最後のECB理事会
24日、ECB理事会は全会一致で金融政策の現状維持を決定しました。結果は市場の予想通り。注目されたのは、今月末で退任するドラギ総裁の最後の記者会見です。
会見のポイントは以下の通り。
・ドイツは恐らく景気後退局面に入っている。
・景気見通しはほぼ変わらないものの、比較的堅調だった労働市場も軟化している。
・最近の状況は前回9月の理事会で決定した包括的な緩和措置を正当化している。
・低金利はさらに長期化する可能性が高い。
・低金利環境下では財政政策の積極活用が必要。
・国債購入の上限は引き上げ可能(来年末には購入の限界が来るとの見方に対して)。
ドラギ総裁の功績
8年間の任期中、ドラギ総裁は2011-12年の欧州債務危機において、「ユーロを守るために何でもする」と宣言して、積極的な金融緩和や救済基金の創設に尽力。危機を終息させたことで「スーパー・マリオ」と称賛されました。
ただ、近年では景気の低迷や低インフレに対して必ずしも有効な政策を打ち出せませんでした。マイナス金利を採用して金融機関の利益を吸い取っているとして「ドラギラ伯爵」と揶揄する声も聞かれました。ドラギ総裁は大きな課題を残してラガルド新総裁にバトンを渡すことになります。
ラガルド新総裁の課題
ラガルド新総裁は今回の理事会にオブザーバーとして参加したようです。既に、政策目標の見直しやQE(量的緩和)の費用対効果分析を行う意向を表明しています。とりわけ、2%のインフレ目標は適切なのか、それをどこまで積極的に追求すべきかは重要な問題です。
また、前回の理事会での包括的な金融緩和は全会一致で決定とされていますが、ドイツやオランダ、オーストリアの中銀総裁など、25人の理事会メンバーのうち少なくとも7人が反対したことが明らかになっています。ラガルド総裁は基本的にドラギ総裁のハト派的な路線を継承するとみられますが、ECB内で割れる見解を調整して有効な政策を打ち出せるか。ラガルド新総裁の手腕が多いに注目されます。