りんりん/Kさんのブログ
ブログ
中国、天津にて(22)
中国における食品の安全性問題は、日本政府等の強い改善要望(圧力)により、今、中国国内の食品加工工場は大変な状況変化に対する対応に大わらわです。
まず、8月に入り、輸出食品工場は、中国トップ筋の直接指示により、輸出許可業務を司る中国商品検査局は一斉に管轄の食品工場の立ち入り検査に入りました。
我が当社にも、2日の日を開けず商検局の役人チームが訪れ、やれ衛生管理だ、記録検査だと、入れ替わり立ち替わり訪れる始末で、工場側はその対応に日々大慌てです。
9月初段階で、輸出貨物について、商品検査の徹底、それこそコンテナごとに検査を受ける体制になり、商品1品毎に検査済みシールを添付されることとなりました。
勿論、商検局のサンプル検査等様々に課される検査項目にに合格できなければ、許可を出さないことになります。
この段階で、既に多くの商品(特に食品)の輸出許可のストップを宣告された業者が多数に上りました。
更に、10月1日からは、商品の原料に対する原産地証明等の添付が義務づけられ、書類の不備だけでも、食品の輸出は制約されることとなります。
こうした、中国産食品に対する当局の厳しい規制態度は、日本など輸入各国からの要望に基づくものですが、その徹底ぶりに我々外資企業側も音を上げる場面もしばしばです。
日本側が食品の安全を中国に厳しく迫れば、それは我々中国に立地する日本への食品輸出企業に、直接更に厳しい対応として還ってきます。
当然、食の安全確保には、高コストを強いられ、比較的安価に仕入れられた中国産の食品原料も、これからは一般的とは行かなくなるでしょう。
結局、食材を享受する日本の消費者側にコスト高として跳ね返ってくることになります。
日本側が食の安全に対して、中国政府に強い態度で臨めば、中国側は食の多くを依存する日本の現地生産企業や輸入業者に対して、もっと厳しい要求を返してくる、という構造になっているのです。
中国政府は、食品検査違反企業に対して、輸出許可取り消しや営業許可の取り消しなど、厳罰等の態度で臨み、2~3割の輸出に関わる粗悪な業者の淘汰に着手しつつあります。
しかし「食の安全」に対する行き過ぎた要求は、先進諸国のエゴであってはなりません。地球規模で言えば、まだまだ食の行き渡らない国や地域も多く存在します。そうした国や地域に暮らす人々の「食の確保」や「食の安全」も同時に満たせる基準作りが必要だと感じます。
「食の安全」は、日本に暮らす、何も自分だけ身体に良いものを摂取できれば、それでよいものではないでしょう。日々の食べ物にもありつくのに苦労する地域の貧しい人々にも、実は同様の要求や権利があって当然でしょう。
例えば食物について、多少の高コストにも耐えられる現在の日本の現状だけが、全てではありません。
日本に欠けているのは、食の安全を生産を担う他国に要求(押しつける)するのではなく、進化した技術の移転や共同開発を提案し、世界の多くの国々で「安全」で「低コスト」に「量産」できる先進農業技術の普及の可能性を追求することではないでしょうか?
21世紀の世界的な大きな問題の一つに「食料確保」の問題があります。いかに「安全」で「低コスト」で「量産」出来る食料を生み出し、確保できるかに掛かっています。
経済優先の世界的風潮は、エタノール等のエネルギー確保のために世界的なトウモロコシやサトウキビ価格の高騰を招き、食料の確保という世界的命題を脅かしつつあります。
「食の安全」という錦の御旗は、自国のエゴだけで叫ばれていないか、世界的規模で深刻化する「食料確保」の問題と符合する要求水準になっているか、ここら辺で、よーくチェックしておく必要もありそうです。
<つづく>
-
タグ:
中国にいらっしゃるのですね。
読ませていただいてただただ中国製はと口癖のように言っていたことに少し反省しています。
確かに安い物にこだわりながら、日本製にこだわる 当然予算は跳ね上がる。
最近予算とおりで買い物が出来たことがないのです。
何でも思い通りにしようとする 反省です。
当日記に対する、コメントありがとう御座います。
食品問題に関心が有るようにお見受けしましたが、私も日本人として、中国の一般市民の食に対する見識の高さに驚かされる事がしばしばです。
中国の市民の、市場や商店での買い物に対する確かな目は、日本人も見習うべきだと感じます。基本的に、まず商品を疑ってかかり、難癖の付けられないモノを本物と認める目は健在です。
日本人は、少し流通大手企業の良いように飼い慣らされてきた結果、モノの見極めに対する確かな目を退化させて来つつあります。日々の食の摂取に対する真剣な取り組みであれば、当然関心は食品自体の品質の見極めや味の善し悪しを見極めるということが決め手となるはずです。
食品のトレイサビリティや電子タグを活用して食品の履歴を情報化する動きがありますが、それは所詮安心を見極める手段の一つであるに過ぎず、安全を保証する制度ではありません。
仮にそうした事柄が備わっていたとしても、北海道のミートホープ社のように、悪意を持った生産者が事物の改ざんを行えば、その信頼性も根本を揺さぶられる結果に陥らざる終えなくなります。
日本の大手流通業者は、自らの保身のために、自ら消費者の代弁者だとの情報操作に躍起です。トレイサビリティ等の仕組みを整えることで、自らは問題の前面からは逃れ、ことあれば生産者やメーカーに全ての責任を押しつけようと躍起になっています。
何を信じて、安全な食を確保するのか?
所詮は、自らの確かな目を養う、自らの良き感性をとぎすますしかないのではないでしょうか。
当中国、天津日記は現地での生の情報に基づく内容の発信に心がけています。ぞうぞ、これからもこの日記を偶には覗いてみて下さい。よろしく、お願いします。
産地と賞味期限以外の情報で判断することができません。
食品の見た目も色が綺麗とかだけ実際に安全かどうかの基準がわかりません。
ちょっと話はそれてしまいましたけど、おっしゃるとおり先進諸国は食品の安全基準を重視して、ますます割高な食品が供給される世の中になってきてます。
自然食品取り扱いの店など、これがこの値段?と目を見張るものも多々あります。
「食の確保」のことは、日本で普通に暮らしている限りは気にすることはありませんからね。
「低コスト」で「量産」できる技術も一方で開発しない限り、後進国には行き渡らない。こんなことを考えたことはありませんでした。お恥ずかしい限りです。
政府のみなさんは、こういうことは考えている上で発言しているんでしょうか?
毎回の丁寧なコメント、ありがたく思います。
私のつたない意見ですが、その意を深く理解して頂き、感謝しています。
食品や玩具等への安全・安心を取り巻く、中国への目には、依然厳しいものがありますね。
私もそうした商売を本業として営んでおりますので、余計に色々感じてしまいます。
日本のこれからの高齢化や少子化は、食の将来にとっては
決して良好な発展は望めません。
しかし、食の安全で良い物を安価に届けることは、これからも続けていきます。
一方、中国国内の内需底上げは、これからです。
中国人の確かな目で受け入れられる安全で良質な食の素材を提供できたら、と考え取り組み始めたところです。