*12:33JST ミアヘルサHD Research Memo(3):東京を中心に首都圏で事業を展開(1)
■会社概要
2. 事業内容
ミアヘルサホールディングス<7129>は経営ミッションとして「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」を掲げ、この実現に向けて、医薬事業から介護事業、保育事業と社会的ニーズの高い事業領域へと展開しながら、「地域包括ケアシステム※」の構築に取り組んでおり、事業そのものがSDGsに繋がっていると言える。
※地域包括ケアシステムとは、 超高齢化社会に向けて地域に合ったケアシステムの体制を整えていくという政府が掲げる方針のこと。厚生労働省では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、医療や介護など地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築に取り組んでいる。
同社の事業セグメントは医薬、介護、保育の3つの事業セグメントとその他(食品事業)に区分して開示している。2023年3月期の売上構成比を見ると、医薬事業が全体の40.4%を占め、次いで保育事業が39.9%、介護事業が15.5%、その他が4.2%となっている。直近5期間の推移で見ると、M&Aを実施したこともあり保育事業の構成比が年々上昇している。また、営業利益率については介護事業を除いて比較的安定して推移している。介護事業についてはコロナ禍の影響によって2022年3月期以降悪化しており、2023年3月期は損失を計上した。医薬事業や保育事業については安定した水準で推移している。主要3事業については7割から9割が社会保険料や自治体等の公費でまかなわれており、価格競争が起きにくいことが、安定した収益性につながっていると考えられる。
(1) 医薬事業
医薬事業では、「日生薬局」「ミアヘルサ薬局」というブランド名で調剤薬局を首都圏に展開している。2023年3月末の店舗数は42店舗(東京38店舗、神奈川3店舗、埼玉1店舗)で、出店形態としては大型総合病院前の門前薬局が28店舗と全体の7割弱を占めている。そのほか、医療モール型で8店舗、面対応型で6店舗をそれぞれ需要が見込める都市部の駅前立地等に出店している。また、在宅医療にも注力し、その中でも高度な技術を要するHIT(在宅輸液療法)調剤サービスを展開しており、がん患者の疼痛緩和ケアの支援を行うなど「かかりつけ薬局」として地域住民の健康をトータルでサポートしている。HITとは、輸液療法による在宅薬学管理のことで、在宅療養患者に対して点滴静脈注射や鼻からチューブを通して栄養剤や薬剤を注入する療法で、注入する輸液は薬局内に設置した無菌調剤室で調合する必要がある。高齢化社会の進展に伴う在宅療養患者数の増加によって、HIT調剤サービスの需要も拡大することが見込まれているなか、同社は2005年より一部の店舗で無菌調剤室を整備し、自社内で輸液の調合を可能にすることで重度の在宅患者の需要に対応している。
医薬事業の特徴としては、大学病院等の大規模病院の門前薬局が多いため、1店舗当たりの平均売上高が213百万円(2023年3月期)と業界平均の125百万円(2021年度実績)よりも約1.7倍と大きいこと、また、店舗当たりの薬剤師の数も平均4人程度(非常勤含む)と業界平均の2~3人を上回っていることにある。門前薬局が多いため、必然的に抗がん剤の副作用対応や難病疾患医薬品の取り扱いなど、高度な薬学管理のスキルが求められるため、薬剤師の知識レベルが総じて高く、また、ミッションに基づいた教育研修により、顧客満足度の高い丁寧な接客サービスを提供できていることが強みとして挙げられる。首都圏、特に都内に店舗が集中していることから学生からの人気も高く、薬剤師の採用については非常勤も含めて問題なく採用できている。
ビジネスモデルとしては、主に「健康保険法」に基づき、処方箋をベースとして調合した医薬品の調剤報酬を患者及び保険機関から受領する格好となり、医薬事業の売上の9割以上を調剤報酬で占めている。調剤報酬は薬剤料と調剤技術料、薬学管理料で構成されており、調剤技術料は薬剤師の調剤作業に対し、また、薬学管理料は薬剤師の服薬指導や薬のデータ管理に対して厚生労働省が定める「調剤報酬点数表」を基に加算される料金となる。従来、これらは2年ごとに厚生労働省が見直しを行ってきたが、薬剤料に関しては2021年度より毎年見直しを行うこととなった。
薬剤料は、医薬品そのものの料金のことで医薬品の価格は国が薬価基準により定めており、薬剤の内容や処方期間によって処方箋ごとに変動する。医薬品は医薬品卸会社から仕入れており、仕入価格については卸会社との交渉で決まるため、薬価と仕入価格の差(薬価差益)が売上総利益となる。調剤技術料は調剤基本料(特定医療機関への集中率等)があり、そのなかには地域支援体制加算(在宅患者向け業務実績、薬局の開局時間等)、後発医薬品調剤体制加算(後発医薬品の使用率)などそれぞれ算定項目ごとに基準と点数が決められている。調剤薬局は調剤技術料を引き上げるために、こうした算定項目への取り組みを推進していくことになる。また、薬学管理料についても同様で、薬剤服用歴管理指導料(お薬手帳の有無、オンライン服薬指導体制等)やかかりつけ薬剤指導料(かかりつけ薬剤師としての実績等)、在宅患者訪問薬剤管理指導料等、様々な算定基準に合わせて加算点数を取得できるよう取り組んでいる。
この調剤報酬点数の算出は、厚生労働省が目指す方向に対して、各薬局の取り組み状況によって変動する部分であり、収益力に直結する部分でもある。薬価改定と調剤報酬改定は国民医療費が年々増大するなかで、国民医療費の抑制と適正化を図ることが目的のため、改定年度については薬価の引き下げと調剤技術料等の低下によって調剤薬局の収益は悪化する傾向にあるが、同社は改定内容に早期に対応し加算点の引き上げを図っていくこと、並びに新規店舗の開発を進めることで収益回復を図っている。
(2) 介護事業
介護事業では、主に介護保険法に基づき、訪問介護・看護等の訪問系サービスやデイサービス等の通所系サービス、サービス付き高齢者向け住宅や認知症対応型グループホーム、ホスピス等の居住系サービスと幅広い介護サービスを首都圏で展開している。2023年3月末のサービス拠点は67拠点(東京都29拠点、埼玉県21拠点、千葉県9拠点、神奈川県4拠点、ライフサポート4拠点含む)となる。
同社の介護事業の特徴としては、サービス付き高齢者向け住宅等の居住系サービスを拠点として、同一建物内に通所系サービスや訪問系サービスなどほかのサービス拠点も設置する複合型施設としてドミナント展開をしていることが挙げられる。また、国土交通省の高齢者等居住安定化モデルに「ミアヘルサ オアシス和光」が選定されたほか、UR都市機構の「団地再生事業」の協業として「ミアヘルサ ケアヴィレッジひばりが丘」を開設するなど、オアシス居住者のみならず地域の高齢者にもサービスを行う「地域包括ケアシステム」の取り組みを積極的に展開していることが特徴となっている。
売上高の内訳としては、通所系及び訪問系で全体の7割弱、居住系サービスで約3割、残りを地域包括支援センター等の行政委託サービスやその他のサービスで占めている。ビジネスモデルとしては、「介護保険法」が適用されるサービスについては、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいてサービスを提供し、その対価の一部を利用者から、残りを国民健康保険団体連合会から受領する格好となる。また、介護保険が適用されないサービス(サービス付き高齢者向け住宅の賃料、食事代、生活支援サービス費等)については、利用者から直接対価を受領している。介護保険についても3年ごとに実情に合わせて改正が行われている。2021年度においては、コロナ禍で介護事業者にとって厳しい経営環境が続くなかで、介護報酬の改定率は+0.70%と若干のプラス改定となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業内容
ミアヘルサホールディングス<7129>は経営ミッションとして「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」を掲げ、この実現に向けて、医薬事業から介護事業、保育事業と社会的ニーズの高い事業領域へと展開しながら、「地域包括ケアシステム※」の構築に取り組んでおり、事業そのものがSDGsに繋がっていると言える。
※地域包括ケアシステムとは、 超高齢化社会に向けて地域に合ったケアシステムの体制を整えていくという政府が掲げる方針のこと。厚生労働省では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、医療や介護など地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築に取り組んでいる。
同社の事業セグメントは医薬、介護、保育の3つの事業セグメントとその他(食品事業)に区分して開示している。2023年3月期の売上構成比を見ると、医薬事業が全体の40.4%を占め、次いで保育事業が39.9%、介護事業が15.5%、その他が4.2%となっている。直近5期間の推移で見ると、M&Aを実施したこともあり保育事業の構成比が年々上昇している。また、営業利益率については介護事業を除いて比較的安定して推移している。介護事業についてはコロナ禍の影響によって2022年3月期以降悪化しており、2023年3月期は損失を計上した。医薬事業や保育事業については安定した水準で推移している。主要3事業については7割から9割が社会保険料や自治体等の公費でまかなわれており、価格競争が起きにくいことが、安定した収益性につながっていると考えられる。
(1) 医薬事業
医薬事業では、「日生薬局」「ミアヘルサ薬局」というブランド名で調剤薬局を首都圏に展開している。2023年3月末の店舗数は42店舗(東京38店舗、神奈川3店舗、埼玉1店舗)で、出店形態としては大型総合病院前の門前薬局が28店舗と全体の7割弱を占めている。そのほか、医療モール型で8店舗、面対応型で6店舗をそれぞれ需要が見込める都市部の駅前立地等に出店している。また、在宅医療にも注力し、その中でも高度な技術を要するHIT(在宅輸液療法)調剤サービスを展開しており、がん患者の疼痛緩和ケアの支援を行うなど「かかりつけ薬局」として地域住民の健康をトータルでサポートしている。HITとは、輸液療法による在宅薬学管理のことで、在宅療養患者に対して点滴静脈注射や鼻からチューブを通して栄養剤や薬剤を注入する療法で、注入する輸液は薬局内に設置した無菌調剤室で調合する必要がある。高齢化社会の進展に伴う在宅療養患者数の増加によって、HIT調剤サービスの需要も拡大することが見込まれているなか、同社は2005年より一部の店舗で無菌調剤室を整備し、自社内で輸液の調合を可能にすることで重度の在宅患者の需要に対応している。
医薬事業の特徴としては、大学病院等の大規模病院の門前薬局が多いため、1店舗当たりの平均売上高が213百万円(2023年3月期)と業界平均の125百万円(2021年度実績)よりも約1.7倍と大きいこと、また、店舗当たりの薬剤師の数も平均4人程度(非常勤含む)と業界平均の2~3人を上回っていることにある。門前薬局が多いため、必然的に抗がん剤の副作用対応や難病疾患医薬品の取り扱いなど、高度な薬学管理のスキルが求められるため、薬剤師の知識レベルが総じて高く、また、ミッションに基づいた教育研修により、顧客満足度の高い丁寧な接客サービスを提供できていることが強みとして挙げられる。首都圏、特に都内に店舗が集中していることから学生からの人気も高く、薬剤師の採用については非常勤も含めて問題なく採用できている。
ビジネスモデルとしては、主に「健康保険法」に基づき、処方箋をベースとして調合した医薬品の調剤報酬を患者及び保険機関から受領する格好となり、医薬事業の売上の9割以上を調剤報酬で占めている。調剤報酬は薬剤料と調剤技術料、薬学管理料で構成されており、調剤技術料は薬剤師の調剤作業に対し、また、薬学管理料は薬剤師の服薬指導や薬のデータ管理に対して厚生労働省が定める「調剤報酬点数表」を基に加算される料金となる。従来、これらは2年ごとに厚生労働省が見直しを行ってきたが、薬剤料に関しては2021年度より毎年見直しを行うこととなった。
薬剤料は、医薬品そのものの料金のことで医薬品の価格は国が薬価基準により定めており、薬剤の内容や処方期間によって処方箋ごとに変動する。医薬品は医薬品卸会社から仕入れており、仕入価格については卸会社との交渉で決まるため、薬価と仕入価格の差(薬価差益)が売上総利益となる。調剤技術料は調剤基本料(特定医療機関への集中率等)があり、そのなかには地域支援体制加算(在宅患者向け業務実績、薬局の開局時間等)、後発医薬品調剤体制加算(後発医薬品の使用率)などそれぞれ算定項目ごとに基準と点数が決められている。調剤薬局は調剤技術料を引き上げるために、こうした算定項目への取り組みを推進していくことになる。また、薬学管理料についても同様で、薬剤服用歴管理指導料(お薬手帳の有無、オンライン服薬指導体制等)やかかりつけ薬剤指導料(かかりつけ薬剤師としての実績等)、在宅患者訪問薬剤管理指導料等、様々な算定基準に合わせて加算点数を取得できるよう取り組んでいる。
この調剤報酬点数の算出は、厚生労働省が目指す方向に対して、各薬局の取り組み状況によって変動する部分であり、収益力に直結する部分でもある。薬価改定と調剤報酬改定は国民医療費が年々増大するなかで、国民医療費の抑制と適正化を図ることが目的のため、改定年度については薬価の引き下げと調剤技術料等の低下によって調剤薬局の収益は悪化する傾向にあるが、同社は改定内容に早期に対応し加算点の引き上げを図っていくこと、並びに新規店舗の開発を進めることで収益回復を図っている。
(2) 介護事業
介護事業では、主に介護保険法に基づき、訪問介護・看護等の訪問系サービスやデイサービス等の通所系サービス、サービス付き高齢者向け住宅や認知症対応型グループホーム、ホスピス等の居住系サービスと幅広い介護サービスを首都圏で展開している。2023年3月末のサービス拠点は67拠点(東京都29拠点、埼玉県21拠点、千葉県9拠点、神奈川県4拠点、ライフサポート4拠点含む)となる。
同社の介護事業の特徴としては、サービス付き高齢者向け住宅等の居住系サービスを拠点として、同一建物内に通所系サービスや訪問系サービスなどほかのサービス拠点も設置する複合型施設としてドミナント展開をしていることが挙げられる。また、国土交通省の高齢者等居住安定化モデルに「ミアヘルサ オアシス和光」が選定されたほか、UR都市機構の「団地再生事業」の協業として「ミアヘルサ ケアヴィレッジひばりが丘」を開設するなど、オアシス居住者のみならず地域の高齢者にもサービスを行う「地域包括ケアシステム」の取り組みを積極的に展開していることが特徴となっている。
売上高の内訳としては、通所系及び訪問系で全体の7割弱、居住系サービスで約3割、残りを地域包括支援センター等の行政委託サービスやその他のサービスで占めている。ビジネスモデルとしては、「介護保険法」が適用されるサービスについては、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいてサービスを提供し、その対価の一部を利用者から、残りを国民健康保険団体連合会から受領する格好となる。また、介護保険が適用されないサービス(サービス付き高齢者向け住宅の賃料、食事代、生活支援サービス費等)については、利用者から直接対価を受領している。介護保険についても3年ごとに実情に合わせて改正が行われている。2021年度においては、コロナ禍で介護事業者にとって厳しい経営環境が続くなかで、介護報酬の改定率は+0.70%と若干のプラス改定となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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