アセンテック<3565>が強みを持つITインフラ分野においては、サイバーセキュリティ対策として仮想デスクトップ需要が引き続き拡大すると見られる。今般のコロナ禍において加速的に普及したテレワークにおいては、VPN(Virtual Private Network)接続が多い。だがVPN接続にはセキュリティ面・運用面の課題があり、コロナ禍収束後もテレワークはワークスタイルとして定着することが見込まれるなか、これを解決するための次のフェーズとして企業の設備投資が見込まれる。こうしたことを背景に、「リモートPCアレイ」の採用が広がるほか、先進的なセキュリティモデルとして開発を進めているセキュアクライアント製品「ゼロトラスト・シンクライアント」への成長期待にもつながると弊社では考えている。
これまでセキュリティと言えば、外側から侵入を試みる不正アクセスやマルウェア等を防ぐ考えが主だったが、VPNは自宅やリモート拠点等で使用しているパソコンが企業のネットワークに入る形となるため、自宅のパソコンが感染すれば、これを踏み台に企業のネットワークに侵入することが容易となる。こうしたリスクも踏まえた幅広い観点からのセキュリティ対策が必須となることなどを背景に、「Resalio Lynx 300/700」等の製品の需要は、今後ますます高まることになると弊社では考えている。
同社においても、DXを高度なセキュリティで実現するため、「Resalio Lynx」を中心に製品開発を強力に推進するほか、仮想デスクトップ案件増に伴い、エンジニアの採用・育成を強化している。また、「リモートPCアレイ」の需要増と販売パートナー急拡大に対応した販売体制を構築する対応を加速させるとしている。IT業界において人材は争奪戦となっており、人材確保は困難を極めている。ただ、同社では一気に増やすことはせず、適性等を見極め長期的に戦力となる人材を育ていく方針であり、受注機会の取りこぼしよりも、信頼される製品の提供を第一に考えている。この企業姿勢があるからこそ、高いセキュリティレベルが必須となるメガバンクにおける同社製品の採用につながった面はあるだろう。そのため、需要ニーズの高まりによる一時的な急成長ではなく、長期的な安定成長を続ける企業体と言えると弊社では考えている。
また同社は、宮城県・女川町役場において、「リモートPCアレイ200」を6台(端末180台相当)の導入実績を持つ。総務省による情報セキュリティ対策の強化や、テレワーク等の新たな時代の要請を踏まえた「三層の対策」の見直しなど、将来へのロードマップを考慮した庁内情報システム再構築に対応することが目的である。女川町役場では、2020年4月から仮想化共通プラットフォーム上に画面転送やファイル交換などのサービスを再構築するプロジェクトのフェーズ1に着手しており同社では同年9月から新サービスの提供を開始した。同社製品の導入によって庁内LGWANネットワークのPCからインターネットに安全にアクセスすることが可能となり、短期間かつ低コストで新システムへの移行を実現した。足元では地方自治体において「リモートPCアレイ」の採用が加速しており、今後も自治体における環境整備の動きが広がる可能性は高いと弊社では考えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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