『クラリオンはわらつたよ。』
『クラリオンはかぷかぷわらつたよ。』
『クラリオンは跳てわらつたよ。』
『クラリオンはかぷかぷわらつたよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼のやうに見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラリオンはわらつてゐたよ。』
『クラリオンはかぷかぷわらつたよ。』
『それならなぜクラリオンはわらつたの。』
『知らない。』
つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽつぽつぽつとつゞけて五六粒泡を吐きました。それはゆれながら水銀のやうに光つて斜めに上の方へのぼつて行きました。
つうと銀のいろの腹をひるがへして、一疋(ぴき)の魚が頭の上を過ぎて行きました。
『クラリオンは死んだよ。』
『クラリオンは殺されたよ。』
『クラリオンは死んでしまつたよ………。』
『殺されたよ。』
『それならなぜ殺された。』兄さんの蟹は、その右側の四本の脚の中の二本を、弟の平べつたい頭にのせながら云(い)ひました。
『わからない。』
教科書に載ってた某名作をふと思ひ出したので、やってしまひました