資源・新興国通貨の2024年6月までの展望

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最新投稿日時:2023/12/25 13:00 - 「資源・新興国通貨の2024年6月までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2024年6月までの展望

著者:八代和也
投稿:2023/12/25 13:00

豪ドル

RBA(豪中銀)は23年11月に0.25%の利上げを行った後、12月は政策金利を4.35%に据え置きました。

豪州のインフレ率は依然として高く、23年7-9月期CPI(消費者物価指数)は前年比5.4%と、上昇率は4-6月期の6.0%から鈍化したものの、RBAの目標である2~3%を大きく上回りました。RBAは12月の政策会合時の声明で「金融政策をさらに引き締める必要があるかどうかは、データとリスク評価次第」とし、追加利上げの可能性を残しました。

一方で、豪州の23年11月失業率は3.9%と、22年5月以来の高水準となりました。また、豪州にとって最大の輸出先である中国の景気の先行き不透明感が強まっています。FRB(米連邦準備制度理事会)など主要中銀が24年に利下げに転じれば、その中でRBAが利上げするのは難しいと考えられます。

市場では、RBAの次の一手は利下げとの見方が大勢。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、24年6月に利下げが開始されて、24年末までに合計0.50%利下げが行われるとの見方が有力です(23/12/20時点)。

FRB(米連邦準備制度理事会)も24年に利下げを行うとみられます。注目はRBAとFRBのどちらの利上げ幅が大きくなるか?になりそうです。FRBの利下げ幅の方が大きくなる場合、米ドル安圧力の方が強くなって、豪ドル/米ドルはそれほど下がらない可能性があります。

豪ドル/円に関しては、日銀の金融政策にも注目です。日銀がマイナス金利の解除など金融緩和策の修正へと動けば、円が全般的に強含むとともに、豪ドル/円は軟調に推移するかもしれません。

豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオン(リスク選好)の動きが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円の支援材料になりそうです。
***
【豪ドル/NZドル】
RBAとRBNZ(NZ中銀)はいずれも、追加利上げに含みを持たせています。市場は両中銀の利上げサイクルは終了し、次の一手は利下げと予想しています。金融政策面からみれば、豪ドル/NZドルには明確な方向感が出にくいと考えられ、1.05000NZドル~1.11000NZドル(22年11月から続くレンジ)の動きが想定されます。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)は追加利上げをするか。いつ利下げに転じるか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
・資源(主に鉄鉱石)価格の動向(資源価格の下落は豪ドルの下落要因)。
・中国経済の動向。中国経済の減速は豪ドルにとってマイナス材料。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は23年5月に利上げを実施した後、11月まで4会合連続で政策金利を5.50%に据え置きました。

RBNZは11月の会合時の声明で、「インフレ圧力が想定以上に強まれば、追加利上げが必要となる可能性が高い」と表明。追加利上げの可能性を残しました。

NZの23年7-9月期CPI(消費者物価指数)は前年比5.6%と、上昇率は4-6月期の6.0%から鈍化したものの、RBNZの目標である1~3%を大きく上回りました。一方で、NZの景気はRBNZの想定以上に減速しています。7-9月期のGDP(国内総生産)は前期比マイナス0.3%と、RBNZが23年11月の金融政策報告の中で示した見通し(プラス0.3%)に反してNZ経済はマイナス成長に陥りました。

これまでの利上げの累積効果が今後さらに出てくると考えると、RBNZの利上げサイクルは終了した可能性があります。RBNZの次の一手は利下げとの見方が大勢であり、RBNZの金融政策スタンスとはかい離があります。市場の金融政策見通しを反映するOISによれば、利下げは24年5月に開始されて、24年末までに合計0.75%の利下げが行われるとの見方が有力です(23/12/20時点)。

RBNZの利下げ観測はNZドルにとってマイナスになると考えられるものの、FRBも24年に利下げを行うとみられます。RBNZよりもFRBの利下げ幅の方が大きくなる場合、米ドル安圧力の方が強くなって、NZドル/米ドルはそれほど下がらない可能性があります。

NZドル/円に関しては、日銀の金融政策にも注目です。日銀がマイナス金利の解除など金融緩和策の修正へと動けば、円が全般的に強含むとともに、NZドル/円は軟調に推移しそうです。

豪ドルと同様にNZドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まることはNZドルにとってプラスです。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は追加利上げをするか。いつ利下げに転じるか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。リスクオンはNZドルの上昇要因。
・中国経済の動向。中国経済の減速はNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格の動向(乳製品価格の上昇はNZドルの上昇要因)。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は23年7月に利上げを行った後、9月・10月・12月の3会合連続で政策金利を5.00%に据え置きました。

カナダの11月CPI(消費者物価指数)は前年比3.1%と、BOCが目標とする2%を引き続き上回りました。一方で、これまでの利上げの影響にあってカナダの景気は減速しており、7-9月期のGDP(国内総生産)は前期比年率マイナス1.1%でした。これまでの利上げの影響は今後さらに出てくると考えると、BOCの利上げサイクルは終了した可能性が高そうです。

市場では、BOCの利上げサイクルはすでに終了したとの見方が大勢。市場の関心は、BOCが利下げを開始するタイミングとそのペースへと向いています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、利下げは24年4月に開始されて、24年末までに合計1.25%の利下げが行われるとの見方が有力です(23/12/20時点)。

一方で日銀は、マイナス金利の解除など金融緩和策の修正へといずれ動くと考えられます。BOCと日銀の金融政策の方向性を踏まえると、カナダドル/円には下押し圧力が加わりやすくなりそうです。

米ドル/カナダドルについては、明確な方向感が出にくいかもしれません。FRB(米連邦準備制度理事会)も24年に利下げを開始するとみられ、BOCとFRBの金融政策の方向性に差はないと考えられるからです。22年9月から続く、おおむね1.30000カナダドル~1.40000カナダドルのレンジ内で推移すると想定されます。

原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)に大きな変動がみられれば、原油価格の動向も材料になりそうです。カナダは原油を主力輸出品とするため、原油価格が下落を続ける場合、カナダドル安の要因になる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)はいつ利下げを開始するか。
・米FRBと日銀の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の下落はカナダドル安要因)。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)は、23年12月までの7会合連続で利上げを実施しており、一連の利上げ前に8.50%だった政策金利は42.50%になりました。

TCMBがインフレの抑制に向けて積極的に利上げを行っていることは、トルコリラにとって本来プラスと考えられます。ただ、TCMBの利上げにもかかわらず、トルコリラは対米ドルや対円で史上最安値圏にあります。

トルコリラ安の主な要因としては、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が依然として大幅なマイナスであることが挙げられます(23/12/22時点でマイナス19.48%)。また、トルコ当局がKKM(為替保護預金制度)などのトルコリラ支援策の解除を進めていることも、トルコリラの重石となっていると考えられます。

KKMとはトルコリラ建て「為替保護預金」制度のこと。KKM預金口座が満期を迎えた際に、トルコリラの下落率が預金金利よりも大きい場合、差額を政府が補てんします。トルコリラを外貨に移す動きを抑制するため21年12月に導入され、TCMBは23年8月に解除に乗り出しました。

トルコリラが持続的に上昇するためには、TCMBがさらに利上げを続ける、あるいはトルコのCPI(消費者物価指数)上昇率が鈍化するなどして、実質金利のマイナス幅が縮小していく必要がありそうです。

エルドアン・トルコ大統領は今のところ、TCMBの利上げを容認しているようです。ただ、トルコでは24年3月に統一地方選が予定されています。地方選に向けてエルドアン大統領がTCMBの金融政策に干渉して利下げを要求するのではないかとの懸念があります。エルドアン大統領の言動には注意が必要です。

<注目点・イベントなど>
・トルコの実質金利のマイナス幅が縮小するか。
・エルドアン大統領は金融政策に干渉しないか。
・トルコの外貨準備は枯渇しないか。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は23年5月に利上げを実施した後、7月・9月・11月の3会合連続で政策金利を8.25%に据え置きました。

クガニャゴSARB総裁は11月の政策会合後の会見で、「現在の政策金利の水準は、(景気)抑制的だ」との見方を示しつつも、「インフレの上振れリスクが顕在化する場合、行動する用意がある」と表明。追加利上げに含みを持たせました。

南アフリカの11月CPI(消費者物価指数)は前年比5.5%と、上昇率は10月の5.9%から鈍化し、SARBのインフレ目標である3~6%のレンジに6カ月連続で収まりました。また、7-9月期のGDP(国内総生産)は前期比マイナス0.2%と、南アフリカ経済はマイナス成長に陥りました。SARBの利上げサイクルはすでに終了した可能性があります。

SARBの次の一手は利下げと市場は予想しており、利下げの開始時期は24年5月との見方があります。今後発表されるCPIなど南アフリカの経済指標が利下げ観測を高める内容になれば、南アフリカランドは上値が重くなりそうです。

南アフリカランド/円に関しては、日銀の金融政策にも注目です。日銀が金融緩和策の修正へと動けば、円が全般的に強含むとともに、南アフリカランド/円が軟調に推移しそうです。

南アフリカでは発電設備の老朽化などによって計画停電が頻発しています。停電は経済活動を阻害するため、計画停電が長引く場合には同国景気をめぐる懸念が市場で強まる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)はいつ利下げするか。
・計画停電が続く場合、南アフリカランド/円の下押し要因になる可能性あり。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は23年3月に利上げを実施して以降、12月まで6会合連続で政策金利を11.25%に据え置きました。

BOMは早ければ24年1-3月期に利下げを行いそうです。ロドリゲスBOM総裁は12月18日に「24年1~3月期に利下げを議論する可能性がある」と述べつつも、「インフレ率は大きく鈍化したが、慎重を期す必要がある。利下げは緩やかなものになるだろう」と語りました。メキシコのCPI(消費者物価指数)上昇率は、22年8月と9月の前年比8.70%をピークに鈍化傾向にあり、23年11月は4.32%でした。

ただ、BOMが利下げを行ったとしても、FRBなど主要中銀と比べてBOMの政策金利がかなり高い状況に変わりはないと考えられます。メキシコペソにとってそれほどマイナスにはならないかもしれません。 ただし、日銀が金融緩和策の修正へと動けば、メキシコペソ/円は上値が重くなる可能性があります。

原油価格(米WTI原油先物)が大きく変動する場合、原油価格の動向も材料になるかもしれません。原油価格の下落は、メキシコペソにとってマイナスです。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)はいつ利下げするか。
・主要国と比べて高いメキシコ中銀の政策金利。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の上昇はメキシコペソ高要因)。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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