2. 新中期経営計画2020を策定
2017年11月に3ヶ年の「新中期経営計画2020(2018年−2020年)Innovation for the Future~未来に向けた革新~」を策定した。
基本方針は「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」をビジネステーマとして、情報メディアの多様化、食の安心・安全意識の高まり、環境規制の強化を背景とした印刷市場の変化に柔軟に対応し、CSR活動の充実や環境経営の推進を図ることにより、企業体質・経営基盤の強化に取り組むとしている。そしてコア事業である印刷インキ事業及び機能性材料事業の拡大、コア事業で培った技術の応用展開による新規事業の創出を推進する。
目標数値には2020年12月期の売上高195,000百万円、営業利益13,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,800百万円、ROE10%以上を掲げた。新規事業の数値は織り込んでいない。前提為替レートは1米ドル=112円である。
印刷インキ事業の成長戦略は、コア施策として既存印刷市場領域における環境配慮型製品の開発・投入、生産性向上製品の拡販、地域密着型製品の拡販を推進する。そして3ヶ年で先進国市場において10%成長、新興国市場において40%成長を目指す。拡販戦略製品は、環境配慮型製品(水性フレキソインキ・グラビアインキ、ノントルエン・ノンVOCインキ、ハイソリッドインキなど)、植物由来材料製品(ボタニカルインキ、ライスインキなど)、生産性向上製品(高感度UVインキ、EB硬化型インキなど)、地域密着型製品(グラビアインキ、新聞・オフセットインキなど)としている。
機能性材料事業の成長戦略は、デジタル印刷材料分野では産業用インクジェットインキのグローバル展開、未参入市場(建材・壁装材、ホーム&テキスタイル、アパレルなど)への展開、画像表示材料分野では最先端スペックに合致したカラーフィルター用顔料分散液の開発、中国市場への積極展開、機能性コーティング剤の分野では新機能性材料(ガスバリア性コーティング剤、シロキサンポリマー材料、CNT分散体など)の開発・市場投入を推進する。
新規事業の創出では、住宅・建築、生活環境、エネルギー、オートモーティブ、エレクトロニクスなど、既存の印刷業界以外の分野をターゲットとして、低炭素型印刷用インキ、エネルギー硬化型インキ、新規ディスプレイ材料、新規センサー用材料、機能性分散液、光学・エネルギー着色剤などの開発・市場投入を推進する。
セグメント別(連結調整前)の目標数値は、印刷インキ・機材(日本)が売上高59,900百万円で営業利益2,600百万円、印刷インキ(アジア)が売上高46,600百万円で営業利益3,900百万円、印刷インキ(北米)が売上高52,700百万円で営業利益2,500百万円、印刷インキ(欧州)が売上高9,800百万円で営業利益500百万円、機能性材料が売上高17,400百万円で営業利益2,400百万円、その他が売上高16,200百万円で営業利益400百万円、調整額が売上高マイナス7,600百万円で営業利益プラス700百万円としている。
重点施策としては、印刷インキ・機材(日本)では環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開、TPM活動の深化と物流最適化によるコスト削減など、印刷インキ(アジア)では地域密着型製品の開発推進とパッケージ分野のさらなる拡大、環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開など、印刷インキ(北米)ではフレキソ・グラビア・缶用インキの拡販、パッケージ関連設備の増強、研究開発拠点集約による開発強化など、印刷インキ(欧州)では拠点再構築による生産・販売体制の強化、ブランド力の強化など、機能性材料事業では差別化製品のタイムリーな開発、戦略的パートナーシップの強化などを推進する。
設備投資計画は3年累計投資額を18,000百万円(印刷インキ事業8,000百万円、機能性材料事業3,900百万円、国内工場再構築関連1,600百万円、通常投資他4,500百万円)としている。地域別には日本8,500百万円、アジア4,300百万円、北米4,700百万円、欧州500百万円としている。減価償却費は3年累計で14,100百万円の想定である。
なお2018年12月期の地域別投資計画及び設備投資内容は図表のとおりである。日本では滋賀工場の新聞・オフセットインキ設備増設が2018年1月完了した。本格稼働により、下期の収益改善に寄与する見込みだ。北米ではウエストシカゴ研究所の拡張・充実が2018年完工予定である。印刷インキとインクジェットインキの研究開発拠点を集約して開発を強化する。ベトナムではリキッドインキの第2工場が2019年完工予定、中国ではオフセットインキの第2工場が2019年完工予定である。いずれも一段の拡販を推進する。
また成長を加速させるための総投資枠として28,000百万円を想定しており、その内訳を設備投資計画18,000百万円、戦略的投資枠10,000百万円としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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