トプコン、医・食・住のDX化で社会的課題を世界中で解決している創業90年のベンチャー企業、海外売上比率81%
創業90年のベンチャー企業経営!
平山貴昭氏(以下、平山):よろしくお願いいたします。本日は「創業90年のベンチャー企業経営!」と題し、トプコンの事業紹介をさせていただきます。
「創業90年」と「ベンチャー」、一見相反するフレーズをあえて使用している背景ですが、弊社は90年に渡り継承された伝統を大切にしながらも、変化のスピードが速い現代を生き抜くためには、失敗を恐れず挑戦するベンチャー的なスピリットを忘れてはいけないと考えています。そのような意味で、「創業90年のベンチャー企業経営!」をキャッチフレーズにしています。
本日の内容
平山:本日は、スライドに記載のとおり会社概要から事業内容までをご説明します。弊社はBtoB企業で事業内容が分かり難いところもありますので、初めてトプコンの事業内容を聞く方にとってもわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
I.トプコンの目指す方向
平山:具体的な会社紹介に入る前に、まずは弊社が目指す事業の方向性についてお話しします。
トプコンの目指す方向①
平山:弊社では「医・食・住の成長市場において、社会的課題を解決し事業を拡大する」を経営ビジョンに掲げています。「医・食・住」の「い」を「衣」ではなくメディカルの「医」に言い換えていますが、いずれにせよ人間が生活していく上で欠かすことができないエッセンシャルな要素です。
私たちはこの「医・食・住」各々の事業分野の社会的課題を解決することで豊かな社会づくりに貢献すると同時に、私たちも事業を大きくしていきたいと考えています。
トプコンの目指す方向②
平山:それでは、「医・食・住」それぞれにおいて、具体的にどのような社会的課題を解決していこうと考えているのかをご説明します。
「医」については、私たちは眼科の分野に事業を特化しています。現在、世界的な高齢化に伴い眼疾患が増加する一方で、世界の眼科医の人数は限られています。70億人以上の世界人口に対して眼科医は世界に20万人程度しかいません。高齢化の進行によって、従来顕在化していなかった眼病がどんどん増加しているのです。
「食」については、世界的な人口増加に伴う食料不足への懸念があります。また、温暖化や異常気象に伴う農作物への被害も増えており、今後、安定した食料供給が非常に重要になってくると考えています。
「住」については、世界的にインフラ需要が旺盛である一方、それに対応できる技能者が圧倒的に不足しています。また、日本でも気候変動によって災害が激甚化・頻発化しており、その被害を防ぐためのインフラ整備は非常に重要になってくると考えています。
トプコンの目指す方向③
平山:これらの社会的課題を私たちが持っているデジタルや自動化技術によるDX(デジタルトランスフォーメーション)で解決していきます。
例えば農業や建設現場では、DXソリューションによって、農作業や建設工事のプロセスを効率化し、生産性を飛躍的に高めたり、品質を向上させたりすることができます。
眼科医療の分野では、目の病気が増加に対処するため、病気の早期発見・早期治療の仕組みを新しいビジネスモデルとともに提供していこうと考えています。
トプコンの目指す方向④
平山:ご説明するまでもありませんが、「医・食・住」はそれぞれ非常に大きな産業で、世界の医療費やインフラ投資額は自動車産業の7倍から8倍と言われています。
ただし、そのような大きな産業にもかかわらず、デジタル化や自動化が最も遅れている産業なのです。ここに潜在的かつ非常に大きなビジネス機会があると弊社では考えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社は「医・食・住」の3つのセグメントで事業を進めているとのことですが、御社の売上高全体に占める割合はどのくらいになりますか?
平山:「医・食・住」はトプコンの事業そのものであり、売上高全体の99パーセント以上が「医・食・住」に関連する事業です。
II.会社概要・事業の変遷
平山:さて、次に会社概要をご説明します。
会社概要
平山:2022年3月期の連結売上高は1,764億円、従業員は5,248名です。グループ会社は74社あり、そのうち66社が海外企業です。「医・食・住」の「医」に当たるアイケア事業が売上高のおよそ3分の1を占め、残りの3分の2が「食・住」に当たるポジショニング事業です。
スライドの下半分は、簡単な年表になっています。弊社は、1932年、旧帝国陸軍省の要請で、測量機を国産化するため、「服部時計店精工舎」(後のセイコーホールディングス)の測量機部門を母体として作られた会社で、創業時は「東京光学機械」という名称でした。
戦後は民需転換を図るなかで、カメラや眼科用医療機器などへ事業の多角化を進め、日本で製造した光学機器を輸出するビジネスモデルで海外市場の開拓を推し進めました。トプコンが初めて海外拠点を設けたのは1970年代初頭で、アメリカ、ヨーロッパおよびアジアを中心に現在のグローバル化の礎を築き上げました。
90年の長い歴史の中で大きなターニングポイントとなったのが、1990年代の海外M&Aによるソリューション提案型企業への転換です。
1つの象徴的な企業買収をきっかけとして、海外の技術ベンチャーを中心としたM&A戦略により、母体であった測量機ビジネスから建設や農業といった新しい事業分野への進出に成功しました。そして、従来のハードの売切りモデルから、建設や農業のプロセスをDXで効率化するソリューション提案型ビジネスへと大きく転換していったのです。
事業の変遷
平山:この事業の変遷を売上高推移のグラフで表現するとこのようになります。1994年のターニングポイント以降、オレンジ色のICT自動化施工とIT農業分野のビジネスが急成長しているのがご覧いただけると思います。
ICT自動化施工は、建設現場における建設機械の自動化や、建設プロセス全体を効率化する新しい仕組みを提案する事業です。IT農業は、農機の自動運転や農作業のサイクルを効率化するソリューションを提案する事業で、海外を中心に事業化を進め、現在は日本でも非常に大きく伸び始めています。
薄い黄色の部分は創業来の測量機を中心とした事業で、今も安定した収益源となっているビジネスです。また、紫色の部分は眼科用医療機器のビジネスで、こちらも安定した成長を続けています。
1994年当時の売上高が約500億円でしたので、今年度の見通し2,000億円は、当時の約4倍規模に成長したことになります。チャートに描かれている国旗は私たちが実施してきた海外M&Aの一部で、実際には30社以上の企業買収やアライアンスを行ってきました。
坂本:グラフを見ると、かなりの国の企業に対しグローバルにM&Aを行っていますが、融合するのには相当な苦労があったのではないでしょうか?
平山:海外の企業を買収してインテグレートすることに苦労されている日本企業は沢山いらっしゃると思います。弊社の特徴としては、買収企業の規模はそれほど大きくなく、ユニークな技術やおもしろい発想力を持つベンチャー企業の買収がほとんどです。ただし、買収後、日本人を送り込んで日本的経営を押し付けるようなことはしません。
坂本:今までのよくある失敗例ですね。
平山:私たちは、買収企業の創業者やCTO(最高技術責任者)などキーとなるエンジニアや社員のリテンションに最も気を遣っています。
また、一度に買収するわけではなく、企業価値に応じて最初に一部を買収し、その後何年間かは元の経営陣や技術者に継続して事業を担ってもらい、目標に応じてインセンティブとして残価を支払うという方法です。これまですべてのM&Aを成功させたわけではありませんが、このPMIポリシーにより、非常に高い確率でM&Aを成功させてきました。
DXソリューションによる事業の成長
平山:先ほどのグラフを別の切口で表現するとこのようなグラフになります。私たちの基盤ビジネスであるハードウェアの売切りビジネスが「モノ」であり、「コト」であるDXソリューション提案事業を成長事業として新たに加えることで、売上が4倍に成長しました。このグラフでお伝えしたい点は、「モノ」も「コト」も両方とも重要で、弊社は、それらを両輪として事業成長を実現していることです。
III.トプコンの強み
平山:トプコンの強みについてご説明します。
高いグローバル性と技術力
平山:トプコンの強みの1つは高いグローバル性です。左側のグラフのとおり、昨年度は海外売上高比率81パーセント。また外国人従業員比率は70パーセント以上となり、特に技術者はその比率がより高くなっています。
もう1つは高い技術力です。先ほど90年の伝統を大切にしているとお伝えしたとおり、光学技術は今も弊社事業を支えるコア技術です。一方、海外M&Aで得た、衛星信号を利用した精密GPS受信機や、建機や農機を数センチメートル単位で制御するためのセンサーや油圧制御技術など、新しい技術をうまく融合させ、技術力を高めています。
グローバルネットワーク(開発・販売・生産)
平山:弊社は、販売拠点のみならず生産・開発拠点も広く海外に展開しています。特に海外技術ベンチャーの買収により、開発拠点が海外に分散しているのが特徴です。
経産省「DX銘柄2022」に選定
平山:弊社は経済産業省と東京証券取引所による「DX銘柄」に3年連続で選定されています。
私たちが取り組んでいる事業は、「医・食・住」各分野における既存作業プロセスを変革するDXビジネスそのものであると言えます。他の会社のように、業務プロセスの一部だけをDX化するというものではありません。建設工事や農作業などのプロセスそのものをデジタルやIoTの力でDX化するのが私たちの事業であり、その点が評価されているのではないかと思っています。
IV.事業の概要
平山:建設・農業・眼科医療の分野で私たちがどのようなことに取り組んでいるかを具体的にご説明します。
建設工事の工場化
平山:世界的なインフラ需要に対して技能者が圧倒的に不足していることが「住」の社会的課題であることは、冒頭にご説明したとおりです。
私たちが取り組んでいるのは、建設工事のワークフローの一元化です。建設工事のプロセスは測量→設計→施工→検査と進むのが一般的ですが、それぞれのプロセスをデジタル化することにより、熟練者の経験や勘に頼っていた作業を自動化するだけでなく、それまで分断されていた工程がネットワークで繋げられるようになり、ワークフロー全体の一元管理で効率を高めるという発想の実現が可能となります。いわゆる生産工程の自動化(ファクトリー・オートメーション)と似た概念を建設工事にあてはめたのが、建設工事の「工場化」です。
それを可能にしている「トプコンの独自技術」の一つが建機の自動化システムです。弊社は建機そのものは製造していませんが、後付けで建機をロボット化できるベンダーニュートラルなICT自動化システムを持っているのが強みです。
2つ目の「リアルタイム施工マネジメントシステム」は、一元管理により工事全体の施工効率を高めるようなソフトウエアを中心としたシステムです。
3つ目の「3次元計測技術」は、弊社が創業来培っている測量機をベースとした技術です。建機の自動化やワークフローの一元管理には測量の知識や技術が不可欠です。これら弊社独自の強みを活かすことで、工事全体の効率を高めるソリューションを提供できるのです。
建設工事の工場化(建機の自動化)
平山:それでは、次に私の説明を補足する動画をご覧いただきます。
工事現場にある建機にアンテナが備え付けられており、GPS衛星からの信号を受信します。建機の正確な位置情報と3次元設計データを比較することにより、瞬時にその差分を割り出し、設計データに合うよう油圧を制御することで、建機のオペレーターは、非常に簡単な操作だけで複雑な作業を正確に行うことが可能になります。
サイトマネジメントシステムは、現場監督がどこに居ても、すべての工事の進捗や建機の稼働状況などが一目でわかるような仕組みです。このような一元管理により、作業全体の生産性を高めることができるのです。
建設工事の工場化
坂本:建機の自動化は数センチメートル単位で施工を行っていくため、一般的なGPSではできないのではないかと思います。こちらはかなり高価なものなのでしょうか?
平山:おっしゃるとおりです。海外を中心にGPSの開発を行っていますが、私たちのアンテナや受信機に使われている技術は、カーナビや携帯電話に入っているものとは求められる精度レベルが異なり、開発にはGPSに関連する専門知識や莫大なコストと時間がかかっています。
坂本:普通のGPSではズレますよね。
平山:今は携帯などでも、GPSや通信技術を駆使して誤差1メートル程度で測定可能ですが、私たちが使っているGPSは測量用途のもので、数ミリメートルから数センチメートルという高い精度が求められます。
坂本:そのような建機は広範囲の工事で使うのが普通なのでしょうか? 狭いところでも使えるのか教えてください。
平山:狭いところでも使えますが、例えば都心で使うとなると、ビルが林立しているような工事現場では、衛星からの信号がビルなどに反射してしまい、GPSにとっては非常に厳しい環境といえます。そのような環境では、GPSに代えて測量機を位置情報センサーとして使えるシステムも提供しています。
坂本:ある意味アナログということですね。
平山:そのとおりです。1つの測量機に対して1つの建機の関係になりますが、その分精度は高く、上空の環境にも左右されず比較的小さな現場でも使えるシステムです。今日本で普及が始まっており、拡販に注力しています。
坂本:建機にはいろいろな種類があると思いますが、どの建機も自動化できるのでしょうか?
平山:原則的にはブランドや型式を問わず、ほぼできると思います。
坂本:これらの建機は技術者不足の解決策として用いられると思うのですが、先ほどの動画で離れたところからでも操作できるとご説明があったように、数値を入れれば非熟練者でも動かせるのですか?
平山:動かせます。建機メーカーなどは建機の無人化やリモート操作の開発に取り組んでおり、将来的にはそのような方向に行くかもしれませんが、現状では、非熟練者が熟練者並みの操作を可能とする、半自動化のシステムが主流です。
無人化する場合、安全を担保するためさまざまなセンサーやカメラを用意しなければならず、コスト的にも実用性は高くありません。私たちの提供するシステムは「オペレーターは必要だが、スキルが必要なわけではない」ため、オペレーターの人件費を抑えることができ、建設会社にとって大きなメリットになると思います。
農業の工場化
平山:世界的な人口増加に伴う食料不足を社会的課題としてとらえている「食」の分野も、先ほどの建設工事と同じ「工場化」がキーワードになります。
計画→種まき→生育→収穫という農業のプロセスをデジタル化することによって、データの一元管理が可能になります。弊社は農機の自動運転やデータの一元管理により、農業の工場化を実現し、生産性や品質の向上を目指しています。
トプコンが持つ独自技術の代表的なものが「オートステアリングシステム」で、これはトラクターや田植え機などの農機の自動運転システムです。安全のために作業者の方には乗っていただきますが、ハンドル操作がほぼ完全にフリーになります。
1990年代後半、欧米やオーストラリアなどの広大な農場で作業効率や収量最大化のため、このような技術が生まれました。弊社がこの事業に参入したのは、それより少し遅い2006年頃です。
坂本:農機の運転は、おそらくどんな熟練者でも曲がることがありますよね。
平山:それに加えて、平らな農場だけではないため、起伏があるとどのように走っているのかまったくわからなくなります。
坂本:通常の自動運転ではそうなりますよね。
平山:また、トラクターはただ走っているだけでなく種を植えたり、肥料や農薬などを撒いているのですが、フィールドの端まで行って折り返した際に、従来は作業漏れが出ないようにある程度オーバーラップさせて作業するのが通常でした。オートステアリングシステムを使えば、GPS衛星からの情報に基づき正確にトラクタを走らせることができるので、オーバーラップは不要となり、肥料などのコストの節減、また農薬であれば環境への負荷を減らすことにも繋がります。このような技術を使うことで農業の生産性は向上し、作業の負担軽減にも貢献します。
坂本:こちらは夜も動かせるのですか?
平山:はい、GPSで位置制御しているので夜間でも作業可能です。
坂本:それはかなり効率的ですね。
平山:また、弊社の「レーザー式生育センサー」は、穀物の健康状態をリアルタイムに計測、診断することができます。トラクターに取り付け、レーザーを当てて返ってくる光を測定することで穀物の育ちの良し悪しがわかり、自動で必要な場所に必要な量だけの肥料を散布することが可能になります。このように、以前は経験や勘に頼っていた農作業をデジタルデータで可視化することができるようになってきているのです。
農業の工場化(農機の自動化)
平山:農業についても、こちらの動画をご覧ください。動画ではトラクターでジャガイモ畑の畝たて作業をオートステアリングシステムにより、まっすぐに正確に作業する様子がご覧いただけます。
ハンドル操作をしなくても自動制御でまっすぐ走ってくれるため、運転に集中する必要はまったくなく、運転以外の作業に集中できます。
このシステムは、建機同様、さまざまなブランドや機種の農機に後付けが可能です。
眼健診(スクリーニング)の仕組みづくり
平山:世界的な高齢化に伴う眼疾患の増加に対する弊社の提案は、眼科クリニック以外でも眼健診ができる仕組み作りの創出です。これにより、病気の早期発見・早期治療に貢献できると考え、主に海外を中心に新規事業として取り組んでいます。
海外には大きな眼鏡チェーン店があります。眼科医が使用する非常に専門的な検査機械を弊社の技術によりフルオート操作を実現。わざわざ眼科医に行かなくても、身近にある眼鏡店で、眼病の健診ができる仕組みを提案しています。
その健診結果により、もし病気の疑いがあれば、その時に眼科専門医のいるクリニックで精密検査を受診すればよい訳です。医療効率も改善できます。
「フルオート健診(スクリーニング)機器」で眼底を観察できるシステムを持っているのが弊社の強みです。
眼健診(スクリーニング)の仕組みづくり
平山:こちらも動画をご覧ください。従来のスクリーニング機器は、ジョイスティックで瞳孔の位置に正確に合わせて撮影しなければなりませんでしたが、新しい機械ではタッチスクリーン上のボタンを押すだけで、簡単に眼底イメージが撮影できるようになっています。また、単純に眼底写真を撮るだけではなく、眼底の裏側の断層像を3次元で観察することもできます。
本来は眼科医が使う最先端の機械ですが、その操作を簡単にすることで、眼鏡店やAI自動診断にも活用できるという取り組みです。
V.業績/株価の推移
平山:業績や株価についてお話しします。
売上高・営業利益推移
平山:2022年度の売上高および営業利益は過去最高となる見通しです。過去10年間で売上高は倍増、営業利益は52億円から190億円で約4倍に増加しています。コロナ禍の影響は若干ありましたが、そこから回復し成長路線に戻ってきています。
株価と営業利益の推移
平山:株価の動向についてです。今年度は過去最高益を見込んでいますが、株価は未だ上場来高値の半値程度で、まだ上昇余地が残っていると考えています。
VI.株主還元
平山:株主還元についてです。
株主還元方針
平山:株主還元は、連結業績の伸長に対応して利益配当を行うことを重視し、安定的な配当を継続することを基本方針としています。配当性向の目安としては35パーセント以上としており、現状、好調な業績を背景に増配が続いています。
VII.トピックス
平山:トピックスについてご説明します。
SDGsへの取り組み - 110万トンのCO2排出量削減への貢献
平山:SDGsへの取り組みです。私たち技術により建機や農機を効率的に走らせることで、CO2削減に大きく貢献しています。私たちが生産過程でだすCO2排出量とは桁違いのCO2排出量削減が可能となり、弊社の事業および自動化の普及が拡大すればするほどCO2削減に貢献できます。
Topcon Report 2022(統合報告書)をご覧ください
平山:統合報告書でも非財務情報を中心に、弊社の環境やCSR等に関する様々な取組をご説明していますので、ぜひご覧ください。
サステナビリティページのご紹介
平山:弊社ホームページでもサステナビリティページを設けて情報発信しています。
個人投資家様向けページのご紹介
平山:個人投資家様向けのページを開設し、弊社の事業内容をよりわかりやすく丁寧に説明していますので、お時間のある時にぜひご覧ください。
質疑応答:日本および海外の農業従事者不足について
坂本:「日本では農業従事者の不足が常に問題になっていますが、海外でもそうなのでしょうか? また、アメリカを中心に人件費が非常に高騰しているという話があります。こちらは農業もそうなのでしょうか? もしそうであれば、機械の自動化により、そこを根本から乗り越えようという需要があったのでしょうか?」というご質問です。
平山:農業も建設も似たような傾向にあると思います。特に日本では高齢化の進行が非常に深刻です。農業従事者の平均年齢は67歳や68歳であり、その方たちは5年後や10年後にはほとんど引退していきます。したがって、日本では農業の担い手不足が1つのきっかけとなり、IT化を進めなくてはならない状況です。
一方で海外は、高齢化もあるとは思いますが、農業自体が家族経営的というよりも法人的に事業経営されています。そのような傾向が強いため、コストを下げるため設備投資によりIT化・自動化を行い経営を効率化させていくという考えが、強い傾向があり、2000年代初頭よりIT農業への取組が始まっていました。
かつ、足元の新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに労働者が逼迫し、農業における労働力不足もIT農業導入に踏み切るきっかけになっています。
質疑応答:円安に対する感応度について
坂本:円安はプラスとして考えてよいのでしょうか? 感応度がわかれば教えてください。
平山:弊社の事業の約半分はGPSをコア技術とした建機や農機の自動化ビジネスで、製造はアメリカを中心に行っています。残りの半分は光学技術をベースとした測量機器や眼科用医療機器で、日本を中心に製造販売しているため円安はメリットになります。為替感応度は営業利益ベースで、1円の変動でドルでは1.5億円から2.0億円、ユーロは0.7億円から1.0億円となります。
質疑応答:外国人投資家の注目度が高い理由について
坂本:御社は外国人投資家の持ち株比率が非常に高い時期や、アメリカの大きなファンドを持っている時期もあったと思います。この注目度が高い理由を教えてください。
平山:弊社は海外企業のM&Aをしながら、全く新しい市場や価値を創造していく日本企業として、非常にユニークな存在、というご評価をいただいていること。また、海外事業比率が高く、これらの特徴が、海外のグロース系を中心とした投資家の方からの期待や高い関心を集めている理由だと考えます。
質疑応答:東芝との関係について
坂本:2015年あたりまで東芝が筆頭株主だったと思います。売却当時のリリースでは協業関係継続とのことでしたが、現在の関係はどのようなかたちでしょうか?
平山:当時から東芝との取引額はあまり大きくありませんでした。2015年に弊社株を手放されて以降、直接的な事業の関係性もほとんどありません。
質疑応答:中期経営計画の売上利益について
増井麻里子氏:「中期経営計画で、3年後または5年後の売上利益の目標を教えてください」というご質問です。
平山:今年度が現中期経営計画の最終年度となり、2023年の春頃には次期中期経営計画について具体的な発表をする予定ですので、そちらを期待していただきたいです。3ヶ年計画だった現中期経営計画を新型コロナウイルス感染症の影響で1年延長して4ヶ年計画とした経緯があり、売上高は目標をクリアできる見込みで、利益についても射程圏内と言えます。
また、4年前に現中期経営計画を発表した際、「2025年度までに売上高を2,500億円にする」という長期計数ビジョンというものを掲げました。次期中期経営計画策定に際しては、この長期目標を念頭に置き、具体的に検討していくことになると思います。
質疑応答:為替と値上げの影響がなかった場合の売上高について
坂本:「第2四半期の決算について、為替と値上げの影響がなかった場合の売上高はどの程度だったのでしょうか? それらの影響を除いても2桁増収だったのでしょうか?」というご質問です。
平山:アメリカを中心に非常に強い需要が続いており、上期については為替の追い風を除いても2桁の増収を確保できています。
坂本:「下期も同じような状況でしょうか?」というご質問もありますが、なかなか難しいですよね。
平山:世間やニュースが世界的な景気後退への懸念を指摘していますが、私たちの受注動向は、それほど悪い状況にはなっていません。
質疑応答:アイケア事業の中国比率の高さについて
坂本:「アイケア事業は中国比率が高いことについて教えてください」というご質問です。
平山:中国比率が高いといっても、アメリカやヨーロッパ、日本と比べればまだ低いレベルです。ゼロコロナ政策の影響で、本年度は第1四半期にその影響で、ビジネスが減速傾向にあります。
質疑応答:サプライチェーンの逼迫による部材不足について
坂本:「物流逼迫や部材不足、工場稼働率の低下などの懸念が株価に反映されると思いますが、サプライチェーンの逼迫による部材不足はあるか教えてください」というご質問です。
平山:依然として部材不足によるビジネスへの影響は小さくありません。不足している半導体や電子部品の戦略的な備蓄、部材確保の継続努力に加え、設計変更等も行っていきます。一方、部材コスト上昇については、昨年来の売価への転嫁が順調に進み、だいぶ吸収できています。
質疑応答(要旨)
※以降は、企業提供の要旨になります。
Q. 食に関する今後10年計画を詳しく教えてください。
A. 開示できる具体的な10年計画というものはありませんが、農業における労働力不足や高齢化の進行を背景に、ロボットやICT技術を活用したスマート農業の世界的な広まりが更に加速していくと考えています。農機の自動走行を実現するオートステアリングシステムや光学技術を活用したレーザー式生育センサー、農業のプロセスを一元的にデジタルデータで管理する農業マネジメントシステム等の弊社独自ソリューションで、更なる事業拡大を目指しています。
Q. 御社の製品・サービスはドローンには関係するのでしょうか?ドローン関係での売上規模は期待できそうなのでしょうか?
A. ドローンそのものの製造販売はしていませんが、弊社のトータルステーションを使ってドローンを追尾し正確な位置計測を行う「UAV空中測量システム」を開発、作業現場での大幅な生産性向上に貢献しています。今後もUAV測量関連の売上拡大を期待しています。
Q. M&Aの現在決まっている案件はどのくらいあるのでしょうか。また、今後の買収の頻度はどのくらいと想定されていますか。
A. 弊社では1994年以降、30件以上のM&Aや事業提携を実施してきました。今後の買収計画に関し具体的な言及は控えさせていただきますが、コロナ渦からのビジネス活動回復に伴い、今後M&Aのペースも上がってくる可能性があります。
Q. 外国人技術者が多いようですが、技術が他に流れる心配はないのでしょうか。
A. 弊社では海外の技術力が高いベンチャー企業を数多く買収していますが、買収後のキー人材のリテンションには特に注意を払っています。優秀な経営者や技術者を維持するためのインセンティブパッケージや様々な施策により、高いモチベーションで活躍し続けてもらうことで、買収後のPMIや技術流出の防止につなげています。
Q. 建機の自動化技術は建機メーカーもつくれるような気がするのですが、脅威にならないのでしょうか。
A. 建機の自動化技術は、GPSや測量機で計測した高精度な位置情報と3次元設計データをベースに建機の操作をサポートする技術です。その為、計測した位置情報に基づく高度な建機制御技術のみならず、3次元設計データの作成や施工後の検証においても測量に関する専門的な知見が不可欠となります。弊社は創業来90年間測量機の製造販売を手掛けており、建機メーカーが独自に同様な知見や経験を積み上げることは容易ではないと考えます。また、この自動化技術の普及はまだ黎明期であり、仮に競合相手が増えたとしてもマーケットが大きく拡大していく中で、弊社ビジネスも大きな成長が期待できる考えています。
Q. 自己資本比率が45%、有利子負債も400億円もあり、財務内容がやや良くないように思います。
A. 財務の健全性については、デットエイクイティレシオを重視しており、1倍を下回るように経営しています。2022年9月末時点での数値は0.6倍となっており、健全な状況にあると認識しています。
Q. 大手ゼネコンに対して貴社の杭ナビの優位性はどのように考えておられますか?また国内でのICT関連の展開策が定まっているようでしたら教えてください。
A. お陰様で杭ナビの売上は大変好調に推移しております。杭ナビを使えば、従来2名で作業していた現場での杭打ち作業が1名で、且つよりスピーディーに行えます(労働生産性は2倍以上)。今のところ、競合相手から脅威となる商品も出て来ておらず、当面は売上の拡大が続くと考えています。国内のICT自動化施工ビジネスについては、国土交通省が推進するi-Constructionによる後押しに加え、小規模工事に適した廉価版ICT建機システムの投入による普及促進、弊社独自のトレーニングセンターを活用した体験会などを通して、日常的に潜在ユーザーへの啓蒙活動を図っています。
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