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鍵英之株主として予測する。幻冬舎上場は廃止に

幻冬舎の担当者による横領事件

テーマ:会計に係るあれこれ

最初に発覚したのが3月なのでこのブログで取り上げるのは今更ではあるのですが、この事件には驚きました。

しかし8年間にわたり9億円も横領していたとは…。


犯人の元社員(管理局長?)の手口は

・日常的にキャッシュカードを用いて預金を引き出していた。
・出版業では返品が経常的に発生するため、「売掛金を個別の取引ごとに管理する事が困難」であることを利用して、架空の売り上げを計上して横領を隠蔽した。
・更に、期末には偽造したデータに基づく書類を用意した。

とのことです。


気になる点ですが、

1 犯人が経理部長だとしたら、そもそも経理部長が預金を簡単に引き出せる事自体おかしい。経理と財務の職務分掌は内部統制の鉄則なはず。
(もっとも、現実的には会社規模にもよりますが…)

2 売掛金について確認状で差異があれば会社側に調整を依頼するのですが、差異原因を調べるにあたって根拠資料を添付するのが通常で、果たしてその資料をどこまで偽造できるのでしょうか…


思うに監査の窓口となっていたのもその犯人であり、実質的に監査資料も殆ど一手に担っていた状態であったのではないのでしょうか。

実際幻冬舎も親会社単体では従業員数は100名に満たず、会社規模の割に管理祖部門の人数も決して多くない事が予測されます。


しかしそれを差し引いても、架空の売掛金が膨らみ続ければ売上高や営業キャッシュフローに対する比率はどんどん肥大してくるはず。

監査の段階では回転期間分析(年間の売上高と期末の売掛金残高から、売掛金が年間売り上げの何ヶ月分に相当するのかを検証する)を必ず行うので、この段階で不審な動きが察知されるはずです。


具体的な分析は改めて行ってみようと思いますが、下手すると監査法人までもが重過失による責任を問われる可能性も否定できません…。


幻冬舎の不正を見破る事は出来たか?(前編)テーマ:会計に係るあれこれ
前回に続いて、幻冬舎の財務指標を分析してみました。

(単位:百万円。2008年3月期までは有価証券報告書、2009年3月期は決算短信の連結財務諸表より)


決算期  売上高  売上債権  売上債権回転期間(月)

2002   7,263    3,936    6.50
2003   8,493    3,259    4.60
2004  10,160   4,444    5.25
2005  11,888   4,560    4.60
2006  10,947   6,028    6.61
2007  10,900   6,289    6.92
2008  11,504   5,846    6.10
2009  11,641   5,309    5.47


ここで回転期間に関する説明は省略しますが、売掛金ないし受取手形が入金されるまで、およそ4.6ヶ月~7ヶ月もの期間を要する事になります。

しかも、かなり乱高下しています。


もっとも、期末の直前に多額の取引が生じたり、大口の取引先の債権が貸し倒れたりなどの異常な要因で期末の売上債権の数値が変動する事もありますが、取引条件が変わりでもしない限り回転率がここまで大きく変動する事は考えられません。

加えて、業種にもよりますが、僕の経験上、売上債権回転期間はおおむね1~3ヶ月が一般的です。

ここで比較対象として同業他社の売上債権回転期間を挙げてみます。

(2008年3月期(中央経済社のみ2008年9月期)の有価証券報告書における連結財務諸表より)

学習研究社           3.63
昭文社             3.52
角川グループホールディングス  2.66
中央経済社           2.60

少し古いデータですが、業界別平均についてはこちら


話を戻しますと、売上債権の回収に半年近くも要するのは、一般の企業では考えられない事です。

通常であれば、ともすれば資金ショートにもなりかねません。


上場前のため、不正が行われていたという2001年3月期以前の財務諸表が入手できなかったのが残念ですが、仮に不正が行われる以前の回転期間が3ヶ月前後であったなら、明らかに赤信号だったはずです。

そうでなくても、実際の入金までの期間と回転期間との間にズレがあるのなら、その説明がつかなければマネジャーやパートナーのレビューも、意見表明にあたっての審査もクリアできないはずです。


加えて、2009年3月期の時点で流動負債に9億円も計上されていた「その他」の勘定も気になります。

「連結財務諸表等規則」上、重要でない科目は集約して開示する事ができるのですか、これに含まれる科目を悪用していた可能性もあります。

ちなみに、注記において、「投資損失累計額39百万円」が含まれている旨が記載されていますが、それ以外の8億円分についての説明はありません。

同社の調査報告によると、

「出版業界では商品である書籍の出荷と返品が日常的に頻繁に行われる事から、売掛金を個別の取引ごとに管理する事が困難であるという事実があります。
 架空の売掛金が混入していても個別取引との対応関係を確認する事が難しいため…」

とありますので、本来売掛金から控除すべき返品分が控除されないまま、「未払金」などの名目でこの「その他」に計上されていた可能性も考えられます。

その結果、貸借対照表上の売掛金は実際の売掛金(純額)よりも多額に計上されてしまい、そのために回転期間が過大な数値となってしまったこともありえます。


しかしたとえ個別に管理する事が困難といえども、返品分の売掛金が相殺されないまま負債と両建てになっているのならば、損益に影響がないとはいえ両建ての分だけ総資産を膨らませてしまうので、これだけでも立派なエラーになります。


元社員が具体的にどのような方法により資金の横領を図ったのかはわかりませんが、以下の仮説が考えられます。

1 まず、書類の偽造と不正なデータ入力により、架空売り上げを計上する。

2 1に係る返品も架空で計上する。

3 返品分の決済を装って預金を引き出し、着服する。

4 返品率100%というわけにはいかないので、結果として売掛金が過大に計上されてしまう。


では、上記の前提の下、一連の不正を見抜く事は出来たのでしょうか。


…具体的なシミュレーションは、次回にて検討したいと思います。

参考ページ http://www.gentosha.co.jp/ir/pdf/press_20090519_to.pdf

幻冬舎の不正を見破る事は出来たか?(後編)テーマ:
前編では、売上債権回転期間を中心に幻冬舎の財務諸表を分析してみました。

確かに分析では明らかに怪しいという結論に至りましたが、たとえ黒であっても分析的手続だけでは確証を得る事は出来ません。

実際の売掛金の入金までのサイトと比較して、「どうして実際のサイトとここまで開きがあるのですか?」と疑問をぶつけることで虚偽が発覚することにつながりますが、あくまで問題点を見抜く糸口でしかありません。


では、どのようにして不正を見破る事が出来ますでしょうか。


売掛金については取引先に確認状を発送・回収するのが鉄則。

会社側の残高と回答が一致すれば通常は問題にはなりませんし、一致しなければ会社側に差異原因の調査を依頼します。

差異原因の多くは先方と会社側との認識のタイミングのずれですので、実際に監査に携わった会計士たちも、(実際は架空売上による)売掛金の過大計上分について

「ああ、これは返品分がまだうちに届いていないからですよ。返品された商品はまだ到着していないから、届くまで減額しなくても良いですよね?」

と説明を受けいてた可能性が考えられます。

会社のレポートでも「日常的に発生する返品について個別に管理するのは困難」とありますので、監査チーム側もそれ以上追及せず納得していたかも知れません。


ですが、差異があったならあったで、その根拠資料も一緒に入手するのが原則なはず。

たとえば確認状と会社残高との差異が100あって、それが返品の未達によるものだとすれば、返品された商品100に係る取引先からの通知、あるいは当該商品を倉庫などで検品した時の納品書(検品時の日時や担当者の捺印があるのが一般的)についても確認しなければなりません。

その場合、不正を行った元社員(管理局長)が取引先や倉庫責任者とグルでない限り、こうした書類をでっち上げる事は困難でしょう。


いくら「返品について個別に管理するのが困難」とはいっても、それは差異の大きさによるのではないのでしょうか。

元社員にとっては困難なままである方が都合が良い事に違いありませんが、通常は内部統制上の欠陥として監査レポート(長文監査報告書)で役員宛に注意喚起して、改善を促すはずです。

それにも関わらず会社側が内部統制の改善を図らなかったとすれば、それは会社側の怠慢になるのではないのでしょうか?

あるいは、監査法人側がそうした問題点を指摘していなかったのでしょうか?


また財務諸表監査にあたっては、返品の管理に係る内部統制が未整備でリスクが高いのなら、相応に重点的に監査手続を実施して、可能な限り高い心証を得るように努めなくてはなりません。

具体的には、経験豊富なシニアないし3年目以上のスタッフが担当するか、返品の監査に付いてより多くの時間を割くなどします。

商品管理の担当者に業務の流れをヒアリングするなどして、どこに着目すれば返品を正確に漏れなく押さえられるか、十分に考慮することも不可欠です。
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