2. サービス別売上動向
(1) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前年同期比0.8%増の266百万円と2年ぶりに増収に転じた。主力サービスである「はてなブログ」を中心に、登録ユーザー数が前期末比81万人増の1,121万人と順調に増加した。また、2021年7月期第2四半期末の月間ユニークブラウザ(UB)数も1.47億UBと2020年7月期末の1.40億UBから増加に転じるなど、底打ち感が出てきている。
売上高の大半を占める広告収入については、コロナ禍による広告出稿の冷え込みとそれに伴う広告単価下落の影響で、2020年4月以降低迷していたが、2021年7月期第2四半期は広告出稿の回復により前年同月比で2ケタ増と復調しており、今後も回復基調が続くものと予想される。また、個人向け有料課金サービス「はてなブログPro」や2020年9月よりサービスを開始した法人向けのスモールビジネスプラン「はてなブログBusiness」については着実に契約件数が増加しており、課金売上はコンテンツプラットフォームサービス売上のなかで割合が高くなってきている。今後も有料サービスの機能拡充を図りながら契約件数を増やし、広告収入以外の収益基盤として育成していく方針となっている。
(2) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前年同期比30.5%減の310百万円となった。企業のオウンドメディアとなる「はてなブログMedia」の運用件数は前期末比4件増(新規開設13件、解約9件)の108件と着実に増加したものの、コロナ禍による景気悪化懸念から、顧客企業のオウンドメディアを拡散するための広告出稿が大きく減少したことが響いた。最近は人材採用系のオウンドメディアが増えていたこともあり、企業の採用抑制の動きが強まるなかで、オウンドメディアにかける予算も絞り込まれたものと思われる。メディア当たり平均売上高指数で見ると、コロナ禍前の2020年2月を100とした場合、同年7月に73まで落ち込み、2021年7月期第2四半期累計平均で92まで回復させることを目標としていたものの89と若干未達に終わっている。
なお、新規契約獲得に向けた新たな取り組みとして、「採用オウンドメディアプラン」のサービス提供を開始している。同プランは、自社で求める人材の獲得や働き方改革に関する情報発信、並びに社員インタビューなどをコンテンツとし、採用マーケティングの一環として素早く安価にオウンドメディアを立ち上げたい企業向けのプランとなる。今後、コロナ禍が収束し、人材採用の動きが活発化してくれば新規契約件数の増加や、メディア当たり売上単価の上昇につながっていくものと予想される。
(3) テクノロジーソリューションサービス
テクノロジーソリューションサービスの売上高は前年同期比13.4%増の610百万円となった。サーバー監視サービス「Mackerel」の顧客数並びにマンガビューワ「GigaViewer」の搭載メディア数が順調に拡大したことが増収要因となった。
「Mackerel」の顧客数については、前期末比9.9%増加しており、通期目標に対する進捗率は54%と会社計画を上回るペースで増加している。AWS(アマゾンウェブサービス)のパートナー制度「AWS パートナーコンピテンシープログラム」において「AWS DevOps コンピテンシー」認定を国内企業で初めて取得したほか、「AWS Partner Network(APN)Award2019」において「APN Technology Partner of the Year 2019 - Japan」を受賞するなど、AWSユーザーのなかでサーバー監視ツールとしての認知度が向上し、顧客数の増加につながっている。また、2020年9月には新機能として「Google Cloudインテグレーション」の提供を開始している。この機能によって、「Mackerel」を使うことで簡単にGoogle Cloud連携対象サービスの監視ができるようになるため、Google Cloudを利用する企業の導入も今後拡大していくものと予想される。
「GigaViewer」については、新たに(株)芳文社の「コミックトレイル」、(株)ブシロードメディアの「コミックブシロードWEB」の2メディアに採用され、2021年1月末で合計11社・13メディアに採用が進んだ。また、ユーザー向けの各種機能に加え、サービス提供者の運用コスト削減に貢献する管理機能の継続的な機能開発の提供により、売上は堅調に推移した。さらに、2020年11月に「少年ジャンプ+」に提供する「GigaViewer」のストア機能を拡張し、電子版「週刊少年ジャンプ」の定期購読対応を可能としたほか、同年12月には「コミプレ」に対して「GigaViewer」を搭載したマネタイズ支援機能「ストア機能」の提供を開始している。広告運用も含めた各種ソリューションを提供することで、開発・運用料のみならず、レベニューシェア(広告・課金収益等)による収益基盤も着々と構築しつつある。
そのほか、受託開発案件は大型案件こそなかったものの複数の案件を売上計上していることに加え、保守運用サービスも売上増に貢献した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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