<言葉の意味は、もう底だと思えるようなときは、まだ下値があるのではないかと一応考えてみなさい。反対に、まだ下がるのではないかと思うときは、もうこのへんが底かもしれないと反省してみてはどうか――というものだ。
つまり、微妙な相場の変化に対して、自分だけの独善的な判断を振り回すことが、いかに危険であるかを説いた言葉といえよう>
僕も始終この言葉を念仏のように唱えている。確かに、「まだはもうなり もうはまだなり」なんだけど、さすがにそろそろいいころだろう。株式の買いタイミングである。 足元の相場が軟調な展開になっているのは、言わずもがな、米国の債務問題を巡る議会の対立だ。何が起き、そして今後どうなるかについては、こちらのレポートに詳しくまとめられているので参照してほしい。(10月9日付け「米国経済の今を読む:米国で今、何が起きているのか?~政府機関閉鎖と投資機会」)
端的に言って、米国議会のドタバタ騒ぎは茶番劇であり、政治ショーである。与野党ともチキンレースを繰り広げているだけで、最終的に妥協することは明白である。それしか解決策がないからである。その解決に向かうプロセスは不透明だが、それらの予想は政治評論家に任せておけばよいのであって、僕らまでそれに振り回される必要はない。
問題はいつ妥結するかのタイミングで、それが見えないから市場は不安心理が高まり軟調になっている。逆説的だが、市場がこの問題をそれほど深刻にとらえていないから米国の政治家たちも延々と茶番劇を演じてきたという面もある。
事実、ナスダック総合指数は米国連邦政府機関が閉鎖された1日にITバブル崩壊以来の高値をつけた。さすがに今週に入って2日続落だが、先週末までほぼその高値圏を維持していた。フィラデルフィア半導体株価指数も先週末が高値である。さらに言えばスペインやイタリアなど南欧諸国の株価指数も先週末に年初来高値をつけている。ダウ平均が下げたといえ、それは9月下旬につけた史上最高値からわずか5%強である。
でも、まあ、ようやく「催促相場」のような感じが出てきた。恐怖指数として知られるVIX指数(ボラティリティ・インデックス)は昨日20に上昇、警戒ゾーンに入ってきた。ダウ平均は年初の安値から最高値までの上昇幅に対して約1/3強を失い、フィボナッチ・リトレースメントの61.8%の水準まで下げた。半値押しは14500ドルの水準だが、いくらなんでもそこまでいかないだろう。200日移動平均が下から伸びてきており、14720ドルの水準にある。最終的にそこはサポートされるだろうが、市場はまず200日線を試しにいくような展開が予想される。
そうなれば政治家もさすがに真剣になるだろう。市場の下落が与野党の歩み寄りを誘う。
このレポートでも再三、述べていることだが、相場にとっては「分からないこと」がリスクである。市場は不透明性、不確実性を嫌うのだ。その意味ではバーナンキFRB議長の後任人事がイエレン副議長に決まったことは、不確実性がひとつ払拭された。リスクがひとつ消えたということである。
もうひとつ、僕の好きな格言がある。「相場のことは相場に聞け」である。昨日の日本株相場は、米国株安・円高を受けて売り先行で始まるも、売り一巡後は切り返した。今日も午前10時現在、同様の展開になっている。昨日書いた「マーケットメール・夕刊」から引用しよう。
<業種別上昇率の上位には、電力、海運、その他金融、証券、不動産などが並びました。こうした業種を眺めると、目先のリスク回避も一巡し、今日はその反動からリスクを取る投資行動が戻った兆しが感じられます>
今日も不動産、海運が業種別上昇率の上位に来ている。鉱業、石油、非鉄など資源関連も高い。昨日発表された米非鉄大手アルコアの決算が黒字転換し、利益が市場の予想を上回ったことを好感したものだろう。これらはリスクオン相場の代表業種である。相場はじわりとリスク選好に傾きつつあるようだ。
日本株が昨日、今日と底堅い展開になっている背景は外国人の買いだろう。押し目買いが入っている模様だ。グラフは市場筋推計による外資系6社の寄り付き前注文動向だ。今朝は売り1160万株、買い2430万株、差し引き1270万株の大幅買い越しとなった。昨日も1000万株を超えた。これほどの注文が入るのは、この夏枯れ相場以来初めてである。
昨日のレポートで指摘した通り、ドル円は200日移動平均がサポートラインになっている。日本株の底堅さは、円高に目先歯止めがかかっていることが背景なのかもしれないが、もっと深読みすれば、相場の重石である米国議会の混乱が急転直下、収束に向かうカウントダウンを始めているのかもしれない。