―フィンテック・AI関連の大型上場も、銘柄数多く需給面を懸念する声も―
2021年の最後を飾る「12月IPO」が今週末から本格化する。今月は、33社もの新規上場企業が登場する。資金吸収額が100億円を超す大型IPOも複数あり、 フィンテックや人工知能(AI)関連などの話題性の高い銘柄も少なくない。しかし、1日に7社のIPOが登場する日もあるなど、大量IPOに対しては需給悪化を懸念する声も出ている。期待と不安が交錯する12月IPOを探った。
●21年の年間IPOは120社超と15年ぶりの高水準
12月IPOは昨年に比べ7社増え33社が登場する。単月のIPO企業が30社を超す近年にはないIPOラッシュとなる。これに伴い、21年の年間での新規上場銘柄数は120社を超え、06年の188社以来、15年ぶりの水準となる見込みだ。今年の高水準のIPOに関しては「コロナ禍で20年に新規上場を延期した企業が今年出てきたとみられるほか、来春の東証再編を前に駆け込み的に上場する動きもあるのではないか」(市場関係者)との見方もある。
市場からは、超過密スケジュールとなる12月IPOに対しては「相場環境が改善すれば、多数のIPO銘柄もこなせるが、状況が悪ければ初値が公開価格を割り込む銘柄も少なからず出てくる可能性も」(アナリスト)との警戒感もある。足もとの東証マザーズ指数の低迷は「12月IPOに対する換金売りも大きな要因」(同)との見方が指摘されており、12月IPOの動向は新興市場の行方も左右しそうだ。
●1週間で25社が上場する超過密スケジュール
12月上場企業の内訳は、東証1部への直接上場が1社、同2部への上場が3社、ジャスダックが3社、マザーズが26社(外国株含む)。既に、2日にジャスダック市場にのむら産業 <7131> [JQ]新規上場を果たしているが、10日のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援のフレクト <4414> [東証M]によるマザーズ上場から12月IPOが本格スタートする。特に20日以降は怒涛のIPOラッシュとなる。20日は3社、21日は4社、22日は6社、23日は5社、24日は7社もの新規上場企業が登場する。20日から始まる1週間で25社が上場する超過密スケジュールだ。
更に、ITやDX関連などの時流に乗る企業も多数登場するなか、資金吸収額が100億円を超す大型IPOも少なくないことも関心を集めている。
●BNPL関連のネットHDやAI関連のエクサウィザなど注目
12月の大型IPOとして注目されているのが、15日に東証1部へ上場するネットプロテクションズホールディングス <7383> だ。同社は、注目を集めるBNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)と称される「後払い」関連企業。成長期待が膨らむものの資金吸収額は680億円前後、時価総額は約1400億円と大きいこともあり、12月IPOの行方を探るうえでも、その動向が注視されている。
21日に東証2部へ新規上場する湖北工業 <6524> [東証2]は、アルミ電解コンデンサー用のリード端子などを手掛け、資金吸収額は仮条件ベースで120億円前後が見込まれている。同社は20年の経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれている。また、22日にマザーズに上場するFinatextホールディングス <4419> [東証M]は、証券・保険向けにクラウドの基幹システムを提供し資金吸収額は仮条件で230億円前後の見込み。同日にマザーズに上場するリニューアブル・ジャパン <9522> [東証M]は太陽光発電所の開発などを手掛けており、資金吸収額は90億円前後が予想されている。
23日にマザーズに上場するエクサウィザーズ <4259> [東証M]は、AIを活用した企業の課題解決を手掛けており、市場の関心は高い。同社の資金吸収額は370億円前後とネットHDに次ぐ規模が見込まれている。23日にマザーズに上場するZEALS <9255> [東証M]は、チャットボットを活用した会話型広告サービスを手掛けており、資金吸収額は120億円前後の見通しだ。
これら、大型IPOは上場時の市場環境に左右される面が大きく、規模は大きいだけに初値は飛びにくく、市場環境次第では初値は公開価格を割り込む銘柄が出てくることもあり得るが、初値が低迷した場合は「上場後のセカンダリー(流通)市場での値動きに注目したい」(アナリスト)との声が出ている。
●AI関連のJDSCや環境関連のGEIなども
一方、資金吸収額が小さい小型銘柄は、初値が飛ぶ展開が期待されている。20日にマザーズ上場の在宅訪問薬局サービスなどを手掛けるHYUGA PRIMARY CARE <7133> [東証M]や27日上場の入退室管理、監視カメラシステムのセキュア <4264> [東証M]の資金吸収額は10億円以下の見込み。24日のクラウドやDX関連のエフ・コード <9211> [東証M]が3億円強、21日に上場するSNSのアカウント運用を手掛けるラバブルマーケティンググループ <9254> [東証M]は5億円前後となりそうだ。
加えて、市場の注目度が高いIT関連では、AIや機械学習などを活用したアルゴリズムモジュール開発を手掛けているJDSC <4418> [東証M]は20日にマザーズに上場予定。サイバーセキュリティー関連では20日にグローバルセキュリティエキスパート <4417> [東証M]、22日に網屋 <4258> [東証M]が上場する。
また、環境関連では前出のリニュアブルのほか、産業廃棄物のリユース・リサイクルなどを手掛ける三和油化工業 <4125> [JQ]が23日にジャスダック市場へ、グリーン化学品を製造するGreen Earth Institute <9212> [東証M]が24日にマザーズに上場する。更に21日には東証マザーズ・外国株にシンガポールを本拠とするYCPホールディングス(グローバル)リミテッド JDR <9257> [東証M]が株式上場する。
■12月IPO銘柄一覧
コード・
上場日 上場市場 企業名 主幹事
12月2日 7131・JQ のむら産業 みずほ
10日 4414・東マ フレクト 大和
15日 7383・東1 ネットプロテクションズホールディングス 大和・SMBC日興
16日 4416・東マ True Data いちよし
16日 4415・東マ ブロードエンタープライズ みずほ
20日 7133・東マ HYUGA PRIMARY CARE みずほ
20日 4418・東マ JDSC 大和
20日 4417・東マ グローバルセキュリティエキスパート SMBC日興
21日 9257・東マ(外) YCPホールディングス(グローバル)
リミテッド 野村
21日 9254・東マ ラバブルマーケティンググループ SBI
21日 6524・東2 湖北工業 野村
21日 2585・東2 ライフドリンク カンパニー SMBC日興・大和
22日 9522・東マ リニューアブル・ジャパン SMBC日興
22日 9256・東マ サクシード SBI
22日 4419・東マ Finatextホールディングス 大和
22日 4258・東マ 網屋 岡三
22日 4256・東マ サインド 野村
22日 4255・東マ THECOO みずほ
23日 9255・東マ ZEALS 大和
23日 7134・JQ クルーバー みずほ
23日 4260・東マ ハイブリッドテクノロジーズ SBI
23日 4259・東マ エクサウィザーズ SMBC日興
23日 4125・JQ 三和油化工業 野村
24日 9259・東マ タカヨシ 野村
24日 9258・東マ CS-C SBI
24日 9212・東マ Green Earth Institute
みずほ
24日 9211・東マ エフ・コード SBI
24日 4263・東マ サスメド SMBC日興
24日 4262・東マ ニフティライフスタイル みずほ
24日 2993・東2 長栄 SMBC日興
27日 4264・東マ セキュア SMBC日興
27日 4261・東マ アジアクエスト みずほ
29日 4265・東マ Institution for
a Global Society 野村
(注)東1は東証1部、東2は東証2部、東マは東証マザーズ、JQはジャスダック、(外)は外国株
株探ニュース
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