サカタインクス<4633>は日本で3位、北米で3位、世界で4位規模の大手印刷インキメーカーである。1896年の創業以来、120年以上の歴史の中で培われた環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発力・品揃え、及び製品の高い信頼性・品質力を強みとしている。そしてインキの開発・生産で培ってきた基盤技術を、機能性材料事業に応用展開している。グローバル展開と環境配慮型高機能・高付加価値製品の拡販で、中期的に収益拡大基調と一段の高収益化が期待される。
1. 印刷インキ事業を主力としたグローバル展開
紙媒体用インキ(新聞インキ、オフセットインキ)及びパッケージ用インキ(フレキソインキ、グラビアインキ、メタルインキ)を製造・販売する印刷インキ事業を主力として、印刷製版用材料や印刷関連機器を仕入・販売する印刷用機材事業、インクジェットインキ、トナー、カラーフィルター用顔料分散液、機能性コーティング剤などを製造・販売する機能性材料事業、その他事業(日本市場向け化成品等販売事業、ディスプレイ関連事業、色彩関連機材事業)をグローバル展開しており、環境配慮型高機能・高付加価値製品拡販によって、市場拡大・開拓余地の大きいアジアと北米が収益柱に成長している。
2. 2017年12月期は原材料価格上昇などで営業・経常減益だが純利益は増益
2018年2月14日に発表した2017年12月期の連結業績は、売上高が前期比4.0%増の157,302百万円、営業利益が同15.3%減の8,573百万円、経常利益が同5.2%減の11,249百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.0%増の8,383百万円だった。インキ販売数量の増加、機能性材料の好調、為替影響などで増収だったが、インドにおける新たな物品・サービス税(GST)導入に伴う顧客の買い控えが第3四半期(7月—9月)まで影響したこと、北米における新規顧客や新ラインを増設した顧客に対する販売が、当初の計画よりも遅れたことなどで売上高が伸び悩み、原材料価格(特に酸化チタン)の上昇や人件費の増加などで営業利益と経常利益は減益での着地となった。親会社株主に帰属する当期純利益は特別利益の計上などで増益だった。
3. 2018年12月期は減益予想だが下期から回復基調で上振れ余地
2018年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比4.6%増の164,500百万円、営業利益が同12.5%減の7,500百万円、経常利益が同15.6%減の9,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同21.3%減の6,600百万円としている。パッケージ関連を中心に販売数量が増加して増収予想だが、原材料価格上昇などで減益予想としている。ただし上期は販売数量がやや伸び悩み、原材料価格の上昇、人件費の増加、減価償却費の増加が利益を圧迫するが、下期は拡販が進展し、販売数量増加に伴う稼働率上昇効果、アジアの一部地域における販売価格改定の効果も寄与する。なお2018年3月13日に日本のグラビアインキの価格改定をリリースしている。営業利益は上期をボトムとして下期から回復基調だろう。そして通期ベースで会社予想に上振れ余地がありそうだ。
4. 環境配慮型高機能・高付加価値製品の市場は国内外で拡大基調
国内印刷インキ市場は新聞・雑誌等の紙媒体印刷物の減少で成熟イメージが強いが、新聞インキ市場は国内印刷インキ市場全体の約1割を占めるに過ぎず、全体に与える影響は小さい。そして市場の約4割を占めるグラビアインキ市場が堅調に推移し、フレキソインキ市場も拡大している。特にパッケージ用インキ分野では、世界的に環境配慮型高機能・高付加価値インキへのシフトが進展して市場拡大基調である。そして主に新興国では人口増加や経済成長を背景として印刷インキ市場全体が拡大している。アジアや北米を中心に環境配慮型高機能・高付加価値製品へのシフトも進展するため、市場拡大・開拓余地は大きい。
5. 新中期経営計画2020を策定
2017年11月に3ヶ年の「新中期経営計画2020」を策定し、目標数値に2020年12月期の売上高195,000百万円、営業利益13,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,800百万円、ROE10%以上を掲げた。コア事業である印刷インキ事業及び機能性材料事業の拡大、コア事業で培った技術の応用展開による新規事業の創出を推進する。環境対応型製品へシフトする流れが強まっており、世界的に市場拡大・開拓余地は大きい。先行してグローバル展開した実績、各国の地域特性に合わせて製品投入するノウハウ、環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発・品揃え・高シェアが強みであり、グローバル展開の加速と環境配慮型高機能・高付加価値製品の拡販で、中期的に収益拡大基調と一段の高収益化が期待される。
6. 連結配当性向20%~30%目安
連結配当性向は20%前後から30%前後の範囲を目安としている。2017年12月期の配当は1株当たり年間30円(第2四半期末14円、期末16円)とした。2016年12月期の年間28円(うち記念配当2円)との比較で2円増配である。配当性向は21.0%だった。そして2018年12月期の配当予想は、2017年12月期と同額の1株当たり年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。予想配当性向は26.5%である。
■Key Points
・印刷インキ事業を主力としたグローバル展開
・2018年12月期は減益予想だが下期から回復基調で上振れ余地
・強みとする環境配慮型高機能・高付加価値製品の市場は国内外で拡大基調
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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