■要約
ベネフィット・ワン<2412>は、1996年の設立当初から日本発のビジネスモデルによる世界的な企業を目指し、「サービスの流通創造」というビジョンを掲げている。ユーザー課金のストック型ビジネスモデルである法人向け福利厚生などのBPOサービスは、上場企業や公官庁でのシェアも高く、業界のリーディングカンパニーとなっている。
1. 2020年3月期の業績と2021年3月期の業績見通し
2020年3月期は、働き方改革や人手不足、健康経営などを背景に、前期比8.2%の増収と同9.8%の経常増益を達成した。2021年3月期は、同7.7%の増収と同7.5%の経常増益を見込む。新型コロナウイルス感染症の流行による影響発生は限定的だ。働き方改革の1つである「同一労働同一賃金制度」が、2020年4月より大企業に適用された。同制度は、賃金だけでなく待遇でも正規と非正規労働者の間に存在する不合理な格差の是正を求める。福利厚生事業においては、同年4月から大企業が非正規社員を福利厚生サービスの会員に加えると期待されていたが、コロナウイルスの混乱により、取引開始の延期や一部取引の中止が発生している。また、緊急事態宣言期間中の出張や接待の機会が消失したことから、購買・精算代行事業も影響を受ける。しかしながら、同社のビジネスは収益積上げ型のサブスクリプションモデルを主軸としているため、収益への悪影響は限定的であり、10期連続の最高益更新を目指す。
2. コロナ禍は、短期的にマイナスだが、中長期的には新常態がフォローの風に
新型コロナウイルスによるパンデミックが一旦収束しても、第2波、第3波が発生するおそれがある。アフターコロナでも、新常態に適応する社会の再構築が求められる。緊急事態宣言中は、感染防止策として「人との接触8割減」や「人の移動の制限」が要請された。経済財政諮問会議では、民間議員が行政やビジネスのデジタル化を1~2年で集中的に進めるよう提言する。行政手続きや民間契約に残る「対面・紙・ハンコ」を、オンライン化する方向にある。既存の価値観や枠組みを根底から覆す革新的なイノベーションをもたらすデジタルトランスフォーメーション(DX)は、全体最適の観点からデジタル化を一気通貫で行わないと大きな効果が出ない。同社の購買・精算代行事業は、短期的にはコロナウイルスの悪影響を受けるものの、中長期的には、企業や官公庁が「対面・紙・ハンコ」による工程の分断を止めデジタル化を促進する局面で、同社のBPOサービスが利用されることが期待できる。
緊急事態宣言の全面解除が発令された2020年5月25日における全国感染者数のうち、地域別では東京が3割強を占め、首都圏では5割に達した。東京一極集中のリスクを認識させた。東京に本社を置く同社は、生産性を高め、成長を加速させるために取り組んできた「Neo Works」を一層進めた。インサイドセールスは、完全にテレワークを実現。フィールドセールスは、客先訪問ができない中、ビデオ会議システムの利用と電話によるフォローを行った。また、同社は以前から松山オペレーションセンターに加え、7つの地方型サテライトオフィスを開設するなど、オペレーションの「脱東京」を進めていたため、コロナウイルスによる業務上の大きな支障は出ていない。ヘルスケア事業は、特定保健指導の訪問面談をICT面談にシフトしてきている。ICT面談比率は、単月ベースでは2020年3月に直近年平均3.0%から11.8%へ上昇した。訪問面談で必要な移動時間、交通費、会場や事業所の調整、会場側対応者の配置などを省く。「対面」からオンラインへのシフトは、同社の業務効率向上と経費節減だけでなく、感染症防止など顧客の安全性も高める。BPOサービス、HR Tech、健康経営などのソリューションを提供することで、企業のデジタル化を支援し、持続的成長を可能にするパートナーの役割を担う。
3. BPO事業と決済事業で自社の強みを生かす2つのプラットフォームを打ち出す
同社は、かつて福利厚生、ヘルスケア、インセンティブなどプロダクト別に顧客にアプローチし、顧客管理をしていたが、商品をオールインワンの形態で提供することに改めた。2020年6月には、福利厚生や健康プログラムなどの各提供サービスを乗せるプラットフォームとしての「ベネワン・プラットフォーム」をローンチ。データ活用プラットフォームは、提供するサービスの利用実績データだけでなく、企業の持つ人事・タレントマネジメントデータや社員の健康データを集積、可視化、分析する。ワーク・ライフ・バランスや健康といった個々人の豊かさに貢献する最も有効なサービスを提供することで健康経営に寄与し、個人と組織の持続的成長を加速する。BtoCのショッピングサイトが購買履歴などから「似たもの」をレコメンドするのに対し、同社のBtoEでは職域で発生する多様なデータをもとに、豊富なメニューからパーソナライズされたレコメンデーションできるという優位性がある。
店頭におけるキャッシュレス決済では、他社によって赤字必至のキャンペーンが行われている。同社においては、店舗での決済への新ソリューションである「ベネ・ウォレット構想」も存在するが、決済事業では自社のポジショニングが生かせる「給与天引き構想」を優先させる。こちらも、他社のBtoCに対し、BtoEモデルとなる。「給与天引きプラットフォーム」の突破口として、金額の大きい家賃に焦点を当てる。住宅に関する補助を住宅手当として支給すると給与扱いとなり、従業員に課税される所得税や社会保険料の増加を招く。一方、「福利厚生住宅」の社宅として現物支給し、住宅手当に相当する金額を社宅使用料として給与から天引きする形に改めると、課税対象となる収入が減少し、節税効果が得られる。同プラットフォームを、電気、ガス、新聞、携帯電話などの毎月固定払いの決済に活用すると、サプライヤーは利用者との個々の決済をせず、企業単位にまとめて同社との一括決済で済むことになる。決済コストを大幅に削減できる上、同社サービスを利用する大企業や官公庁の大口顧客を獲得するチャンスが得られることから、割安な価格をオファーできる。従業員は、決済方法を変えることで職域価格により月額費用を低減でき、固定支出の管理を効率化できる。導入企業は、従業員満足度の向上と福利厚生の公平性を担保できる。いずれの参加者にもメリットがある。
■Key Points
・ DXに対応するBPO事業及び決済事業のプラットフォーム戦略
・ 生産性を高め、成長を加速し、新常態に対応する働き方改革
・ 2021年3月期は、1株当たり3円の増配を計画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<EY>
ベネフィット・ワン<2412>は、1996年の設立当初から日本発のビジネスモデルによる世界的な企業を目指し、「サービスの流通創造」というビジョンを掲げている。ユーザー課金のストック型ビジネスモデルである法人向け福利厚生などのBPOサービスは、上場企業や公官庁でのシェアも高く、業界のリーディングカンパニーとなっている。
1. 2020年3月期の業績と2021年3月期の業績見通し
2020年3月期は、働き方改革や人手不足、健康経営などを背景に、前期比8.2%の増収と同9.8%の経常増益を達成した。2021年3月期は、同7.7%の増収と同7.5%の経常増益を見込む。新型コロナウイルス感染症の流行による影響発生は限定的だ。働き方改革の1つである「同一労働同一賃金制度」が、2020年4月より大企業に適用された。同制度は、賃金だけでなく待遇でも正規と非正規労働者の間に存在する不合理な格差の是正を求める。福利厚生事業においては、同年4月から大企業が非正規社員を福利厚生サービスの会員に加えると期待されていたが、コロナウイルスの混乱により、取引開始の延期や一部取引の中止が発生している。また、緊急事態宣言期間中の出張や接待の機会が消失したことから、購買・精算代行事業も影響を受ける。しかしながら、同社のビジネスは収益積上げ型のサブスクリプションモデルを主軸としているため、収益への悪影響は限定的であり、10期連続の最高益更新を目指す。
2. コロナ禍は、短期的にマイナスだが、中長期的には新常態がフォローの風に
新型コロナウイルスによるパンデミックが一旦収束しても、第2波、第3波が発生するおそれがある。アフターコロナでも、新常態に適応する社会の再構築が求められる。緊急事態宣言中は、感染防止策として「人との接触8割減」や「人の移動の制限」が要請された。経済財政諮問会議では、民間議員が行政やビジネスのデジタル化を1~2年で集中的に進めるよう提言する。行政手続きや民間契約に残る「対面・紙・ハンコ」を、オンライン化する方向にある。既存の価値観や枠組みを根底から覆す革新的なイノベーションをもたらすデジタルトランスフォーメーション(DX)は、全体最適の観点からデジタル化を一気通貫で行わないと大きな効果が出ない。同社の購買・精算代行事業は、短期的にはコロナウイルスの悪影響を受けるものの、中長期的には、企業や官公庁が「対面・紙・ハンコ」による工程の分断を止めデジタル化を促進する局面で、同社のBPOサービスが利用されることが期待できる。
緊急事態宣言の全面解除が発令された2020年5月25日における全国感染者数のうち、地域別では東京が3割強を占め、首都圏では5割に達した。東京一極集中のリスクを認識させた。東京に本社を置く同社は、生産性を高め、成長を加速させるために取り組んできた「Neo Works」を一層進めた。インサイドセールスは、完全にテレワークを実現。フィールドセールスは、客先訪問ができない中、ビデオ会議システムの利用と電話によるフォローを行った。また、同社は以前から松山オペレーションセンターに加え、7つの地方型サテライトオフィスを開設するなど、オペレーションの「脱東京」を進めていたため、コロナウイルスによる業務上の大きな支障は出ていない。ヘルスケア事業は、特定保健指導の訪問面談をICT面談にシフトしてきている。ICT面談比率は、単月ベースでは2020年3月に直近年平均3.0%から11.8%へ上昇した。訪問面談で必要な移動時間、交通費、会場や事業所の調整、会場側対応者の配置などを省く。「対面」からオンラインへのシフトは、同社の業務効率向上と経費節減だけでなく、感染症防止など顧客の安全性も高める。BPOサービス、HR Tech、健康経営などのソリューションを提供することで、企業のデジタル化を支援し、持続的成長を可能にするパートナーの役割を担う。
3. BPO事業と決済事業で自社の強みを生かす2つのプラットフォームを打ち出す
同社は、かつて福利厚生、ヘルスケア、インセンティブなどプロダクト別に顧客にアプローチし、顧客管理をしていたが、商品をオールインワンの形態で提供することに改めた。2020年6月には、福利厚生や健康プログラムなどの各提供サービスを乗せるプラットフォームとしての「ベネワン・プラットフォーム」をローンチ。データ活用プラットフォームは、提供するサービスの利用実績データだけでなく、企業の持つ人事・タレントマネジメントデータや社員の健康データを集積、可視化、分析する。ワーク・ライフ・バランスや健康といった個々人の豊かさに貢献する最も有効なサービスを提供することで健康経営に寄与し、個人と組織の持続的成長を加速する。BtoCのショッピングサイトが購買履歴などから「似たもの」をレコメンドするのに対し、同社のBtoEでは職域で発生する多様なデータをもとに、豊富なメニューからパーソナライズされたレコメンデーションできるという優位性がある。
店頭におけるキャッシュレス決済では、他社によって赤字必至のキャンペーンが行われている。同社においては、店舗での決済への新ソリューションである「ベネ・ウォレット構想」も存在するが、決済事業では自社のポジショニングが生かせる「給与天引き構想」を優先させる。こちらも、他社のBtoCに対し、BtoEモデルとなる。「給与天引きプラットフォーム」の突破口として、金額の大きい家賃に焦点を当てる。住宅に関する補助を住宅手当として支給すると給与扱いとなり、従業員に課税される所得税や社会保険料の増加を招く。一方、「福利厚生住宅」の社宅として現物支給し、住宅手当に相当する金額を社宅使用料として給与から天引きする形に改めると、課税対象となる収入が減少し、節税効果が得られる。同プラットフォームを、電気、ガス、新聞、携帯電話などの毎月固定払いの決済に活用すると、サプライヤーは利用者との個々の決済をせず、企業単位にまとめて同社との一括決済で済むことになる。決済コストを大幅に削減できる上、同社サービスを利用する大企業や官公庁の大口顧客を獲得するチャンスが得られることから、割安な価格をオファーできる。従業員は、決済方法を変えることで職域価格により月額費用を低減でき、固定支出の管理を効率化できる。導入企業は、従業員満足度の向上と福利厚生の公平性を担保できる。いずれの参加者にもメリットがある。
■Key Points
・ DXに対応するBPO事業及び決済事業のプラットフォーム戦略
・ 生産性を高め、成長を加速し、新常態に対応する働き方改革
・ 2021年3月期は、1株当たり3円の増配を計画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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