証券の某営業所での、人影は普段よりまばらでした。
この「期待」とは、北京五輪から上海万博へと展開するビックイベントとともに盛り上がるであろう景況感への期待もあります。

しかしながら、北京五輪の時も残念ながら証券市場の盛り上がりには欠ける物があったしなァ、と一人なんとなく納得。

昨今の中国証券市場は、上海総合指数が2600ポイント台で、4月14日に付けた直近の高値3166.18ポイントから16.4%の下落率を記録しています。

しかしながら、日本や欧米の企業の体たらくに比べ、世界経済の落ち込みの影響を受けたといいながらも、中国上場企業は軒並み好業績、好決算、高配当連発です。
そうした「期待」感もありました。

中国上場企業の2009年の決算業績が概ね好調で、1株(額面1元)に1.2元の現金配当を付けたり、現金配当だけでなく1株当たり1.5株の無償株配当を発表する高配当企業があったりと、一般股民(株主)の気持ちの高揚もあるだろう、との期待もあったのです。

ところが、証券会社の営業所内は、がらんとしていて、隅っこで賭トランプゲームに興じる2組のグループ以外、人影もまばらなのです。
あれ~え? ど~したのかなァ!
上海総合指数が6000ポイントを目指していた頃の、人と熱気はどこへ行ったのかな~ァ。

まことに、ここの中国人は飽きっぽいというか、株は上昇期の登り龍の尻尾に乗って短期勝負を繰り返す賭け事としか思っていないのか、根気が続かないというか、勝ち馬にしか乗ろうとしないというか、まったくもって烏合の衆のように、勝ちどきの知らせにどこからともなくわっと集まり、どこへともなくちりじり散っていく、そんなイメージがぴったりなのです。

証券市場のこの体たらくに比べ、不動産への話題は熱いものがあります。
昨今の政府の不動産投資への抑制策(2軒目以降の持ち家に対する銀行融資限度の制限強化策)を巡っては「一夜にして政策がひっくり返った」とえらい剣幕でまくしたてられ、殺気すら感じたものです。一般房東(不動産投資家)の怒りは、烈火のごとくでした。

しかし、ある人(個人投資家)が私にぼそっと漏らした一言が印象的でした。
「市の高級幹部達の持ち物(物件)が、一斉に売りに出た時期があった。不思議に思っていたんだが、政策変更のサインだったんだ。中国では、常に一般庶民は犠牲になる」と。
彼女は中古物件専門の仲介業(不動産屋)に暇があると出入りしていて、そのことに気づいたそうです。

中国人には、不動産に対する並み並みならぬ特別な執着というか、思いがあるようです。今の所は、確実に上昇を続けるという不動産投資での成功体験が庶民の心をもとらえて放さないのでしょう。

貯金大好きな中国の一般庶民ですが、大金を要する不動産投資より、預金や給与のなかの小金から出来る株式投資の方が、今の中国老百姓(一般庶民)には向いているように思うのですが。

現にひと頃の基金(投信)ブームは、預金よりも有利ということで大人気でしたが、株式市場の低迷で預金利率を割るものも出て、ブームは静かに去っていきました。

<つづく>
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