「解散は買い。投開票日までは株高が続く。但し、選挙後は材料出尽しで相場は下落」
政権交代の期待から買われ、選挙が終われば材料出尽しで下落というのは確かにイメージに合う。衆院選による政権交代を思い出せる範囲で挙げれば、1993年の自民党から日本新党を中心とする連立政権の樹立、そして前回2009年の自民党から民主党への政権交代の2回だ。この2つのケースは、材料出尽しというより失望売りと言ったほうがよいだろう。
いまさらながら言うと、東京市場の日本株相場を動かしているのは、売買シェアで6~7割を占める外国人投資家である。彼らは政権交代により「日本が変わる」ことを期待して買いを入れてくる。いや、政権が交代しなくても、日本が変わる可能性を見れば選挙後も買いは続く。例えば2005年のいわゆる「郵政解散」による衆院選。小泉チルドレンらが躍進して自民党が圧勝したケースだ。そこから外国人買いに弾みがついて、その年の年末にかけて日本株式市場がミニバブル的な様相を呈するに至ったことは記憶に新しい。この選挙では自民・公明の与党圧勝で政権交代は起きなかったが、反・小泉派が駆逐され実質的に政治が変わったと受け止められた。そして何よりも小泉首相による構造改革で日本が変わる期待が台頭したことがその後の株高の背景となったのである。
今回はどうか?自民党を中心とした連立政権への交代が予想されるなか、安倍自民党総裁よる積極的な金融緩和論に市場のスポットが当たっている。今起きている株高・円安の背景は端的に言って金融緩和期待である。もうすこし補足すれば金融緩和によるデフレ脱却期待といってもよいだろう。一番根幹にあるのは、日本の金融政策が大転換することへの期待だ。もちろん、政権の座に安倍氏が就くことで、その可能性が高くなる(と市場は思っている)わけだから、「政権交代期待相場」と言えなくもない。しかし、市場が期待しているのは安倍晋三という一人の政治家のリーダーシップでもないし、自民党という政党に対してでもない。民主党政権が終わることへの安堵感はあるかもしれないが、「新しい政権に対する期待で株が買われている」というのは、ちょっとニュアンスが違う気がする。
相場は、もっと冷静だ。日本の経常収支の悪化など円高是正に向けたファンダメンタルズの変化があった。遅かれ早かれ日銀総裁の任期終了を見据えた後任人事が取沙汰されるタイミングでもあった。そこに解散・総選挙と安倍氏の積極発言が重なった。それが円安を加速させ、株価上昇に拍車をかけたというのが本当のところではないか。
安倍氏の発言だけで買われた相場ではない。だから今回は選挙が終わって材料出尽しで相場下落というシナリオは示現しないと考える。更に言うと、「選挙」「政権交代」「一段の緩和」という、久しぶりの国内要因に目を奪われがちだが、この間にグローバル景気の底打ち感もだいぶ明瞭になってきた。12月16日の衆院選挙が終わる頃には、世界的なリスクオン・ムードがもっと高まっているだろう。