■要約
アクセル<6730>は、遊技機器(パチンコ、パチスロ)向けグラフィックスLSI(以下、G-LSI)市場で約50%のシェアを握るファブレス半導体メーカー。LSI開発販売関連事業で培ったアルゴリズム・ハードウェア・ソフトウェアの3つの開発力を活かして、今後の成長が見込まれるAI/機械学習、ブロックチェーン領域等の新規事業への展開を進めている。
1. 2021年3月期の業績概要
2021年3月期の業績は、売上高で前期比2.9%減の8,999百万円、経常利益で同31.8%増の705百万円となった。コロナ禍でパチンコ・パチスロ機市場が大きく縮小した影響※により、売上高は減少となったものの、利益率が高い製品の販売構成比率が高まったことに加えて、新規事業関連の損失が縮小したこと、研究開発費が前期比77百万円減少したことなどが増益要因となった。新規事業関連については、機械学習/AI事業領域において、独自開発した高速推論フレームワーク「ailia(アイリア) SDK」の提供を開始。学習側から推論側までAIをトータルに提供できる開発力の強みを生かし、開発支援案件が増加、売上高は前期比56.3%増の306百万円と伸長した。「ailia SDK」の特徴はエッジ(端末)側での推論速度が業界トップクラスであること、クロスプラットフォームに対応していること、AI開発における工数削減に寄与することなどが挙げられ、AIソリューションを求める企業の開発現場で採用が進んでいる。
※同社の試算によると、パチンコ・パチスロ器の出荷台数は前期の175万台から120万台に減少した。
2. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績は売上高で前期比6.7%増の9,600百万円、経常利益で同20.6%減の560百万円を見込んでいる。パチンコ・パチスロ機の販売台数は市場全体で旧規則機から新規則機への入替需要が見込めることから前期比35万台増の155万台と回復を見込んでおり、パチンコ・パチスロ機向け製品についても前期比増収を見込んでいる。また、新規事業関連についても引き続き開発支援案件の拡大により2ケタ成長が続く見通しだ。増収にもかかわらず減益を見込んでいるのは、半導体需給のひっ迫による一部半導体の仕入単価上昇に伴い、売上原価が上昇することに加え、新規事業関連についても成長に向けた投資を続けていくことが要因だ。新規事業関連の損失額については前期並みか若干拡大することが想定される。パチンコ・パチスロ機向けG-LSIの販売数量については前期の40万個に対して41万個と、市場の回復と比較して保守的に見ている。前期末の受注残が29万個となっており保守的な印象が強いが、リユース率の上昇が見込まれることや旧規則機撤去後の需要動向が不透明なため、達成可能な水準を前提にしていると見られる。また、仕入単価の上昇分については、今後価格転嫁を進めていくことも検討しているが、今回の業績計画には織り込んでいない。新規事業関連ではAI領域だけでなくブロックチェーン領域に加え、ゲーミング市場向けミドルウェア「AXIP」や、セキュリティ製品「SHALO」の拡販にも注力していく方針だ。
3. 今後の成長戦略
パチンコ・パチスロ機市場の低迷が続くなか、同社はアルゴリズム・ハードウェア・ソフトウェアの3つの開発力を活かして、AI領域を始めとする新規事業領域に展開していくことで高成長を目指していく。新規事業関連の売上高としては2022年3月期見込みの700百万円から、2024年3月期には2倍増を目指す。このうち、AI領域(ミドルウェア領域含む)で7割程度を占める見通しだ。また、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の公募事業※として開発を進めてきた完全自動運転に向けたAIチップについては、2021年度末に試作チップが完成する見込みとなっている。同社の出資先でもある株式会社ティアフォーなどと協力しながら実用化に向けた実証実験を2022年以降に進めていく予定となっているほか、IP及びLSI製品化してAIを利用する様々な分野でロイヤリティ収入を獲得していくことも視野に入れており、今後の動向が注目される。
※公募事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/研究開発項目(1)革新的AIエッジコンピューティング技術の開発」に採択され、「完全自動運転に向けたシステムオンチップとソフトウェアプラットフォームの研究開発」について、東京大学、埼玉大学、(株)ティアフォーと共同で進めている。
■Key Points
・2021年3月期は2期ぶりに減収となるも各利益は2期連続増益に
・2022年3月期は増収減益を見込むがパチンコ・パチスロ機市場の動向次第で上振れする可能性も
・パチンコ主体のファブレス半導体企業から、世の中の革新に貢献する先端テクノロジー企業として成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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アクセル<6730>は、遊技機器(パチンコ、パチスロ)向けグラフィックスLSI(以下、G-LSI)市場で約50%のシェアを握るファブレス半導体メーカー。LSI開発販売関連事業で培ったアルゴリズム・ハードウェア・ソフトウェアの3つの開発力を活かして、今後の成長が見込まれるAI/機械学習、ブロックチェーン領域等の新規事業への展開を進めている。
1. 2021年3月期の業績概要
2021年3月期の業績は、売上高で前期比2.9%減の8,999百万円、経常利益で同31.8%増の705百万円となった。コロナ禍でパチンコ・パチスロ機市場が大きく縮小した影響※により、売上高は減少となったものの、利益率が高い製品の販売構成比率が高まったことに加えて、新規事業関連の損失が縮小したこと、研究開発費が前期比77百万円減少したことなどが増益要因となった。新規事業関連については、機械学習/AI事業領域において、独自開発した高速推論フレームワーク「ailia(アイリア) SDK」の提供を開始。学習側から推論側までAIをトータルに提供できる開発力の強みを生かし、開発支援案件が増加、売上高は前期比56.3%増の306百万円と伸長した。「ailia SDK」の特徴はエッジ(端末)側での推論速度が業界トップクラスであること、クロスプラットフォームに対応していること、AI開発における工数削減に寄与することなどが挙げられ、AIソリューションを求める企業の開発現場で採用が進んでいる。
※同社の試算によると、パチンコ・パチスロ器の出荷台数は前期の175万台から120万台に減少した。
2. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績は売上高で前期比6.7%増の9,600百万円、経常利益で同20.6%減の560百万円を見込んでいる。パチンコ・パチスロ機の販売台数は市場全体で旧規則機から新規則機への入替需要が見込めることから前期比35万台増の155万台と回復を見込んでおり、パチンコ・パチスロ機向け製品についても前期比増収を見込んでいる。また、新規事業関連についても引き続き開発支援案件の拡大により2ケタ成長が続く見通しだ。増収にもかかわらず減益を見込んでいるのは、半導体需給のひっ迫による一部半導体の仕入単価上昇に伴い、売上原価が上昇することに加え、新規事業関連についても成長に向けた投資を続けていくことが要因だ。新規事業関連の損失額については前期並みか若干拡大することが想定される。パチンコ・パチスロ機向けG-LSIの販売数量については前期の40万個に対して41万個と、市場の回復と比較して保守的に見ている。前期末の受注残が29万個となっており保守的な印象が強いが、リユース率の上昇が見込まれることや旧規則機撤去後の需要動向が不透明なため、達成可能な水準を前提にしていると見られる。また、仕入単価の上昇分については、今後価格転嫁を進めていくことも検討しているが、今回の業績計画には織り込んでいない。新規事業関連ではAI領域だけでなくブロックチェーン領域に加え、ゲーミング市場向けミドルウェア「AXIP」や、セキュリティ製品「SHALO」の拡販にも注力していく方針だ。
3. 今後の成長戦略
パチンコ・パチスロ機市場の低迷が続くなか、同社はアルゴリズム・ハードウェア・ソフトウェアの3つの開発力を活かして、AI領域を始めとする新規事業領域に展開していくことで高成長を目指していく。新規事業関連の売上高としては2022年3月期見込みの700百万円から、2024年3月期には2倍増を目指す。このうち、AI領域(ミドルウェア領域含む)で7割程度を占める見通しだ。また、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の公募事業※として開発を進めてきた完全自動運転に向けたAIチップについては、2021年度末に試作チップが完成する見込みとなっている。同社の出資先でもある株式会社ティアフォーなどと協力しながら実用化に向けた実証実験を2022年以降に進めていく予定となっているほか、IP及びLSI製品化してAIを利用する様々な分野でロイヤリティ収入を獲得していくことも視野に入れており、今後の動向が注目される。
※公募事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/研究開発項目(1)革新的AIエッジコンピューティング技術の開発」に採択され、「完全自動運転に向けたシステムオンチップとソフトウェアプラットフォームの研究開発」について、東京大学、埼玉大学、(株)ティアフォーと共同で進めている。
■Key Points
・2021年3月期は2期ぶりに減収となるも各利益は2期連続増益に
・2022年3月期は増収減益を見込むがパチンコ・パチスロ機市場の動向次第で上振れする可能性も
・パチンコ主体のファブレス半導体企業から、世の中の革新に貢献する先端テクノロジー企業として成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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